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陛下との対面②
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陛下はわたしの問いに答えようとはしない。
わたしもそれ以上言葉を発することはできなかった。
“ティーナ、言いたいことを言ってやれ!僕がついてるから!何かされたらここから逃げだそう”
「陛下…わたしには記憶がありませんでした。でも周りから聞こえてくる話で……わたしは陛下からの命令で人柱にされようとしたこと、お母様がそれを庇って自らが身を投げたことを聞きました。
貴方にとってわたし達は取るに足らない存在なのでしょう。
ならばわたしなど捨ててしまえばいいのではないでしょうか?離れにどうして住まわせたのですか?
義弟や側妃様達に詰られ馬鹿にされ、食事も衣服もまともに与えて貰えずに苦しむ生活を強いるのが見ていてそんなに楽しかったですか?」
「………」
「わたしは義弟に犯されるところでした。それほどわたしがお嫌いなら、そしてお母様を憎んでいるのならわたし達親子と縁を切ればよかったのではと思います」
「お前に何がわかる?」
「何がって?わかるわけないです。わたしを睨んでいつも冷たい目で見られて、離れで怯えるように暮らすしかなかったわたしに貴方の何を分かれと言うのでしょう?」
「生意気になったな。セリーヌはいつも心優しい穏やかな女性だったと言うのに」
「ではわたしはお母様ではなく陛下に似たのでしょう」
「わたしに?…………そうか……見た目はセリーヌにそっくりだが……クククッ。そうかお前は大人しくて淑やかだと思っていたがわたしに似ているのか?逞しい娘に育ったんだな」
急に笑い出した陛下に驚いて呆然と見ていた。
「わたしはこの国の王だ。この国のためなら自分の娘だろうが妻だろうが見捨てる。それだけだ」
陛下は少し寂しそうに笑った。
この言葉は本心だろう。だけどそれは国王としてなのだと思う。
「陛下、わたしに離れで暮らす許可をいただけないでしょうか?」
ダメ元で聞いてみた。
「なぜだ?やっとこの王城から出られたはずだ。公爵達はお前を大切にしていると報告を受けている」
「とても大切にしてもらっています。……だけど思い出すのは離れで過ごした日々なんです。それに……いつ帰って来てもいいように離れを綺麗にしてくれていましたよね?」
「……お前のためではない」
「お母様のため?……ですか」
「わたしは若かった。宰相に良いように言いくるめられセリーヌを信じられなかった。セリーヌは俺のために死んだ兄の墓を大切にしてくれていただけだったのに。まだ王太子になったばかりで政務で忙しく兄の墓に参ることが出来ない俺のためだった。なのに兄を愛していると思い冷遇して側妃を娶り息子達を可愛がった」
「陛下ってお母様を愛していたのですか?側妃様達を愛しているものだと思っていました」
「側妃達は勢力が偏らないように無理矢理宰相に娶らされたんだ……」
「うわっ、最低」
「最低だな、愛してもいない女達を大切にして愛しているセリーヌを蔑ろにしたんだ。そしてわたしが殺した」
「………お母様を死なせたこと後悔していますか?わたしが死ねばよかったと本当は思っているのでしょう?」
「………セリーヌが亡くなったことはとても辛い。だがクリスティーナが生き残ったことは内心嬉しかった。わたしにも父親としての気持ちがあったんだと思う」
「あの世でお母様にいっぱい文句を言われたらいいんですよ。陛下のせいでお母様は死んだんですから!愛されていないと思ってずっと辛い思いをしたんです」
「君のおかげでこの国の水の心配はなくなった。国民達の生活が安定したのも全て君とアクア様のおかげだ。あとは後継者を育てればわたしはセリーヌの元へ行くつもりだ」
「義弟達はどうしていますか?」
「あれらは罪を償ってから平民へと落とされる。ただ王都には近寄らせはしない。王都への接近禁止命令を出している。それは側妃二人にもだ。だからクリスティーナは安心して暮らして欲しい」
わたしは令嬢達に言われたことを思い出した。
陛下の大切な家族をわたしの所為でバラバラにさせてしまったのだ。
「陛下の大切な家族をわたしの所為で追い出す事になって申し訳ありませんでした」
「息子達は確かに可愛い。だがあんな傲慢な子になったのはわたしが甘やかしたからだ。側妃達がお前にしたことはあまりにも度を超えていた。なのにわたしは見て見ぬ振りをしていた。多少は仕方がないと。それが息子達を助長させてしまったんだ」
