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★高等部2年生⑨
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しばらくしてカイル殿下が来られた。
殿下を貴賓室に案内する為わたし達も移って出迎えた。
わたしの知る制服姿の殿下ではなく王族の衣装を纏い品格がある。でもいつものように近づくことが出来ない雰囲気でわたしは俯き黙っていた。
お義父様が挨拶をしてみんなが席につき、侍女長がお茶を入れてくれた。
(……緊張しすぎる………)
「今日こちらに来たのはハノン伯爵夫人について、これまでの経緯を話したい」
やはりそうだったのか……伯母様はいったい何をしたのだろう。
「それについて詳しい説明の前に、エイミーにはこれを読んで欲しい」
わたしは日記を数冊渡された。
本を読むのが得意なわたしでも1時間程かかる量だ。だが読めというなら読むしかない。
「わかりました、1時間程お時間を頂けますか?」
「ああ、大丈夫だ、その間こちらも違う話を進める」
わたしは部屋を退出した。
◇ ◇ ◇
「ルーベン・ハディッド殿と夫人、解毒剤は少し効いたようだね」
「心遣いありがとうございます、お陰で頭の中がスッキリしてきました、いつ頃からか頭に靄が出来て考えることが億劫になっておりました。まさかハノンがわたし達に薬を飲ませるなど考えてもおりませんでした」
「うん、まあ、普通ではないよね」
殿下は渋い顔をしていた。
「伯爵夫人は、貴方達を傀儡にして伯爵家のお金を自分の私欲に使っていたみたいだ。エイミーをしつこく伯爵家の嫁にしようとしたのも、領地で人気があり能力にも長けている彼女を薬で傀儡にして一生働かせるつもりだったみたいだ」
殿下は怒りが湧いてきたのかペンを握りしめていた。
「わたし達は知らずにエイミーを犠牲にするところでした」
「身内では疑う事がないからおかしいとは気づかないものかもしれない。外から見ていた僕やボガード侯爵には伯爵夫人の不自然な動きが気になっていたからね」
「そうですね、ハノンは時折不気味な笑顔を見せるんですよ、特にルディアやエイミーに対しては蔑んでいるのがわかりました」
「ハノンが妹のルディアに対して蔑んでいた……いつもルディアが可哀想だから、、ルディアが苦しんでいるから、、ルディアのために、、と言ってくれていたのに」
二人はハノンの話にガックリと肩を落とした。
「それが伯爵夫人の手ですよ。彼女は人の心をコントロールして自分の思うように動かすことに快楽を覚えていた。そして自分を中心に回っていると思い込んでいたんだ」
殿下は溜息を吐きながら言った。
「彼女は未だに罪を認めていないよ。でも日記を見つけてくれたお陰で犯罪者として立証出来そうだ。まずは違法薬物を持っていたこと、それを人に黙って飲ませて操っていたこと、領地の資金を勝手に使っていたこと、エイミーの養育費を詐取して自身が使い込んでいたこと、メアリーをコントロールして犯罪を犯させていたこと、ハディッド伯爵を傀儡にしていたこともわかった」
「やはりハディッド伯爵もですか」
「うん、彼はたぶんもう薬無しでは生きていけないと思うよ。かなり長い間常用させられていたみたいだ、もう自分の意志は無いに等しいよ」
「わたし達の育て方が間違っていたんですね」
「確かに彼女を甘やかしたのは間違いないと思いますが、大人になってからの彼女は本人自身なので罪は彼女自身にありますよ」
クラークは厳しい顔で言った。
◇ ◇ ◇
「殿下!」
わたしはノックをする間も惜しくて急いでドアを開けた。
「エイミー、落ち着いて」
殿下はわたしを諭すようにゆっくりと声をかけてくれた。
「わたし、わたし、何も知りませんでした。伯母様はとんでもないことをしでかしていたんですね。お祖父様お祖母様、お体は大丈夫ですか?お母様もどうですか?みんなが伯母様にコントロールされていたなんて……」
わたしは大好きな伯母様がそんな酷いことをしたなんて信じられなかった。
目から大粒の涙がポロポロ出て、しゃくり上げて泣いた。
