上 下
32 / 94

学園② ➖アラン編➖

しおりを挟む
俺は高等部に入った。

エイミーと俺は二人共2位の成績だった。

名前が先に俺が書かれているからと怒る変わった奴。
俺は相手にしなかった。

席がエイミーの隣になった。故意ではないが、エイミーがあからさまに嫌な顔をしたので
「エイミー、初めて隣の席だね。僕の邪魔にならないように静かにしてね」
と言ってやった。

そしたら俺の顔を見ないように正面を向いたままエイミーは答えた。

「アラン、わたしは貴方が話しかけてこなければ貴方とお話するつもりはないわ!
だから大丈夫よ」

「……了解」
おれはムカつきながらも返事をした。
高等部1年生が始まった。

エイミーは最近女の子からちょっとしたいじめを受けているみたいだった。
たぶん俺の所為だと思う。
いつもお互い絡んでしまうので、侯爵家の婚約者を狙ってる女の子達がエイミーに嫉妬して意地悪をしているみたいだ。
殿下とエイミーの方がよっぽど仲が良いのに二人にやきもちを妬く人はいない。
たぶん二人に恋愛的な空気がなくいつもほのぼのとしているし、殿下に恋をしても結婚出来るわけがないと分かっている令嬢達は敢えて危険な賭けをしない。だから殿下に迫る令嬢は少ない。確実な俺を狙っているのだと思う。

俺はエイミーを助ける気なんかない。
あいつといるとイライラする。

でもあいつの教科書がなくなり、あいつが大きな声で話し出した。

「わたしは侯爵令嬢なのよ!犯人を見つけたら謝罪して頂いてその家にもきちんとご報告させて頂くわ。覚えてらっしゃい!」
と言いながら右手で髪をかき上げて、教室の女の子達を見て微笑んだ。

「迫力が足りないわ」
と、シャーリーが言った。
「睨みも必要だわ」
と、イザベラが苦笑い。
「エイミーの可愛さがまだ残っているね」
と、カイル殿下。

「君が嫌われているからじゃないの?」
横から俺は言った。

「だ、誰のせいでいっつも教科書を隠されたり筆箱がなくなったりしていると思うの!」
エイミーは、俺を見て怒鳴り上げていた。

「君自身に問題があるんじゃないのかな?」

エイミーは体を震わせて涙声で
「貴方と関わらなければこんな目に合わないのにわ、わたし…何もしていないのに‥…ひどいわ」
と言いながらハンカチで目を押さえた。

プッ!
笑い出したのは殿下だった。
「エイミー、笑わせないで…アッハッハ」

殿下がお腹を抱えて笑っていた。
「エイミー、ハンカチで押さえながら顔がにやけてたわよ」
と、シャーリーが呆れながら言った。

エイミーはハンカチで目を押さえるのをやめて、殿下を見てハッとした。
「殿下!お腹を抱えて笑ってるわ!やったあ!」

エイミーは殿下が笑っているのを喜んでいると、イザベラが不思議そうにしていた。

「何故殿下が笑うと嬉しいの?」

「それは殿下が笑った顔をわたしが見てみたかったからよ」
エイミーはやっぱり変だった。

なんで殿下の笑顔が見たいのかわからない。だって殿下はいつもエイミーを見てニコニコしている。

俺はエイミーに腹が立ってつい言ってしまった。

「君ってやっぱり馬鹿なの?」

「人を馬鹿って言う人の方が馬鹿なんです!」

エイミーは至って真面目に答えた。

「とにかく教科書探しに行かないと!では、馬鹿アラン失礼!」
去って行ったエイミー。一緒に探しに行った殿下とシャーリーとイザベラ。

俺は意地悪をしている女の子達に向かってにっこり微笑んだ。
「君たち、エイミーにあんまり意地悪していたら彼女の家の侯爵家から君たちの家に話が行くかも知れないよ。彼女は力のあるボガード侯爵の娘だからね、どうなるかまではわからないけど」

エイミー達が教室に戻ると何故かみんながシーンとしていて重たい空気だった。


◇ ◇ ◇

社交界デビューは女の子だけではない。
俺たち男も成人となりデビューする。

婚約者のいない俺は、母上の兄の娘、キーラ・タンブリン男爵令嬢をエスコートすることになった。2歳年上である。
キーラとはごくたまに会うだけなので仲が良い訳ではないが別に仲が悪いわけでもない。
二人で仲良く寄り添っていると、仲の良いクラスメイトが声をかけてくる。
「そちらはキーラ様ですよね。お二人は……」

「僕の従姉なんだ。今日はエスコートさせてもらっているんだ」
女の子達はあからさまにホッとして去っていった。

俺は侯爵家の跡取りではないのにそれを知ったらみんな去っていくのだろうかとぼんやりと考えた。

俺の価値なんて侯爵嫡男ということだけ。
誰も俺のことなんて見てくれない。
俺はいつも笑顔で誤魔化して過ごしていた。

少し疲れてベランダに出ていたら、庭にエイミーがいるのに気づいた。
エイミーの変な動きが気になりそっと近づいた。

そしたら話しが聞こえてきた。

「貴方に会いたくなどなかったわ」
「ぼくは、会いたかった。忘れることなんて出来なかった」
この声は父上だ。

「わたしはもう貴方のことは忘れたわ。もう、17年前のことよ。今さらわたしに話しかけないで頂戴」
「ずっと社交界から離れていただろう?どうして突然ここに現れたんだい?」
「もういい加減、時間も経ったから社交を始めてもいいと思ったのよ」

エイミーは顔を見たかったみたいで立ち上がりこっそりと見に行こうとした。
「エイミー?」
と、俺は慌てて声をかけた。

エイミーが振り返った。

「アラン……何か御用かしら?」
エイミーは聞こえてきた声の方に行きたいのに引き止められてイライラしていた。

「庭に出るのはよくないな」

俺は父上を見られたくなくて急いで言い訳をした。

「どうして?」

「女の子には分からないと思うけど、変なヤツに無理矢理絡まれたりするんだ。だから危ないって聞いた」

「あら?大丈夫よ。体術も結構得意なの知っているでしょう?」

俺はエイミーの言い方にイライラして突然抱きしめた。
エイミーは驚いて動けなかった。
いつも食ってかかってくる生意気なエイミーが小さくて壊れそうだったことに驚いた。

「ね?ほら?突然だと体術なんて使えないものなんだ」
そっとエイミーを離して、言い訳をして笑って誤魔化しながら言った。

エイミーは馬鹿にされた気分だったのか悔しそうに叫んだ。

「アランの馬鹿!あんたなんか大っ嫌い!」

エイミーは急いで庭を後にして、会場に戻って行った。

俺はなんとか父上を見られなかったのでホッとしたが、父上に俺の声が聞かれていたかも知れないと内心焦っていた。

でも今の会話はたぶん前妻のルディアという人だと思った。
俺は好奇心で陰からこっそり顔を見た。

そこにいたのはエイミーにそっくりの人だった。

エイミーが何故二人の姿を見ようとしたのか理由がわかった。
そして、いつもエイミーを見るとイライラする理由も今わかった。
あの髪の色だからだったんだ。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。  一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。  そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

佐倉えび
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

処理中です...