「………よかったのでしょうか」
「これは父親として判断したわけではない。国王として息子達がこの国を継ぐべきではないと判断したまでだ。あの二人にこの国を託すことは出来ない」
「わたしには何もお答えすることはできません」
「わたしは全てを間違えてしまったんだ……君が離れで暮らすことは許可はできない。いずれこの城は新しい国王に譲る事になる。その時君がここにいては何かと争いになるだろう。
君はわたしの実の娘で正妃の娘なんだ、この国の第一継承者はクリスティーナであるはずだったのだからな。それを今は君を排除している状態だ。
出来れば醜い争いでしかない王位継承権争いの中に入って欲しくはない」
「わたしは権力なんて興味ありません。離れに暮らすことは諦めます」
仕方がないわよね、確かにここに居座れば王位が欲しいと思われてしまう。
ただ住み慣れた離れで暮らしたいと言っても誰も信じてはくれないだろう。
それから陛下と少しだけ会話をして、わたしはもう一日離れで過ごしてから王城を去ると話した。
「わたしは良い父親ではない。そしてこれからも君の父親になるつもりはない。
公爵家で幸せに暮らしなさい。あの二人は君が居なくなってかなり落ち込んでいる。それにヴィルも探し回っている。まわりがどれだけ心配してくれているか少しは考えて行動すべきだと思う」
「わたしも貴方の娘になるつもりはありません」
生意気なことを言って言い返すと陛下は一瞬辛そうな顔をした。
「ではわたしは陛下にお会いすることはもうないと思いますが、貴方がお母様の元へ行くことは出来ないと思いますよ?」
「死んでもセリーヌには会えないのか……それだけのことをしたからな」
後悔しているのかしら?
もう少し苦しめばいい。わたしは優しくないからそう思った。
「じゃあ行きますね」
アクアが “行くよ” と言ってわたしを離れに飛ばしてくれた。
その時一瞬お母様が陛下の前に現れる姿が目に映った。
ーーお母様?
“我慢できなくなってセリーヌ出て行っちゃったよ。たぶん今からずっとセリーヌから文句を言われて過ごすんじゃない?セリーヌが我慢できなくなったら僕の住む世界にまた帰るって言ってた”
ーーこれからお母様はどうするのかしらね?
責めまくるのか、怒って文句を言うのか、許すのか、許さないで出ていくのか。
どちらにしろ陛下は嬉しいでしょうね。
生きているなんて思っていなかっただろうから。
わたしもそれ以上言葉を発することはできなかった。
“ティーナ、言いたいことを言ってやれ!僕がついてるから!何かされたらここから逃げだそう”
「陛下…わたしには記憶がありませんでした。でも周りから聞こえてくる話で……わたしは陛下からの命令で人柱にされようとしたこと、お母様がそれを庇って自らが身を投げたことを聞きました。
貴方にとってわたし達は取るに足らない存在なのでしょう。
ならばわたしなど捨ててしまえばいいのではないでしょうか?離れにどうして住まわせたのですか?
義弟や側妃様達に詰られ馬鹿にされ、食事も衣服もまともに与えて貰えずに苦しむ生活を強いるのが見ていてそんなに楽しかったですか?」
「………」
「わたしは義弟に犯されるところでした。それほどわたしがお嫌いなら、そしてお母様を憎んでいるのならわたし達親子と縁を切ればよかったのではと思います」
「お前に何がわかる?」
「何がって?わかるわけないです。わたしを睨んでいつも冷たい目で見られて、離れで怯えるように暮らすしかなかったわたしに貴方の何を分かれと言うのでしょう?」
「生意気になったな。セリーヌはいつも心優しい穏やかな女性だったと言うのに」
「ではわたしはお母様ではなく陛下に似たのでしょう」
「わたしに?…………そうか……見た目はセリーヌにそっくりだが……クククッ。そうかお前は大人しくて淑やかだと思っていたがわたしに似ているのか?逞しい娘に育ったんだな」
急に笑い出した陛下に驚いて呆然と見ていた。
「わたしはこの国の王だ。この国のためなら自分の娘だろうが妻だろうが見捨てる。それだけだ」
陛下は少し寂しそうに笑った。
この言葉は本心だろう。だけどそれは国王としてなのだと思う。
「陛下、わたしに離れで暮らす許可をいただけないでしょうか?」
ダメ元で聞いてみた。
「なぜだ?やっとこの王城から出られたはずだ。公爵達はお前を大切にしていると報告を受けている」
「とても大切にしてもらっています。……だけど思い出すのは離れで過ごした日々なんです。それに……いつ帰って来てもいいように離れを綺麗にしてくれていましたよね?」
「……お前のためではない」
「お母様のため?……ですか」
