種子生成で変わる世界

そごね

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乾季のトマト。

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「アジィーヨー。」

「ああ、ケンか、スケルトンかと思ったよ」

「ひどくねぇか?」


 もうそろそろこの辺にも乾季がやってくる。
 空気が乾いて、暑い時期のことを乾季と呼んでいる。
 水分が欲しい時期になるだろう。
 長老の言っていた言葉を思い出した。


「みずみずしくて水分補給になるような野菜がいいなぁ。手ごろに食べれるものがいいな。」


 最初思った野菜はスイカだったが、スイカは切らないといけないし、手頃に食べれるものとはなんだろうかなぁと考えた。
 思い浮かんだのは、トマトとミニトマトだ。
 両手を合わせて目をつむり「種子生成」と言うと手の間に種子が何個かできていることがわかる。
 畑に畝を作り、等感覚でこちらも植えていく、多分だけど、いっぱい作っても、エルフたちは気に入ると思うから3列作ってみた。
 指を組んで目をつむり「祝福」と発すると畑が輝いた。

 
「今回は何を作るんだ?」

「今回も秘密だよ。とびきりおいしいし、ジューシーだから覚悟しといてね」

「楽しみだなぁ」


 次の日畑に行くと、たわわに赤い実が実っていた。
 私は持ってきた水で洗って採れたてを口に入れる。


「げ?!赤いじゃないか。毒なんじゃないのか?辛いんじゃないのか?大丈夫か?生きてるか?」

「美味しい~!暑い時はやっぱこれだよね。かじったところに塩をちょっとかけると超おいしいんだよ。」

「ほ、ほ、本当か?辛くないか?」

「食べてみればわかるのにいいよ。別に食べなくても」

「た!食べるさ、食べるとも。いただくよ」


 彼はもちろん初めて食べるトマトをかじりつくと果汁が飛び散る。
 私の持ってきた塩を奪うように取ってかけると、1個を1分もしないうちに食べて見せた。
 早食いの素質あるんじゃないかな?


「なんじゃこりゃ。うまいね。びっくりだ。早く長老様に見せてあげよう。驚くよ。これ。」

「気に入ってくれて嬉しいよ。見せに行こうか」


 収穫したてのトマトをざるに並べて持っていく。
 面白半分でミニトマトを赤いトマトと黄色いトマトを作ってみた。
 本当は加熱用も作ろうかなと思ったけど、この暑い時期に加熱したトマトは食べたくないかなぁなんて思ってとりあえず後回しにした。


「もうできたのか」

「できたよ。自信作さ!トマトだよ。」

「これはどうやって食べるのだ?」

「これは生のままで食べるんだ。」

「赤いけど食えるのか?」

「おいしいよ。塩をかけて食べたらもっとおいしい」


 長老は1番大きいトマトを奥さんに切ってもらって、断面を少し舐めてからほおばった。
 フォークをカランと落としてはっとしたみたいで今度は塩をかけて食べて見た。
 美味しそうに笑っている。

 長老が認めた野菜は、エルフ達も食べる。
 逆に認められない野菜はエルフたちは食べない。
 まぁ早く言うと、長老は毒見役だよね。

 
「いや今回はほんとにびっくりした。とってもおいしいね。」

「でしょう?自信作だって言ったじゃん。」

「なんか最近砕けてきたな。お前。」

「だめ?」

「構わないよ。それとケン。きちんとジュキのこと守っているんだろうな?」

「大丈夫だ。お父さん」

「父さん?」


 ここで初めて知った。
 ケンは長老の息子だったようだ。
 トマトが美味しいことより衝撃的だよ。


「それならばよかった。ジュキ。今後だが、森の外の村は食料難みたいだ。そこでじゃがいも何かを輸出しようかなと思っている。量産することできるか?」

「できるよ。けど私たちだけじゃ厳しいかも。もう少し大人の手を借りたい。そうすれば二輪車いっぱいのジャガイモが作れると思うよ。」

「じゃがいもは何に入れて運ぶの方がいいと思う?」

「どうだろうね。木箱とかかなぁ?積めるし」

「わかった。木箱も作らせよう。いつぐらいにできる。」

「明日にでもできるけど、全部出しちゃうの?」

「そのつもりだが…?」

「雪が降る時なったときに食べるものがないと困るから、少しとっといたがいいと思う。じゃがいもは保存が効くから、暗い場所に置いておけばしばらく持つんだ。本当は2、3ヶ月熟成させたものを食べるんだけど、普通に食べちゃっているから保存の分も作ったほうがいいと思う。」

「そうかわかった。そこまで考えていてくれるとはジュキはこの村のことを思ってくれているのだな。ケンお前に食料庫の建築を命ずる。」

「わかりました!」


 ということで、のんびり農業はお預けになってしまった。
 明日からちょっと建築とかしないといけないのかもしれないから、ちょっと嫌だ。
 運動嫌い。
 動きたくない。

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