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どうしてここに?
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「クリスティーナに触るな!」
宰相の手からわたしを引き離し抱きしめてくれた。
「ヴィー、どうしてここに?」
「アクア様が突然ここに連れて来たんです」
ーーアクアが?
わたしは周囲を見回した。だけどアクアは何処にもいない。
「ヴィル、貴様はわかっているのか?わたしに逆らうことがこの国でどうなるか、わかっているのか?」
「もうそんなことどうでもいいんです。クリスティーナ様をお守りできなければこの国にいても何の意味もありません」
「その娘をわたしに寄越せ。セリーヌ様の代わりにわたしのそばで過ごさせるんだ。ずっとこの娘が成人するのを待っていたんだ。わたしの花嫁にするつもりでいたのに、お前達が勝手に外に連れ出したんだ。やっと私の手の中に戻って来たんだ」
宰相は私に手を伸ばしてきた。
目が濁っているし何とも歪んだ顔つきで、私は思わずヴィーの後ろに後退って隠れた。
「ヴィル、この娘を庇えばお前は牢に入れられるぞ。不法で王城に侵入してきたんだ。なんならわたしならお前を処刑にも出来る」
ーーそんな……
わたしは思わず前に出ようとした。
「クリスティーナ様、駄目だ。俺のことはいいんです。俺は貴女を守ると言ったのに令嬢達からの酷い言葉に守るどころか貴女を疑ってしまいました。いや、嫉妬してしまいついあんな事を言った酷い男なんです」
「嫉妬?」
「そんな話より早くこちらに来なさい。今ならヴィルの不法侵入には目を瞑ろう。クリスティーナ様、貴女次第で彼の命は決まるのですよ?」
ーーヴィーはずっとわたしを守ってくれた。
だから次はわたしが守る番だわ。
「駄目だ、クリスティーナ様行かないで下さい、頼むから行くな!」
わたしはヴィーの顔を見て首を横に振った。
「ヴィー、助けに来てくれてありがとう」
ーーアクア聞こえてる?お願いヴィーを王城から連れ出して!
“ティーナ一緒に帰ろう”
ーー駄目よ、わたしが逃げたら後でヴィーを捕まえに来るもの。
“ティーナ!”
ーーアクア、お願いヴィーを助けて!
“や、やだよ”
わたしは宰相に腕を掴まれた。そして引き寄せられた。
「やっとわたしのものになるんだ」
そう言うとわたしの頬を手で触った。
「やっ!」
思わず宰相の手を振り払った。
すると「このっ!」頬を叩かれた。
男の人の力はかなり強い。手加減なしで叩かれてわたしは壁に体を打ちつけてしまった。
“ティーナ!”
ーーアクアお願い、ヴィーを連れて逃げて!
「この生意気な姫様は痛い思いをしないと駄目みたいだな」
そう言うとわたしの足を踏みつけてきた。
「あっ……」痛い、だけど声を出したらヴィーが心配する。
ヴィーが宰相に向かって「やめろ!」と叫び殴りかかってきた。
「駄目!」わたしは慌てて立ち上がり宰相の前に立ちはだかった。
「ヴィー、駄目だよ。この人を殴ったらそれこそ捕まってしまう。わたしは平気だから」
“僕この国嫌いだ、ティーナ一緒に僕の国で暮らそう”
ーーアクア?
“もうこの国の水全部枯らしちゃう”
ーー駄目、駄目だよ。お願い、みんなが死んじゃう。
“なんでティーナだけが苦しむんだよ。悪い奴らばかりじゃない”
ーー違う、悪い人もいるけど優しい人もいるの。
「ここで何をしているんだ?」
この声は………
「陛下」
宰相は真っ青な顔をしてヴィーを指さした。
「この男が不法侵入をしてきたので捕えようとしていたのです」
「クリスティーナは何故ここに居るんだ?」
陛下は冷たい視線をわたしに向けた。
「わたしは……アクアに庭を見たいとお願いして連れてきてもらいました。ヴィルも護衛としてついて来てくれたのです。不法侵入になると思わないでいたわたしが悪いのです。罰するならわたしにお願いします」
「陛下、違います。罰はわたしが受けます」
ヴィーが慌てて頭を下げた。
「宰相、何故クリスティーナの頬が腫れているんだ?」
「さ、さぁ、虫にでも刺されたのでは?」
「ほお、クリスティーナ、そうなのか?」
「違います!この人はわたしを慰み者にしようとしたのです。言うことを聞かせるために頬を叩きわたしの足を踏みつけたのです」
「どう言うことだ!宰相!!」
陛下は宰相を射殺すかのような目で睨みつけた。
辺りの空気が気のせいとは思えないほど急激に冷えはじめた、思わず両手で肩を抱きしめて体がぶるっと震えてしまった。
宰相もあまりの圧に耐えきれず腰を抜かして床に座り込んでしまった。
「コイツを捕まえて牢にぶち込め!全て真実を吐くまで取り調べろ!死んでもかまわん」
「わたしは何もしていません。ただクリスティーナ様を保護しようとしたまでです」
「黙れ!早く連れて行け」
宰相が去った後、陛下はわたしをチラッと一瞥すると
「アクア様にさっさと連れ帰ってもらえ。ここには二度と来るな」
「陛下申し訳ありませんでした、見逃していただいたこと感謝致します」
ーーアクア、わたしも一緒に王城から連れ出して!
