【完結】浮気された私は貴方の子どもを内緒で育てます 時々番外編

★高等部1年生⑧

わたしは会場に戻りカイル殿下を見つけた。

「殿下。質問があります」

わたしの顔色が悪いので心配そうにしていた。

「どうしたんだい？顔色が悪いよ」

「先程休憩室で夫人達の噂話を聞きました。わたしのお母様はグランデ侯爵様と結婚していて浮気された。そして子どもができて離縁したと聞きました」

「そんな話を君の前でしたのかい？」

「いえ、奥のソファに座っていたので気づいていなくて話していたみたいです。それにわたしがお母様の子どもだと知らないはずですし、人がいたことに気づいて慌てて部屋を出て行ったんだと思います」

「そっかあ。僕達はある程度貴族達の動きを把握しないといけないから知ってたんだけど……君はどこまで知ったの？」

「わたしが聞いたのは先ほど言ったことだけです。ただ、『侯爵には全く似ていないわよね。あの噂は本当なのかしら？』
『あ、あの噂ね。どうかしら？アラン様のお顔を見ればみんなそう思うわよね』この話を聞いてよくわからなかったんです。どんな噂なのか知りたいのです」

わたしは殿下の顔をジッと見た。

「君は誰の子だと思う？」

「わ、、わたしですか？わたしはたぶんアランのお父様の娘だと思います。離縁した後わたしがお腹にいることがわかったのではないかと思います。だから、わたしは領地で誰にも分からないように育てられたんだと思います。そして今も母達と繋がりがないように見せているのもそれが理由ではないですか？」

「うん、その髪の色を見ればそう思うよね。君のお母様はそれを隠したくて自分の親戚に頭を下げて養子にしたんだからね。君とルディア様が似ていても、ナット領に住むハディッド伯爵の遠い親戚を養子にしたと言うことになっているんだろう？一応聞かれたらそう言うように言われてない？」

「はい、よくご存知ですね」

「貴族の情報を集めておかないと何かがあってからでは困るからね、まあ、このくらいの話は、聞き齧っていれば予想できる答えだよね」

「そうですか…わたしにはわかりませんが…」

「君はアランと異母兄妹になるって気づいてる？」

「……え？あのアランとわたしが？無理！あり得ない！嫌だ！」

「全く気づいてなかったんだね」

「そっかあ、わたしが義妹になるのかあ、ああ～、嫌だあ、妹なんてお姉ちゃんになりたい！」

「そこ？」

「だって姉ではなく妹なんて、下ってことでしょう？許せないわ」

「うん、そうか、そうか」
殿下はクスクス笑った。

「ところで殿下わたしの質問は？」

「うん、それは僕の口からは言えないな」

「どうしてですか？」

「噂だからだよ。噂は噂であって真実ではない。だから、僕が君に話したら噂なのに真実だと思われたら困る」

「ッ‥うー、む、難しすぎます…」
わたしの頭ではよくわからない。

「とにかく殿下の口から言えないということですね。わたし、お母様に直接聞いてみます」

「君の母上はずっと王都を離れていたから噂は知らないと思うよ」

わたしは項垂れた。
「そうですよね、どうしよう」

「聞かないということも大事だと思うよ」

「そうですね、でも真実を知ることも大事だと思います。わたしはずっとみんなに見守られてはいたけどずっと隠されていました。わたし自身がこの王都ではいない存在だったのです」

「確かに君はずっと隠されていたんだったね」

「はい、真実を知りたい」

「ごめんね、それは僕が口にするべきことではない。だから言えない。君が探してごらん。真実を」

殿下はすまなそうに言った。