67 / 94
★高等部2年生⑪
しおりを挟む
伯母様が捕まってから1ヶ月が過ぎた。
伯爵家は未だ混乱しているが、不良債権を手放し無駄を削ぎ落とし、スチュワート公爵家とボガード侯爵家の力を借りて少しずつだが、軌道に乗りつつある。
ミシェルは母が捕まり父が療養中のためガックリと気落ちしていたが、
「こんな時こそ男でしょう!しっかりしなさい!」
と、わたしに叱咤激励され、今はお祖父様の手伝いをしている。
次期伯爵当主になるんだから頑張ってもらわなきゃね。
「エイミー、俺と結婚して一緒に伯爵家を盛り上げていかないか?」
と言われたので
「絶対いや!」
とお断りした。
もういい加減ミシェルとの結婚話はうんざりしているのに、コイツふざけてない?って思ってしまった。
わたしは王宮の図書館通いを再び始めた。
わたしが本を読み漁っていると、後ろから声が聞こえてきた。
「エイミー、久しぶりだな」
「陛下、お久しぶりです」
わたしは慌てて席を立ち、制服だったがカーテシーをして挨拶をした。
「君の挨拶する姿はいつ見ても綺麗だな。最近は会えなかったから寂しかったよ」
「すみません、やっと少し伯爵家のことも落ち着いてきました。陛下にもご迷惑をおかけしてすみませんでした。殿下のおかげで助かりました。感謝しかありません」
「うん、よかった。これでエイミーも結婚しなくて済むね」
「はい、でもわたし好きな人が出来たら結婚も良いかもしれないと思い始めたのです」
「ほお、それはどういった心境の変化かな?」
「殿下が教えてくれたのです。マリアンナ様の嫁がれた公爵家次男のダン様の奥様が結婚して子どももいるのに医者としても頑張っていらっしゃると聞いてわたしもそんな人生もあるのかもしれないと思い始めました」
「マリアンナのところのダンの嫁……彼女は苦労して今の幸せを掴んだんだよ」
「苦労されたんですか?」
「うーん、大人達の間では有名なんだがね。そうだね 以前は政略結婚や早くからの婚約が当たり前の時代だったのは君も知っているよね」
「はい、母達の時代は親が結婚相手を決める事が多かったと聞いています。今は自由恋愛からの婚約も増えていますよね」
「うん、そうだな。自由恋愛思考になった要因は二つあるんだ。その一つが彼女なんだ。もう一つはわたしの息子なんだ。婚約者がいたのに他に好きな子が出来て婚約破棄騒動になったんだよね、だからカイルには好きな人と結婚させたくて婚約者はいないんだよ」
「えっと殿下のお兄様である皇太子殿下の話は少しだけ聞きました。でもダン様の奥様のお話は知りません」
「彼女の名前はシャノン。侯爵令嬢だったんだけど父親が不器用な愛し方しか出来なくてね、シャノンは厳しくされすぎて愛されていないと思い続けて育ったんだよ。そして父親が決めて結婚した相手がね……アランの父親のラウルだったんだ」
「え?………え、ええ?」
「驚くよね。ラウルはシャノンがいるのに浮気してそれが原因で別れたんだよ。その時に実家にも帰れず避難した先が主治医でもあったヘンドリー伯爵の家だったんだ。そこで看護助手みたいなことをして、医者になる決意をしたんだよ。シャノンの父親の侯爵とは今は仲良くなってダンが養子に入り侯爵家を継いでいるんだ。
ラウルはシャノンを好きになったらしいんだけど、シャノンは無理やりの結婚で離縁になったものだから自分は家で価値のない人間だと思い込んで侯爵である父親と別離しようとして揉めたんだよ。まあ、最後はダンが仲裁をしてなんとか元に戻ったんだ」
ハアー……
「そんな二つの事件があってからかな、貴族でも高位と言われる公爵や侯爵達が無理矢理子どもに婚約者を当てがわなくなったんだ。もちろん我々王族もね、それが自然に貴族の中での流れになったんだよ」
陛下は少し考えながら言った。
「エイミー、今度会わせてあげるよ、シャノン夫人に。彼女はうちの奥さんの主治医でもあるんだよ」
「え?会わせて貰えるんですか?わたし夜会で一目でもいいから会ってみたかったのに伯母様に捕まってそのあと色々あったからもう諦めていました」
「そういえば君、頬を何発も叩かれても平然としていたらしいね」
「平然ではありません。あんまり痛いから最後は避けてしまったし、殴り返したいのを我慢していました。あと数発叩かれていたら伯母様でもやり返していたと思います」
「ほおー、やり返すのか。見てみたかったな」
「うっ……陛下に見られていたらわたし一生お嫁にいけませんね」
「どうして?」
「だって国一番の人に見られたら、コイツは嫁にもらわないほうがいいと太鼓判押されてしまうではないですか」
「なるほど。そうか」
陛下は楽しそうに笑った。
伯爵家は未だ混乱しているが、不良債権を手放し無駄を削ぎ落とし、スチュワート公爵家とボガード侯爵家の力を借りて少しずつだが、軌道に乗りつつある。
ミシェルは母が捕まり父が療養中のためガックリと気落ちしていたが、
「こんな時こそ男でしょう!しっかりしなさい!」
と、わたしに叱咤激励され、今はお祖父様の手伝いをしている。
次期伯爵当主になるんだから頑張ってもらわなきゃね。
「エイミー、俺と結婚して一緒に伯爵家を盛り上げていかないか?」
と言われたので
「絶対いや!」
とお断りした。
もういい加減ミシェルとの結婚話はうんざりしているのに、コイツふざけてない?って思ってしまった。
わたしは王宮の図書館通いを再び始めた。
わたしが本を読み漁っていると、後ろから声が聞こえてきた。
「エイミー、久しぶりだな」
「陛下、お久しぶりです」
わたしは慌てて席を立ち、制服だったがカーテシーをして挨拶をした。
