【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます  時々番外編

たろ

文字の大きさ
上 下
48 / 94

ラウル編

しおりを挟む
突然、王命で手紙が来た。

急いでベルアート領を出て、王都へ向かった。

シャノンと離縁してベルアート領に戻り民と共に領土の開拓を始めた。

ただの草原を豊かな農地へと変えていく。

今までは紙面上の数字の中で領地を運営していたが、実際に自身で動き、見て、考えて変わっていく領地の姿に感動しその楽しさに夢中になった。

人は落ちぶれたとか使用人のようだと揶揄するが、別に何も感じなかった。

自分の行為が最低だったことは確かだし、言い訳出来るわけでもない。
今は贖罪にもならないかもしれないが領民と共に汗水流して少しでも領地を良くする。それだけだった。

なのに、王宮での集まりは衝撃的だった。

手紙にはわたしに子どもがいるらしい。
確認のため王宮へ出向くようにと書かれていた。

身に覚えがない、とは言えないことをしてきた自覚はあるが、もう17年も前のこと。
今頃になって出てくるとは思わなかった。

急ぎ王都へ馬を走らせた。

久しぶりの公爵邸。
今は使用人達に屋敷の維持を頼み、たまにこちらに両親が来ている。
わたしは、領地で過ごしていた。

王宮に行くと案内された部屋には、昔関係を持ったメアリーとハノンがいた。
他にもボガード侯爵、グランデ侯爵、ハディッド伯爵達が集められていた。

陛下に挨拶をして黙って座っていた。

そして、15、6歳の男の子二人と女の子が入ってきた。

話し出した内容に驚愕した。

わたしの自分勝手な行いがいつの間にか大きな問題となっていたのだ。

メアリーを遊びと捉えて、すぐに別れた。まさか妊娠しているとは思っていなかった。

どうしてわたしに伝えてくれなかったのかわからないが、それがグランデ侯爵の子どもとなりみんなの人生を狂わせていた。

アランはメアリーにも似ているが確かにわたしの息子だとわかる。わたしと同じ瞳、顔もわたしに少し似ている。
初めて会った瞬間、自分の子だと思った。
何故か彼の悲しそうな表情から目が離せなかった。

メアリーが捕まり、アランがわたしに話しかけて来た時、わたしは嘘を吐くまいと思った。
たとえ軽蔑されようと曖昧な言葉で誤魔化すのは彼に失礼だと思った。


『俺は産まれた時から誰からも必要とされていなかったんだ……なのに、なんで産まれてきたんだよ!人を苦しめてまで生きたくなんかなかった。俺の所為でエイミー達家族はバラバラにされて、ルディア様は心が病んで、お祖父様達は脅されて、俺には生きる価値なんかない……』

アランの悲痛な叫びを聞いてわたしは何を今までしてきたのだろうと後悔するしかなかった。

知らなかったでは済まされない。
アランの孤独と辛さ、痛さ、わたしは気づかずに領民のためと生きてきた。
それでいいと思っていた。
自分の犯した過去の所為で犠牲になっている子がいたにも関わらず。

わたしは、これからアランになにが出来るのか、どうも出来ないとわかっていても抗い続けるしかない。

彼に許されるためではなく、彼が幸せになるためにわたしは動くしかない。

領地に戻り父にまず話した。

父も全く知らなかった。

わたしは、母にも話した。母はアランの辛い人生に涙した。
全てわたしの罪。
でも、今は彼が生まれてきて良かったと思える人生をわたしが出来ることをするしかない。

領地での仕事を急いで片付けてまた王都へ戻ることにした。



















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】王女と駆け落ちした元旦那が二年後に帰ってきた〜謝罪すると思いきや、聖女になったお前と僕らの赤ん坊を育てたい?こんなに馬鹿だったかしら

冬月光輝
恋愛
侯爵家の令嬢、エリスの夫であるロバートは伯爵家の長男にして、デルバニア王国の第二王女アイリーンの幼馴染だった。 アイリーンは隣国の王子であるアルフォンスと婚約しているが、婚姻の儀式の当日にロバートと共に行方を眩ませてしまう。 国際規模の婚約破棄事件の裏で失意に沈むエリスだったが、同じ境遇のアルフォンスとお互いに励まし合い、元々魔法の素養があったので環境を変えようと修行をして聖女となり、王国でも重宝される存在となった。 ロバートたちが蒸発して二年後のある日、突然エリスの前に元夫が現れる。 エリスは激怒して謝罪を求めたが、彼は「アイリーンと自分の赤子を三人で育てよう」と斜め上のことを言い出した。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

交換された花嫁

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」 お姉さんなんだから…お姉さんなんだから… 我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。 「お姉様の婚約者頂戴」 妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。 「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」 流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。 結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。 そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~

紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。 ※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。 ※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。 ※なろうにも掲載しています。

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

処理中です...