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わたしはしていない。

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 ヴィーがわたしを疑った。

 ヴィーはアクアのことを知っている。

 だからわたしがアクアにさせたと思ったの?

 そう思うとまた声が出なかった。

 今日はずっと奥に何か詰まってしまって声が出なくなる。

 わたしは首を横に振る。

『違う、わたしじゃない』

 だけどそう言えばアクアが悪者になってしまう。

 “ティーナ、ごめん。そんな悲しそうな顔しないで。僕がこんなことしたからみんなに責められてる。ごめん。ごめん。泣かないで”

 ーーううん、アクアはわたしのことを想ってしてくれたのよね?だけどこんなことしないでね。アクアが悪い妖精だと思われるのは嫌なの。

 と言ってもここにいる人達は妖精のアクアのことを知らない。

「クリスティーナ様には何か怖いものが憑いているのですか?」

「嫌だわなんだか怖い」

 わたしがアクアと話している姿は、知らない人からすると宙をずっと見つめている変な人にしか見えないのだろう。

 今までアクアと話すのに人目を気にしなかった。
 だって誰もそんなこと言わなかったしわたしがアクアと話すのは周りは当たり前だと思ってくれていたから。

 ーーアクア、今度から人の前では話さない方がいいのかもしれない……

 悲しくて辛かった。

 だけど令嬢達に「ごめんなさいみなさん着替えは用意してもらいます。わたしはこの場にいない方がいいみたいですのでこれで失礼します。」

 言い訳はしない。

 だけどヴィーの顔を見るのも嫌だった。

 ヴィーがほんの少しでもわたしを疑った。もうそれだけでわたしの心は凍りついてしまった。

 リーゼ様との結婚を邪魔していたわたし。やっとヴィーはわたしから解放されたのにまだこの屋敷に居ることが嫌だったのかしら?ヴィーというよりもリーゼ様がわたしのことを嫌がっているのだろう。

 それでもヴィーは護衛としてわたしのそばにいてくれたんだ。

「クリスティーナ様!」

 ヴィーの声が後ろから聞こえてきた。だけどわたしは振り返ることもなく部屋を出た。

 ーー部屋に帰りたくない。

 “だったら僕のところに来る?”

 ーーアクアのところ?

 “うん”

 アクアがわたしを抱きしめてくれた。

 冷たくて気持ちがいい。水の中に包まれて………わたしはスーーっと水の中に入ってしまった。

 不思議に苦しくない。息が出来る。

 静かな世界。

 ーーアクアはこんな世界に住んでいるの?

 “うん?普段は妖精の国にいるよ。今はティーナといるためにここにいるだけ。ティーナ、ごめんね、嫌な思いをさせて”

 いつも元気なアクアがシュンとなって落ち込んでいた。

 ーーもうあんなことしない?

 “しない”

 ーー人を苦しめては駄目。イタズラも駄目。

 “わかった、ティーナが酷いことをされた時しかしない”

 ーーうん、もう何も起こらないわ

 だって………

 わたしはこの世界でゆっくり過ごすつもりだから。

 “僕は嬉しいけどティーナはいいの?”

 ーーうん、まだ帰りたくない。

 だって離れを出たら楽しい世界が広がっているはずなのに、アクアと話すのも周りに気を遣わないといけないみたいだし、大好きなお母様の庭にはいけないし……

 離れに帰りたい。

 “セリーヌの庭に連れて行ってあげるよ”

 ーーでもあそこに勝手に行くことはできないわ

 “僕なら連れて行ける”

 アクアがパチンと指を鳴らした。

 するとわたしはセリーヌの庭に立っていた。

 ーーえ?ここは、お母様のお庭?

 あたりを見回した。いつも手入れをしていた時と同じように花々は咲いていた。

 私が植えていない花もいつの間にか咲いていた。

 “僕が花の種を植えたんだ”

 アクアが誇らしげに言った。

 ーーアクアありがとう。嬉しい、ずっと心配だったの。花達が枯れていないか一度だけでも確かめにきたかったの

 “じゃあ今度から時々連れてきてあげるよ”

 ーーありがとう。
 しばらくここにいてもいいかな?

 わたしが住まなくなってこの辺りには全く人影がなくなってとても寂しく感じた。









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