「ひ、、ひど、、い。みんな…を弄ぶ…なんて……」
わたしはわんわん泣いた。
殿下を貴賓室に案内する為わたし達も移って出迎えた。
わたしの知る制服姿の殿下ではなく王族の衣装を纏い品格がある。でもいつものように近づくことが出来ない雰囲気でわたしは俯き黙っていた。
お義父様が挨拶をしてみんなが席につき、侍女長がお茶を入れてくれた。
(……緊張しすぎる………)
「今日こちらに来たのはハノン伯爵夫人について、これまでの経緯を話したい」
やはりそうだったのか……伯母様はいったい何をしたのだろう。
「それについて詳しい説明の前に、エイミーにはこれを読んで欲しい」
わたしは日記を数冊渡された。
本を読むのが得意なわたしでも1時間程かかる量だ。だが読めというなら読むしかない。
「わかりました、1時間程お時間を頂けますか?」
「ああ、大丈夫だ、その間こちらも違う話を進める」
わたしは部屋を退出した。
◇ ◇ ◇
「ルーベン・ハディッド殿と夫人、解毒剤は少し効いたようだね」
「心遣いありがとうございます、お陰で頭の中がスッキリしてきました、いつ頃からか頭に靄が出来て考えることが億劫になっておりました。まさかハノンがわたし達に薬を飲ませるなど考えてもおりませんでした」
「うん、まあ、普通ではないよね」
殿下は渋い顔をしていた。
「伯爵夫人は、貴方達を傀儡にして伯爵家のお金を自分の私欲に使っていたみたいだ。エイミーをしつこく伯爵家の嫁にしようとしたのも、領地で人気があり能力にも長けている彼女を薬で傀儡にして一生働かせるつもりだったみたいだ」
殿下は怒りが湧いてきたのかペンを握りしめていた。
「わたし達は知らずにエイミーを犠牲にするところでした」
「身内では疑う事がないからおかしいとは気づかないものかもしれない。外から見ていた僕やボガード侯爵には伯爵夫人の不自然な動きが気になっていたからね」
「そうですね、ハノンは時折不気味な笑顔を見せるんですよ、特にルディアやエイミーに対しては蔑んでいるのがわかりました」
「ハノンが妹のルディアに対して蔑んでいた……いつもルディアが可哀想だから、、ルディアが苦しんでいるから、、ルディアのために、、と言ってくれていたのに」
二人はハノンの話にガックリと肩を落とした。
「それが伯爵夫人の手ですよ。彼女は人の心をコントロールして自分の思うように動かすことに快楽を覚えていた。そして自分を中心に回っていると思い込んでいたんだ」
殿下は溜息を吐きながら言った。
「彼女は未だに罪を認めていないよ。でも日記を見つけてくれたお陰で犯罪者として立証出来そうだ。まずは違法薬物を持っていたこと、それを人に黙って飲ませて操っていたこと、領地の資金を勝手に使っていたこと、エイミーの養育費を詐取して自身が使い込んでいたこと、メアリーをコントロールして犯罪を犯させていたこと、ハディッド伯爵を傀儡にしていたこともわかった」
「やはりハディッド伯爵もですか」
「うん、彼はたぶんもう薬無しでは生きていけないと思うよ。かなり長い間常用させられていたみたいだ、もう自分の意志は無いに等しいよ」
「わたし達の育て方が間違っていたんですね」
「確かに彼女を甘やかしたのは間違いないと思いますが、大人になってからの彼女は本人自身なので罪は彼女自身にありますよ」
クラークは厳しい顔で言った。
◇ ◇ ◇
「殿下!」
わたしはノックをする間も惜しくて急いでドアを開けた。
「エイミー、落ち着いて」
殿下はわたしを諭すようにゆっくりと声をかけてくれた。
「わたし、わたし、何も知りませんでした。伯母様はとんでもないことをしでかしていたんですね。お祖父様お祖母様、お体は大丈夫ですか?お母様もどうですか?みんなが伯母様にコントロールされていたなんて……」
わたしは大好きな伯母様がそんな酷いことをしたなんて信じられなかった。
目から大粒の涙がポロポロ出て、しゃくり上げて泣いた。
「ひ、、ひど、、い。みんな…を弄ぶ…なんて……」
わたしはわんわん泣いた。
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