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エイミーとの思い出
しおりを挟むレオと侯爵家にエイミーの存在を気づかれたくなかったわたしはエイミーに養子になるように言ったが、本当はずっと二人でハディッド領で両親とのんびりと過ごしたかった。
エイミーが優秀でなければよかったのにと今でも思ってしまう。
従兄にお願いしたのはわたしの母だった。
わたしとレオの離縁のことは知っていたが、わたしが子どもを産んだことは親戚にすら知らせていない。
エイミーの出生の秘密を知っているのはハノンお姉様とトム義兄様だけだ。
だから、クラーク兄さまはエイミーの存在を知らなかった。
エイミーをどうしてもレオ達に知られたくないこと。
本当は領地だけで暮らしていきたかったこと。
エイミーは頭脳明晰で剣技にも長けていてこのまま領地だけで過ごすには勿体ないこと。
スチュワート公爵家が後ろ盾になり面倒を見てくれることなどを話した。
ただ、エイミーの名前をそのまま出せばわたしに似た顔とレオから受け継がれた髪の色でレオの子どもだとわかってしまう危険性が高い。
学園にはエイミーと同じ歳のアランがいる。
どこで漏れてしまうかわからない。
なので名前を変える必要があった。
それもエイミーにとって遠い親戚でレオがわたしの従兄だと知らない方が尚良かった。
クラーク兄さま達とは実はあまり仲が良くなかった。
母は侯爵家の出なのに、父は男爵家の出であった。
しかも命をかけた辺境地の部隊の隊長で、戦争がいつ始まってもいい状態の睨み合いの中、母は父にいつ会えなくなるのかわからない状態は辛いと無理やり父と結婚したのだ。
そのため二人の結婚は反対されて母は、実家と縁を切っていた。
父が戦争を止めた立役者となってからは少しずつ親戚付き合いも始まった。
父が勲章をもらい男爵から陞爵し、伯爵になり領地もかなり広がった。
クラーク兄さまとリリアン様は、母の話を聞いてからわたしとも面会をしてくれた。
エイミーを何度か領地にこっそりと見に来てくれてエイミーを気に入って、養子となった。
エイミーには人に聞かれることがあればナット領に住むハディッド伯爵の遠い親戚だったと答えるように教えた。
エイミーは、聡い子なので父親がいないのには何か訳があることはわかっているみたいだ。
わたし達が誤魔化してついた嘘はたぶんエイミーにはわかっていたのだと思う。
『お母様、ボガード家の子どもになったらわたしは人前ではお母様のことをおばさまと呼びますね。そうしないとハディッド家とわたしの繋がりが人にわかってしまうから。
ハノン叔母さまの従兄のミシェルにも伝えておいて欲しいの。学園で会ってもわたし達は知らないもの同士。お互い話しかけないようにしないとそこからまたわかっては困るから…』
エイミーは悲しそうにわたしを見た。
わたしはエイミーを抱きしめて頭を撫でた。
いっぱい抱きしめて何度も「愛しているわ」
と泣きながら伝えた。
◇ ◇ ◇
わたしはハディッド邸でしばらく過ごすことにしている。
あとひと月もすれば王宮での舞踏会がある。エイミーは16歳になるのでその日が社交界デビューになる。
エスコートはラオールが務めてくれるらしい。
二人はとても仲の良い兄妹になっている。
わたしは、エイミーのためにドレスで着けるアクセサリーをプレゼントすることにした。
そして刺繍を刺したハンカチをプレゼントするつもりだ。エイミーが喜んでくれるといいのだけど。
王都に来ても中々会えないエイミー。これが今のわたしとエイミーの親子の距離なのだと感じずにはいられなかった。
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