種子生成で変わる世界

そごね

文字の大きさ
上 下
5 / 23

来る日去る日

しおりを挟む
「ジュキ!!」


 私だって馬鹿じゃない。
 多分だけど、ケンは外に野菜を売りに行くのだろう。
 私だって、バカじゃないもん。
 それぐらいわかる。
 周りの大人たちの様子を見ていれば、その様子は顕著だ。

 最近私のことを変人だと言う人は少なくなってきている。
 私のことを敬っている人も多いと感じるのは気のせいなのかもしれないけど、ちょっとうぬぼれているところもあるよ。


「なに?ケン」

「もうそろそろ外の世界にこの野菜を売りに行こうと思うんだ」

「そうなんだ。」

「喜ばしくないのか?悲しいのか?」

「悲しいよ。だって私置いてくんでしょ」


 ケンはハッとしたのか、「すぐ戻る」と残していき、どこかに走って行ってしまった。
 別に怒ってるわけでもないし、喜ばしくない訳でもない。
 けど、なんか寂しいし置いていかれるって思うと、ちょっと悲しい。

 私はエルフにとってまだ子供だから、この村から出る事は許されない。
 ケンは生まれてから200年経つみたいで、もうそろそろ成人の儀式が行われるだろう。
 まだケンは外に出ることを許されているからいいけど、私は絶対に外に出る事は許されないだろうな。

 ちなみに、私のひとつ下の子は私より20年離れている。
 その下の子は?最近生まれた子が1人いる位で、エルフの子供っていうのは何十年に1人生まれるか生まれないか位のとても繁殖意欲が少ない。
 ちなみに、私の弟と妹は人間だ。
 なので、もう死んでしまっている。


「ジュキ!!!ちょっと来てくれ!!!」

「え?」


 長老の家に呼ばれてしまった。
 まだ野菜できてないんだけどな。
 なんで呼ばれたんだろう。


「ジュキ?」

「パパ?」


 何故かパパも呼ばれたみたい。
 ありゃ?家族で何か悪いことしたっけ?思い当たる節は無いけどな。
 パパは私の横であぐらをかき、私は正座をする。
 いや、怒られるんだったら、アグラなんてかけないよね。
 怒られる準備として正座をしておこう。


「はは。ジュキ怒らないから正座を崩しなさい」

「ほんと?」

「ああ。」


 私は足を左に崩してから抱え込み体育座りをする。


「すまないね。ジュザーこんなとこまで呼びつけてしまって、狩りの邪魔だったかな」

「最近はほんとに獲物が取れないので大丈夫ですよ。」

「なるほど。して呼び出した理由なのだが、ジュキに今回の野菜を売る際外を見てきてもらおうかと思っている。」

「ジュキにですか?まだ子供ですよ。」

「まだ子供かもしれないけど、野菜の責任者でもある。そとの世界を知ればこの世界で何が必要とされているのか、この子にもわかるじゃないかな?無理にとは言わない。大人の君が決めることだ」


 私は長老の言葉を重く受け止めた。
 野菜の責任者というのはそれもそうだ、野菜を作っているのだから当たり前だ。
 

「はは。ジュキ外に行きたいかい」

「うん。パパ。」

「外は甘い世界じゃないよ。この村みたいに優しい人も少ない。」

「大丈夫!」

「長老ということですので、外の世界に連れて行ってやってください。よろしく頼みます。」


 そう言うとパパは長老の家から出て行った。
 冷たいなぁと思うかもしれないけど、うちは放任主義だ。
 エルフにとって自分の子供がうまく外でやっていけている方が、父親にとっても、母親にとっても誇らしいことなのだ。
 なので、外から嫁を連れてきた息子とかがいると結構お祭り騒ぎする。
 けど、人間のお嫁さんはすぐ死んじゃったりするから、寂しい人生になってしまうのかなと思うが…そうするとまた旅に出て、新しい人間のお嫁さんを連れて帰ってくる。
 ちなみに人間とエルフの子供はエルフだ。
 エルフってモテるのか?


「ジュキ。ジュザーの言っていたことは本当だからね?外の世界は危ない。気をつけるんだよ?」

「ケン甘えは何回か行った時があるからわかるだろうが、絶対に守るんだぞ。」
 
「わかってる」

「ケン。よろしくお願いします。」

「何かくすぐったいな。明後日出発するから、準備しておけよ!」

「うん。」


 このたびは、野菜を売りに行くだけではなくて、もし孤児がいたり、生活に困っている人がいたら村に連れてくる旅でもある。
 エルフの掟で、施せる時には施せというものがある。
 まぁ、得を積んでおけってことかな。
 エルフ寿命がないから、人間を少しの間様子を見てあげることぐらい造作でもない。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...