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★高等部1年生③
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今日はスチュワート公爵家のお茶会にお母様とハノン伯母様、そしてお祖母様が呼ばれている。
わたしは久しぶりにみんなに会えるので昨日からよく眠れなかった。
早くお母様に会いたい。抱きしめられたい。頭を撫でてもらいたい。
わたしは16歳になったはずなのにお母様と別れた12歳に気持ちが戻ってしまった。
あまりにも時間が経たないのでわたしは調理場へ行き、料理人達と一緒にお菓子作りを始めた。
「わたしがシフォンケーキを焼いてもいいかしら?」
「エイミー様が焼いたシフォンケーキは美味しいのでこちらこそお願いします」
料理長がニコニコ笑いながら了解してくれた。
「ありがとう、みんなに料理長直伝のシフォンケーキをわたしが焼いて食べさせたかったの。嬉しいわ」
「テーブルのセッティングも手伝ってもいい?お庭でお花を少し貰ってくるわね」
わたしはお菓子作りやお茶会の準備と頑張って手伝った。
普通は屋敷のお嬢様はそんなことしないわ。でもわたしはこの屋敷のお嬢様ではないので使用人たちとも仲良くさせて貰っている。そして色々なことを教わっているの。
お菓子作りにお庭の手入れの仕方やお花の育て方、馬のブラッシングの仕方も習ったわ。掃除や洗濯も教えて貰ったの。
いずれ学園を卒業したら王宮図書館で働きたい。その時に一人でなんでも出来るようになっていないと苦労するから今はどんなことでも教えて貰っているの。
マーシャ様は、「エイミー、お願いだから辞めて頂戴」と言われ、シャーリーのお父様のライアン様は「エイミーのその好奇心旺盛なのはお祖父様であるルーベン様の血を受け継いでいるんだろうね」
と、笑われた。
◇ ◇ ◇
玄関で三人を出迎えた。
わたしは挨拶を忘れてお母様に抱きついた。
「お母様、会いたかったの。とっても会いたかったの」
お母様はわたしを抱きしめて頭を撫でてくれた。
「エイミー、綺麗になったわね。そして大人になったのね。会いたかったわ」
わたしは涙が溢れて止まらなかった。
三人は客室に通されてマーシャ様とのお茶会が始まった。
勿論わたしとシャーリーも参加させて頂いたわ!
お茶会が終わった後、お母様はわたしの部屋へ来てくれた。
「ここが貴方の部屋なのね」
「ええそうよ。ほとんどシャーリーが選んでくれたからフリルが多い部屋だけどとても気に入っているの。居候のわたしにみんなとてもよくしてくださるのよ。本当の娘みたいに可愛がってくださるの」
「見ていたらわかるわ。エイミーはここでみんなに大事にして貰っているのね」
「ええ。みんな優しいの。お母様、わたし学園に通えて幸せよ。……でも、でもね、たまにハディッド領での毎日を思い出すの。みんなで駆け回ったあの自然を思い出すの。そしたら朝は目が腫れちゃうの…ふふ…わたし、お母様に会いたかったの、1回だけ帰る機会はあったけど時間がなくてゆっくり会えなかったでしょう?お母様、マーシャ様にお願いして許可を頂いているの。わたしの部屋でしばらく過ごして欲しいの。ダメかしら?」
「ええマーシャ様に聞いたわ。わたしも貴方と過ごしたいわ、少しでも一緒にいたいの。貴方の口から今までどんな風に過ごしてきたか教えてほしいわ」
わたしはこの日だけは部屋から出ないでずっとお母様と二人っきりで過ごした。
部屋に食事を運んでもらって二人で笑い合いながら食べた。
次の日からは学校があるのでお母様とは夜しか会えないので少しでも無駄な時間を減らすことにした。
「カイル殿下、わたししばらく図書館に行けなくなりました」
「うん?忙しいのかな?」
「はい‥…殿下はわたしのこと…‥ご存知ですよね?」
殿下はわたしの目をジーッと見た。
「ここで話すことではないかな」
「そうですね、すみません」
二人は教室を出て、廊下の突き当たりの誰もいないところで話した。
「君が侯爵家に養女になったことは知っているよ」
「ではわたしが以前誰だったのかはご存知ですか?」
「……知ってるよ。ハディッド家のルディア様の娘だよね」
「そうです。では父の名もご存知なんですね」
「ああ、知っているよ」
わたしは唾を飲み込んだ。
今ここに真実がある。知りたい欲求と知ることが怖い恐怖で続きを聞くことが躊躇われた。
「エイミー、君は父親のことを知らないんだね?」
わたしは驚いて殿下を見た。
「君はわかりやすいからね。父親の名と言った時顔が強張っていたよ」
「はい、殿下に鎌をかけました」
「そっかぁ、君が知りたいのなら話すよ」
「わかりません」
「うん?」
「聞きたいのか聞きたくないのかわからないのです」
わたしは何故か涙が溢れてきた。
お義父様もお義母様も優しくて大好きだ。お義兄様もメイも大好きで大事な家族。とても幸せだ。
なのにお母様に会いたくて仕方がなくて、本当のお父様に会って見たくて、自分自身の気持ちがよく分からない。
「エイミー、君の家族は君が大切だから今は言えないんだと思う。いずれ知る時がきたら君ならきっと話を聞いて受け入れられると思うよ」