「わたしは若かった。宰相に良いように言いくるめられセリーヌを信じられなかった。セリーヌは俺のために死んだ兄の墓を大切にしてくれていただけだったのに。まだ王太子になったばかりで政務で忙しく兄の墓に参ることが出来ない俺のためだった。なのに兄を愛していると思い冷遇して側妃を娶り息子達を可愛がった」
「陛下ってお母様を愛していたのですか?側妃様達を愛しているものだと思っていました」
「側妃達は勢力が偏らないように無理矢理宰相に娶らされたんだ……」
「うわっ、最低」
「最低だな、愛してもいない女達を大切にして愛しているセリーヌを蔑ろにしたんだ。そしてわたしが殺した」
「………お母様を死なせたこと後悔していますか?わたしが死ねばよかったと本当は思っているのでしょう?」
「………セリーヌが亡くなったことはとても辛い。だがクリスティーナが生き残ったことは内心嬉しかった。わたしにも父親としての気持ちがあったんだと思う」
「あの世でお母様にいっぱい文句を言われたらいいんですよ。陛下のせいでお母様は死んだんですから!愛されていないと思ってずっと辛い思いをしたんです」
「君のおかげでこの国の水の心配はなくなった。国民達の生活が安定したのも全て君とアクア様のおかげだ。あとは後継者を育てればわたしはセリーヌの元へ行くつもりだ」
「義弟達はどうしていますか?」
「あれらは罪を償ってから平民へと落とされる。ただ王都には近寄らせはしない。王都への接近禁止命令を出している。それは側妃二人にもだ。だからクリスティーナは安心して暮らして欲しい」
わたしは令嬢達に言われたことを思い出した。
陛下の大切な家族をわたしの所為でバラバラにさせてしまったのだ。
「陛下の大切な家族をわたしの所為で追い出す事になって申し訳ありませんでした」
「息子達は確かに可愛い。だがあんな傲慢な子になったのはわたしが甘やかしたからだ。側妃達がお前にしたことはあまりにも度を超えていた。なのにわたしは見て見ぬ振りをしていた。多少は仕方がないと。それが息子達を助長させてしまったんだ」
「………よかったのでしょうか」
「これは父親として判断したわけではない。国王として息子達がこの国を継ぐべきではないと判断したまでだ。あの二人にこの国を託すことは出来ない」
「わたしには何もお答えすることはできません」
「わたしは全てを間違えてしまったんだ……君が離れで暮らすことは許可はできない。いずれこの城は新しい国王に譲る事になる。その時君がここにいては何かと争いになるだろう。
君はわたしの実の娘で正妃の娘なんだ、この国の第一継承者はクリスティーナであるはずだったのだからな。それを今は君を排除している状態だ。
出来れば醜い争いでしかない王位継承権争いの中に入って欲しくはない」
「わたしは権力なんて興味ありません。離れに暮らすことは諦めます」
仕方がないわよね、確かにここに居座れば王位が欲しいと思われてしまう。
ただ住み慣れた離れで暮らしたいと言っても誰も信じてはくれないだろう。
それから陛下と少しだけ会話をして、わたしはもう一日離れで過ごしてから王城を去ると話した。
「わたしは良い父親ではない。そしてこれからも君の父親になるつもりはない。
公爵家で幸せに暮らしなさい。あの二人は君が居なくなってかなり落ち込んでいる。それにヴィルも探し回っている。まわりがどれだけ心配してくれているか少しは考えて行動すべきだと思う」
「わたしも貴方の娘になるつもりはありません」
生意気なことを言って言い返すと陛下は一瞬辛そうな顔をした。
「ではわたしは陛下にお会いすることはもうないと思いますが、貴方がお母様の元へ行くことは出来ないと思いますよ?」
「死んでもセリーヌには会えないのか……それだけのことをしたからな」
後悔しているのかしら?
もう少し苦しめばいい。わたしは優しくないからそう思った。
「じゃあ行きますね」
アクアが “行くよ” と言ってわたしを離れに飛ばしてくれた。
その時一瞬お母様が陛下の前に現れる姿が目に映った。
ーーお母様?
“我慢できなくなってセリーヌ出て行っちゃったよ。たぶん今からずっとセリーヌから文句を言われて過ごすんじゃない?セリーヌが我慢できなくなったら僕の住む世界にまた帰るって言ってた”
ーーこれからお母様はどうするのかしらね?
責めまくるのか、怒って文句を言うのか、許すのか、許さないで出ていくのか。
どちらにしろ陛下は嬉しいでしょうね。
生きているなんて思っていなかっただろうから。
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