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イライラする

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ルディアから連絡が来ない。
エイミーは、未だに了承の返事をくれないし、ルディアも説得出来ていないみたいだ。

アンブライト公爵家の夜会には、何故か我が家は招待されていない。

今までなら伯爵家とは言え夫の実家が侯爵家でもあるから必ず招待されていた。
お父様とも親しい仲だった。
「トム、夜会の招待状が我が家に届いていないのはどうしてかしら?」
トムはどう答えようか悩んで
「…うーん、招待状を出すのは公爵なのでわからないな。もしかしたら出し忘れているのかもしれないな」

わたしはその言葉に納得した。
「そうよね、今まで来なかったことはないのだからこちらから催促するのもおかしいし、手紙が来なかったことは気づかなかったフリして夜会に行けばいいのよね」

わたしはトムの言葉に納得した。

トムはわたしの頬に優しくキスを落とした。
「僕の愛しのハノン、ご機嫌が治って良かった」



◇ ◇ ◇


わたしは新しいドレスを誂えた。
マーメイドタイプの流行りのデザインで背中を大きく開けたラインが気に入った。

銀色のシルクに小さな宝石を散りばめた。光が当たるとキラキラと輝きお気に入りのドレスに仕上がった。
これでわたしの注目度も上がるわ、ふふ。

夜会にトムとミシェルと三人で参加した。
招待状がなかったが、トムの侯爵家と共に行ったので何も言われることなく会場へ入った。

そこには、エイミーがカイル殿下にエスコートされている姿があった。

何故エイミーが殿下と一緒にいるのか……
カアっとなったわたしはエイミーがダンスが終わると笑顔でエイミーのもとへ行った。

「カイル殿下、ご無沙汰いたしております」
わたしはカーテシーをして挨拶をした。

「君はどうしてここにいるんだい?」
ミシェルよりも年下の生意気な王子の言い方にカチンときながらも笑顔で答えた。

「はい、ご招待されましたので。エイミーに話しがあります。少しだけ彼女をお貸しいただいてもよろしいでしょうか?」

「うん?エイミーは僕のパートナーなんだ。悪いが断る、それにハディッド伯爵家は招待されていないはずだが、何故招待されたなどと言っているのかな?」

わたしの笑顔は引き攣っていた。

「招待状は忘れていたのだろうと思って公爵家に訪ねていなかったのですが、我が家が招待されないなどあるはずがないではないですか。毎回必ずご招待を受けているのです」

「それは貴方の思い込みでしょう、エイミー行くよ」

「な、何をおっしゃっているのですか?」
わたしは怒りで体が震えた。

「ふざけないで!エイミー、こちらに来なさい!」

わたしはいつもの優しい伯母の顔をするのを忘れて怒りを露わにしてしまった。

不味いわ、みんなに見られてしまった。
わたしは、慌てて冷静さを取り戻して優しい笑顔を二人に向けた。

「エイミー、少しお話があるのよ、貴方のお母様のことで」
と言ったら、
「お母様?」
エイミーは、わたしの言葉に反応した。

殿下もあまり無碍には出来ないようでエイミーをわたしに預けてくれた。

ホールの隣の客室が休暇室になっておりエイミーとそこへ向かった。

「エイミー、貴方は何故ミシェルとの婚約を嫌がるのかしら?」

「わたしは、司書官を目指しています。それにまだ誰かと婚約なんて考えられません」

「では落ち着いてからでも結婚はいいわ。とりあえず婚約だけ先にしておきましょう」

「伯母様、わたしは婚約もまだ誰とも……「だから、結婚は先でいいと言ってあげたでしょう」

わたしはエイミーに態とに押し付けがましく言った。

エイミーは言い返そうとしたが、わたしはそれを許さなかった。
「貴方のことを一番に考えてあげられるのはわたしよ。貴方の母親のルディアだってわたしがいつも気にしてあげているのよ、貴方のお祖父様もお祖母様もわたしが守ってあげているの、わたしが貴方達の生活を支えているのよ、だからわたしの言うことは聞かないと行けないの、分かるでしょ?」

「伯母様、でもわたしはもうハディッド家の人間ではありません。ボガード侯爵令嬢です」

「何か生意気なこと言っているの!」
わたしはイライラして言うことを聞かないエイミーに手をあげた。
バシッ!

エイミーは頬を叩かれてもびくりともせずわたしを見た。
気に入らない、何かこの目、この子のこの目が嫌いなの。
いつも真っ直ぐに全てを見つめる目、曇りのない目が気に入らない。

わたしはさらに叩いた。
バシッ!バシッ!

なのにエイミーは目を逸らさない。

わたしは腹が立ってイライラした。

「貴方はわたしの言うことだけ聞いていればいいのよ!ミシェルと結婚して伯爵家のためだけに生きていくのよ!貴方は勉強だけは出来るわ、領地運営のために領民のために尽くして一生生きるのよ」

エイミーは、腫れた頬のことを気にしもしないでわたしをジッと見つめた。
「伯母様、わたしは侯爵令嬢です。貴方の言うことを聞いて結婚することなどあり得ません」

わたしはさらに大きく手を振り上げた。




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