【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます  時々番外編

たろ

文字の大きさ
上 下
65 / 94

★高等部2年生⑨

しおりを挟む
しばらくしてカイル殿下が来られた。

殿下を貴賓室に案内する為わたし達も移って出迎えた。

わたしの知る制服姿の殿下ではなく王族の衣装を纏い品格がある。でもいつものように近づくことが出来ない雰囲気でわたしは俯き黙っていた。

お義父様が挨拶をしてみんなが席につき、侍女長がお茶を入れてくれた。

(……緊張しすぎる………)

「今日こちらに来たのはハノン伯爵夫人について、これまでの経緯を話したい」

やはりそうだったのか……伯母様はいったい何をしたのだろう。

「それについて詳しい説明の前に、エイミーにはこれを読んで欲しい」
わたしは日記を数冊渡された。

本を読むのが得意なわたしでも1時間程かかる量だ。だが読めというなら読むしかない。
「わかりました、1時間程お時間を頂けますか?」

「ああ、大丈夫だ、その間こちらも違う話を進める」

わたしは部屋を退出した。


◇ ◇ ◇

「ルーベン・ハディッド殿と夫人、解毒剤は少し効いたようだね」

「心遣いありがとうございます、お陰で頭の中がスッキリしてきました、いつ頃からか頭に靄が出来て考えることが億劫になっておりました。まさかハノンがわたし達に薬を飲ませるなど考えてもおりませんでした」

「うん、まあ、普通ではないよね」
殿下は渋い顔をしていた。

「伯爵夫人は、貴方達を傀儡にして伯爵家のお金を自分の私欲に使っていたみたいだ。エイミーをしつこく伯爵家の嫁にしようとしたのも、領地で人気があり能力にも長けている彼女を薬で傀儡にして一生働かせるつもりだったみたいだ」
殿下は怒りが湧いてきたのかペンを握りしめていた。

「わたし達は知らずにエイミーを犠牲にするところでした」

「身内では疑う事がないからおかしいとは気づかないものかもしれない。外から見ていた僕やボガード侯爵には伯爵夫人の不自然な動きが気になっていたからね」

「そうですね、ハノンは時折不気味な笑顔を見せるんですよ、特にルディアやエイミーに対しては蔑んでいるのがわかりました」

「ハノンが妹のルディアに対して蔑んでいた……いつもルディアが可哀想だから、、ルディアが苦しんでいるから、、ルディアのために、、と言ってくれていたのに」
二人はハノンの話にガックリと肩を落とした。

「それが伯爵夫人の手ですよ。彼女は人の心をコントロールして自分の思うように動かすことに快楽を覚えていた。そして自分を中心に回っていると思い込んでいたんだ」
殿下は溜息を吐きながら言った。

「彼女は未だに罪を認めていないよ。でも日記を見つけてくれたお陰で犯罪者として立証出来そうだ。まずは違法薬物を持っていたこと、それを人に黙って飲ませて操っていたこと、領地の資金を勝手に使っていたこと、エイミーの養育費を詐取して自身が使い込んでいたこと、メアリーをコントロールして犯罪を犯させていたこと、ハディッド伯爵を傀儡にしていたこともわかった」

「やはりハディッド伯爵もですか」

「うん、彼はたぶんもう薬無しでは生きていけないと思うよ。かなり長い間常用させられていたみたいだ、もう自分の意志は無いに等しいよ」

「わたし達の育て方が間違っていたんですね」

「確かに彼女を甘やかしたのは間違いないと思いますが、大人になってからの彼女は本人自身なので罪は彼女自身にありますよ」

クラークは厳しい顔で言った。



◇ ◇ ◇



「殿下!」
わたしはノックをする間も惜しくて急いでドアを開けた。

「エイミー、落ち着いて」
殿下はわたしを諭すようにゆっくりと声をかけてくれた。

「わたし、わたし、何も知りませんでした。伯母様はとんでもないことをしでかしていたんですね。お祖父様お祖母様、お体は大丈夫ですか?お母様もどうですか?みんなが伯母様にコントロールされていたなんて……」
わたしは大好きな伯母様がそんな酷いことをしたなんて信じられなかった。

目から大粒の涙がポロポロ出て、しゃくり上げて泣いた。

「ひ、、ひど、、い。みんな…を弄ぶ…なんて……」
わたしはわんわん泣いた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

処理中です...