ヴィーは元の場所に帰してあげて。
わたしはまたあの水の中に戻るから。
“わかった”
宰相の手からわたしを引き離し抱きしめてくれた。
「ヴィー、どうしてここに?」
「アクア様が突然ここに連れて来たんです」
ーーアクアが?
わたしは周囲を見回した。だけどアクアは何処にもいない。
「ヴィル、貴様はわかっているのか?わたしに逆らうことがこの国でどうなるか、わかっているのか?」
「もうそんなことどうでもいいんです。クリスティーナ様をお守りできなければこの国にいても何の意味もありません」
「その娘をわたしに寄越せ。セリーヌ様の代わりにわたしのそばで過ごさせるんだ。ずっとこの娘が成人するのを待っていたんだ。わたしの花嫁にするつもりでいたのに、お前達が勝手に外に連れ出したんだ。やっと私の手の中に戻って来たんだ」
宰相は私に手を伸ばしてきた。
目が濁っているし何とも歪んだ顔つきで、私は思わずヴィーの後ろに後退って隠れた。
「ヴィル、この娘を庇えばお前は牢に入れられるぞ。不法で王城に侵入してきたんだ。なんならわたしならお前を処刑にも出来る」
ーーそんな……
わたしは思わず前に出ようとした。
「クリスティーナ様、駄目だ。俺のことはいいんです。俺は貴女を守ると言ったのに令嬢達からの酷い言葉に守るどころか貴女を疑ってしまいました。いや、嫉妬してしまいついあんな事を言った酷い男なんです」
「嫉妬?」
「そんな話より早くこちらに来なさい。今ならヴィルの不法侵入には目を瞑ろう。クリスティーナ様、貴女次第で彼の命は決まるのですよ?」
ーーヴィーはずっとわたしを守ってくれた。
だから次はわたしが守る番だわ。
「駄目だ、クリスティーナ様行かないで下さい、頼むから行くな!」
わたしはヴィーの顔を見て首を横に振った。
「ヴィー、助けに来てくれてありがとう」
ーーアクア聞こえてる?お願いヴィーを王城から連れ出して!
“ティーナ一緒に帰ろう”
ーー駄目よ、わたしが逃げたら後でヴィーを捕まえに来るもの。
“ティーナ!”
ーーアクア、お願いヴィーを助けて!
“や、やだよ”
わたしは宰相に腕を掴まれた。そして引き寄せられた。
「やっとわたしのものになるんだ」
そう言うとわたしの頬を手で触った。
「やっ!」
思わず宰相の手を振り払った。
すると「このっ!」頬を叩かれた。
男の人の力はかなり強い。手加減なしで叩かれてわたしは壁に体を打ちつけてしまった。
“ティーナ!”
ーーアクアお願い、ヴィーを連れて逃げて!
「この生意気な姫様は痛い思いをしないと駄目みたいだな」
そう言うとわたしの足を踏みつけてきた。
「あっ……」痛い、だけど声を出したらヴィーが心配する。
ヴィーが宰相に向かって「やめろ!」と叫び殴りかかってきた。
「駄目!」わたしは慌てて立ち上がり宰相の前に立ちはだかった。
「ヴィー、駄目だよ。この人を殴ったらそれこそ捕まってしまう。わたしは平気だから」
“僕この国嫌いだ、ティーナ一緒に僕の国で暮らそう”
ーーアクア?
“もうこの国の水全部枯らしちゃう”
ーー駄目、駄目だよ。お願い、みんなが死んじゃう。
“なんでティーナだけが苦しむんだよ。悪い奴らばかりじゃない”
ーー違う、悪い人もいるけど優しい人もいるの。
「ここで何をしているんだ?」
この声は………
「陛下」
宰相は真っ青な顔をしてヴィーを指さした。
「この男が不法侵入をしてきたので捕えようとしていたのです」
「クリスティーナは何故ここに居るんだ?」
陛下は冷たい視線をわたしに向けた。
「わたしは……アクアに庭を見たいとお願いして連れてきてもらいました。ヴィルも護衛としてついて来てくれたのです。不法侵入になると思わないでいたわたしが悪いのです。罰するならわたしにお願いします」
「陛下、違います。罰はわたしが受けます」
ヴィーが慌てて頭を下げた。
「宰相、何故クリスティーナの頬が腫れているんだ?」
「さ、さぁ、虫にでも刺されたのでは?」
「ほお、クリスティーナ、そうなのか?」
「違います!この人はわたしを慰み者にしようとしたのです。言うことを聞かせるために頬を叩きわたしの足を踏みつけたのです」
「どう言うことだ!宰相!!」
陛下は宰相を射殺すかのような目で睨みつけた。
辺りの空気が気のせいとは思えないほど急激に冷えはじめた、思わず両手で肩を抱きしめて体がぶるっと震えてしまった。
宰相もあまりの圧に耐えきれず腰を抜かして床に座り込んでしまった。
「コイツを捕まえて牢にぶち込め!全て真実を吐くまで取り調べろ!死んでもかまわん」
「わたしは何もしていません。ただクリスティーナ様を保護しようとしたまでです」
「黙れ!早く連れて行け」
宰相が去った後、陛下はわたしをチラッと一瞥すると
「アクア様にさっさと連れ帰ってもらえ。ここには二度と来るな」
「陛下申し訳ありませんでした、見逃していただいたこと感謝致します」
ーーアクア、わたしも一緒に王城から連れ出して!
ヴィーは元の場所に帰してあげて。
わたしはまたあの水の中に戻るから。
“わかった”
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