【完結】家族に冷遇された姫は一人の騎士に愛を捧げる。貴方を愛してもいいですか?

たろ

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ヴィー、さよならだね

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 アクアがヴィーとわたしを一度公爵家に連れ帰ってくれた。

 ーーここは……わたしの部屋。

 見慣れた場所。

「ヴィー、助けに来てくれてありがとう」

 淡々とお礼を言ってわたしはすぐに姿を消すつもりでいた。

「クリスティーナ様、みんなが心配しています。ずっと何日も探していたんです」

「ずっと?わたしがアクアのところに行ってまだ一日経っていないわ、確かにもう夜だけど半日くらいだよ」

「何を言っているんですか?もう五日も経っています」

「そんな…だってわたしが屋敷を出たのは昼間だよ……」

 “人間の世界と妖精の世界の時間は違うんだ”

 ーーそうなの?

 “うん、妖精の時間はゆっくりと流れてるから”

 ーーだから数時間だと思っていたのに数日経っていたの?

 “うん”

 ーーアクア態と教えてくれなかったんでしょう?

 “みんな意地悪。心配させて何が悪いの?”

 ーーはぁー、アクア……

 今更怒ってももう五日も経っているのだったら言い訳できないわ。
 どちらにしろこの屋敷から出てアクアのいる場所に行くつもりだったんだもの。

「お願いです、突然居なくなるのはやめて下さい。貴女をどれだけみんなが心配して探し回ったと思っているのですか」

「……あっごめんなさい」

 自分のことしか考えていなかった。

「違います責めてるわけではないんです。お願いですから一人で我慢するのはやめて下さい」

「我慢なんてしていないわ」

「令嬢達のことは聞きました。酷いことを言ったのは向こうだと、周りにいたメイドが話してくれました。
 クリスティーナ様は何もしていないんだと……なのにあんな聞き方をした……すみません。
 疑ったわけではなかったんです、ただ、あの泥水の仕業はアクア様なのにそのことを周りには知られては困るし……どんな風に言おうか悩んで『クリスティーナ様がしたのですか』と聞いてその後『でもそんなことどうやってできると言うのですか?』と続けるつもりでいたんです……
 俺があんな聞き方をしたから傷つけた」

「わたしがアクアにさせたと思ったんじゃないの?」

「クリスティーナ様はそんな人では有りません。人が嫌がることはしないしすぐに自分が我慢すればいいと耐えてしまう人です」

「そんな良い人ではないわ……」

「お願いです、俺のことが嫌ならもう貴女の前には現れません。ですから出て行かないでください。
 周りから貴女はまだ軽くみられているところがあるようです、公爵令嬢になったのに王城で……悔しいですが蔑まれた時の立場のせいで今もまだ軽くみられることが続いてしまっていたようです。あの令嬢達にはしっかりと罰を与えることになりました。
 公爵令嬢であるクリスティーナ様を害するなんて絶対許すべきではないのです」

「罰……?」

「別に処刑するとかそんなことでは有りません。厳重注意と令嬢教育のやり直しです」

 “やり直しってしばらく修道院へ行って反省することらしいよ”

 ーーそうなの?修道院って厳しいのでしょう?

 “うん見てきたけどあれなら反省すると思う”

 ーー見てきたの?

 “反省してなかったら僕が罰を与えるつもりだからね”

 ーーアクアの罰が一番怖いわ

 “そうかな?”

 ーー何するかわからないもの

「アクアが……彼女達が反省しているって言ってるわ」

「そうでしょうね、反省しなければあの修道院からは二度と出して貰えませんからね。それにこのままでは何処からも婚約の話は来ないでしょうしね、公爵家を敵に回せばどれだけ怖いのか娘達は知らなかったのでしょう。親達は真っ青になって何度も義兄上達に謝っていましたが、『クリスティーナに謝ることであって私達に謝罪は必要ない』と冷たくあしらわれていました」

「そう……わたしは心が込もってない謝罪なんていらないわ」

「あと……リーゼのことですが……」

「あ、ごめんなさい。わたしがヴィ……ルの時間を取り上げてしまったからリーゼ様との結婚を遅らせてしまったみたいね?
 もう貴方の時間を拘束することはしないわ。ここでは他に護衛してくれる人はいるから……だからヴィルには幸せになって欲しいの……
 わたし疲れたから少し休みたいの……
 後でお父様達には心配かけたこと謝りに行くから今は一人にさせて欲しいの」

「クリスティーナ様……わかりました、何かありましたらサラをお呼びください」

「わかったわ」

 ヴィーの顔を見ることができなくて視線を逸らしたままでいた。



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