わたしは殿下にお父様のことを聞けなかった。
わたしは久しぶりにみんなに会えるので昨日からよく眠れなかった。
早くお母様に会いたい。抱きしめられたい。頭を撫でてもらいたい。
わたしは16歳になったはずなのにお母様と別れた12歳に気持ちが戻ってしまった。
あまりにも時間が経たないのでわたしは調理場へ行き、料理人達と一緒にお菓子作りを始めた。
「わたしがシフォンケーキを焼いてもいいかしら?」
「エイミー様が焼いたシフォンケーキは美味しいのでこちらこそお願いします」
料理長がニコニコ笑いながら了解してくれた。
「ありがとう、みんなに料理長直伝のシフォンケーキをわたしが焼いて食べさせたかったの。嬉しいわ」
「テーブルのセッティングも手伝ってもいい?お庭でお花を少し貰ってくるわね」
わたしはお菓子作りやお茶会の準備と頑張って手伝った。
普通は屋敷のお嬢様はそんなことしないわ。でもわたしはこの屋敷のお嬢様ではないので使用人たちとも仲良くさせて貰っている。そして色々なことを教わっているの。
お菓子作りにお庭の手入れの仕方やお花の育て方、馬のブラッシングの仕方も習ったわ。掃除や洗濯も教えて貰ったの。
いずれ学園を卒業したら王宮図書館で働きたい。その時に一人でなんでも出来るようになっていないと苦労するから今はどんなことでも教えて貰っているの。
マーシャ様は、「エイミー、お願いだから辞めて頂戴」と言われ、シャーリーのお父様のライアン様は「エイミーのその好奇心旺盛なのはお祖父様であるルーベン様の血を受け継いでいるんだろうね」
と、笑われた。
◇ ◇ ◇
玄関で三人を出迎えた。
わたしは挨拶を忘れてお母様に抱きついた。
「お母様、会いたかったの。とっても会いたかったの」
お母様はわたしを抱きしめて頭を撫でてくれた。
「エイミー、綺麗になったわね。そして大人になったのね。会いたかったわ」
わたしは涙が溢れて止まらなかった。
三人は客室に通されてマーシャ様とのお茶会が始まった。
勿論わたしとシャーリーも参加させて頂いたわ!
お茶会が終わった後、お母様はわたしの部屋へ来てくれた。
「ここが貴方の部屋なのね」
「ええそうよ。ほとんどシャーリーが選んでくれたからフリルが多い部屋だけどとても気に入っているの。居候のわたしにみんなとてもよくしてくださるのよ。本当の娘みたいに可愛がってくださるの」
「見ていたらわかるわ。エイミーはここでみんなに大事にして貰っているのね」
「ええ。みんな優しいの。お母様、わたし学園に通えて幸せよ。……でも、でもね、たまにハディッド領での毎日を思い出すの。みんなで駆け回ったあの自然を思い出すの。そしたら朝は目が腫れちゃうの…ふふ…わたし、お母様に会いたかったの、1回だけ帰る機会はあったけど時間がなくてゆっくり会えなかったでしょう?お母様、マーシャ様にお願いして許可を頂いているの。わたしの部屋でしばらく過ごして欲しいの。ダメかしら?」
「ええマーシャ様に聞いたわ。わたしも貴方と過ごしたいわ、少しでも一緒にいたいの。貴方の口から今までどんな風に過ごしてきたか教えてほしいわ」
わたしはこの日だけは部屋から出ないでずっとお母様と二人っきりで過ごした。
部屋に食事を運んでもらって二人で笑い合いながら食べた。
次の日からは学校があるのでお母様とは夜しか会えないので少しでも無駄な時間を減らすことにした。
「カイル殿下、わたししばらく図書館に行けなくなりました」
「うん?忙しいのかな?」
「はい‥…殿下はわたしのこと…‥ご存知ですよね?」
殿下はわたしの目をジーッと見た。
「ここで話すことではないかな」
「そうですね、すみません」
二人は教室を出て、廊下の突き当たりの誰もいないところで話した。
「君が侯爵家に養女になったことは知っているよ」
「ではわたしが以前誰だったのかはご存知ですか?」
「……知ってるよ。ハディッド家のルディア様の娘だよね」
「そうです。では父の名もご存知なんですね」
「ああ、知っているよ」
わたしは唾を飲み込んだ。
今ここに真実がある。知りたい欲求と知ることが怖い恐怖で続きを聞くことが躊躇われた。
「エイミー、君は父親のことを知らないんだね?」
わたしは驚いて殿下を見た。
「君はわかりやすいからね。父親の名と言った時顔が強張っていたよ」
「はい、殿下に鎌をかけました」
「そっかぁ、君が知りたいのなら話すよ」
「わかりません」
「うん?」
「聞きたいのか聞きたくないのかわからないのです」
わたしは何故か涙が溢れてきた。
お義父様もお義母様も優しくて大好きだ。お義兄様もメイも大好きで大事な家族。とても幸せだ。
なのにお母様に会いたくて仕方がなくて、本当のお父様に会って見たくて、自分自身の気持ちがよく分からない。
「エイミー、君の家族は君が大切だから今は言えないんだと思う。いずれ知る時がきたら君ならきっと話を聞いて受け入れられると思うよ」
わたしは殿下にお父様のことを聞けなかった。
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