「君の挨拶する姿はいつ見ても綺麗だな。最近は会えなかったから寂しかったよ」
「すみません、やっと少し伯爵家のことも落ち着いてきました。陛下にもご迷惑をおかけしてすみませんでした。殿下のおかげで助かりました。感謝しかありません」
「うん、よかった。これでエイミーも結婚しなくて済むね」
「はい、でもわたし好きな人が出来たら結婚も良いかもしれないと思い始めたのです」
「ほお、それはどういった心境の変化かな?」
「殿下が教えてくれたのです。マリアンナ様の嫁がれた公爵家次男のダン様の奥様が結婚して子どももいるのに医者としても頑張っていらっしゃると聞いてわたしもそんな人生もあるのかもしれないと思い始めました」
「マリアンナのところのダンの嫁……彼女は苦労して今の幸せを掴んだんだよ」
「苦労されたんですか?」
「うーん、大人達の間では有名なんだがね。そうだね 以前は政略結婚や早くからの婚約が当たり前の時代だったのは君も知っているよね」
「はい、母達の時代は親が結婚相手を決める事が多かったと聞いています。今は自由恋愛からの婚約も増えていますよね」
「うん、そうだな。自由恋愛思考になった要因は二つあるんだ。その一つが彼女なんだ。もう一つはわたしの息子なんだ。婚約者がいたのに他に好きな子が出来て婚約破棄騒動になったんだよね、だからカイルには好きな人と結婚させたくて婚約者はいないんだよ」
「えっと殿下のお兄様である皇太子殿下の話は少しだけ聞きました。でもダン様の奥様のお話は知りません」
「彼女の名前はシャノン。侯爵令嬢だったんだけど父親が不器用な愛し方しか出来なくてね、シャノンは厳しくされすぎて愛されていないと思い続けて育ったんだよ。そして父親が決めて結婚した相手がね……アランの父親のラウルだったんだ」
「え?………え、ええ?」
「驚くよね。ラウルはシャノンがいるのに浮気してそれが原因で別れたんだよ。その時に実家にも帰れず避難した先が主治医でもあったヘンドリー伯爵の家だったんだ。そこで看護助手みたいなことをして、医者になる決意をしたんだよ。シャノンの父親の侯爵とは今は仲良くなってダンが養子に入り侯爵家を継いでいるんだ。
ラウルはシャノンを好きになったらしいんだけど、シャノンは無理やりの結婚で離縁になったものだから自分は家で価値のない人間だと思い込んで侯爵である父親と別離しようとして揉めたんだよ。まあ、最後はダンが仲裁をしてなんとか元に戻ったんだ」
ハアー……
「そんな二つの事件があってからかな、貴族でも高位と言われる公爵や侯爵達が無理矢理子どもに婚約者を当てがわなくなったんだ。もちろん我々王族もね、それが自然に貴族の中での流れになったんだよ」
陛下は少し考えながら言った。
「エイミー、今度会わせてあげるよ、シャノン夫人に。彼女はうちの奥さんの主治医でもあるんだよ」
「え?会わせて貰えるんですか?わたし夜会で一目でもいいから会ってみたかったのに伯母様に捕まってそのあと色々あったからもう諦めていました」
「そういえば君、頬を何発も叩かれても平然としていたらしいね」
「平然ではありません。あんまり痛いから最後は避けてしまったし、殴り返したいのを我慢していました。あと数発叩かれていたら伯母様でもやり返していたと思います」
「ほおー、やり返すのか。見てみたかったな」
「うっ……陛下に見られていたらわたし一生お嫁にいけませんね」
「どうして?」
「だって国一番の人に見られたら、コイツは嫁にもらわないほうがいいと太鼓判押されてしまうではないですか」
「なるほど。そうか」
陛下は楽しそうに笑った。
41
お気に入りに追加
3,094
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
この度、双子の妹が私になりすまして旦那様と初夜を済ませてしまったので、 私は妹として生きる事になりました
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
*レンタル配信されました。
レンタルだけの番外編ssもあるので、お読み頂けたら嬉しいです。
【伯爵令嬢のアンネリーゼは侯爵令息のオスカーと結婚をした。籍を入れたその夜、初夜を迎える筈だったが急激な睡魔に襲われて意識を手放してしまった。そして、朝目を覚ますと双子の妹であるアンナマリーが自分になり代わり旦那のオスカーと初夜を済ませてしまっていた。しかも両親は「見た目は同じなんだし、済ませてしまったなら仕方ないわ。アンネリーゼ、貴女は今日からアンナマリーとして過ごしなさい」と告げた。
そして妹として過ごす事になったアンネリーゼは妹の代わりに学院に通う事となり……更にそこで最悪な事態に見舞われて……?】
あなたの愛が正しいわ
来須みかん
恋愛
旧題:あなたの愛が正しいわ~夫が私の悪口を言っていたので理想の妻になってあげたのに、どうしてそんな顔をするの?~
夫と一緒に訪れた夜会で、夫が男友達に私の悪口を言っているのを聞いてしまった。そのことをきっかけに、私は夫の理想の妻になることを決める。それまで夫を心の底から愛して尽くしていたけど、それがうっとうしかったそうだ。夫に付きまとうのをやめた私は、生まれ変わったように清々しい気分になっていた。
一方、夫は妻の変化に戸惑い、誤解があったことに気がつき、自分の今までの酷い態度を謝ったが、妻は美しい笑みを浮かべてこういった。
「いいえ、間違っていたのは私のほう。あなたの愛が正しいわ」

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる