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シェイクスピアが生まれた家の裏手
しおりを挟む私が学校の春休みを利用してイギリスに一人旅にいったときのこと、私はあの有名な悲劇作家、ウィリアム・シェイクスピアの生まれ育った町に行く機会がありました。
学生なのに豪勢なと思われたかたもいるでしょう。ですが残念ながら資金の出所はバイトでコツコツと貯めた少しの貯金と奨学金という名の借金なのです。奨学金を旅行に使うのはどうなのかと思いましたが、毎日の食費に使うことが許されるなら旅行に使うことだって許されるはずです。退屈な授業を受けるよりもよっぽど有意義な勉強であることを私が勝手に認めました。
そんな私の独りよがりな理論武装はさておくとして、イギリスでは私がどうしてもいきたい場所が数ヵ所ありました。そのうちの一つがコッツウォルズというイギリスで一番美しいと評判の村でした。インターネットでこの村の写真を始めて見たときはそのあまりにの美しさにとても心が踊って、イギリスに訪れる予定もないに関わらずわくわくしたのを覚えています。ちなみに、あとで知った話ですが私が当時はまっていたアニメの舞台にもなっていたという驚くべき偶然もありました。
そんなことで、コッツウォルズにだけは絶対に行くぞ勇んでロンドンの地に降り立った私ですが、一人旅だから無計画に旅をしてみようと思っていたために肝心のコッツウォルズへの行き方がわからないことに気がつきました。私のバカと心の中で自分をしかりながらもとりあえずドミトリー(数人が同じ部屋で寝る格安のホテルのこと)へと向かいます。無計画とは言うものの泊まるところが決まっていない恐怖には勝てなかったので宿だけはあらかじめ決めていたのです。
そして、ドミトリーの気のいいが何をいってるか全くわからない受付のお兄さんに拙い英語で話しかけ、チェックインをなんとか終え、ついでにドミトリーのWi-Fiのパスワードを得ることに成功した私は、早速その戦利品を利用してコッツウォルズへの行き方を調べ始めます。
すると、少し残念な事実が判明しました。コッツウォルズは電車も通っておらず、バスもほとんど通っていないため、個人で訪れるにはいささか難しい場所にあるようです。
しかし、そこは名の知れた観光地。個人では難しくとも、他の人と共に行くバスツアーなら簡単に行くことができるようです。
ツアーに申し込みさえすれば無事に行くことができそうなことにホットひと安心しながら申し込むツアーを探し始めます。直前の申し込みだったので、残念ながら日本人ガイドさんのいる日本人向けツアーではなく、通常のイギリス人ガイドさんのツアーにしか申し込むことができませんでしたが、無計画な私が悪いので気にしません。
これで二日後にはコッツウォルズに行けるぞと、うきうきしながら冬の曇り空のロンドンの町へと出掛けたのでした。
そしてロンドンを観光して二日が経ち、待ちに待ったその日がやって来ます。
待ち合わせ場所にいくとそれらしき集団を発見したのでガイドさんらしき装いの人が良さそうな女性に恐る恐る話しかけてみます。
「エクスキューズミー……。」
そのお姉さんが言葉を返してくれますが、日本の高校では英語の成績がそこそこよかった私の耳もイギリス特有の早口英語の前には全く歯が立ちません。nameという唯一聞き取れた単語から、なんとか名前を聞かれていることを理解した私は自分名前を告げ、無事にガイドさんの参加確認を終えます。
そのまましばらく待っているとバスが二台やって来ました。オクスフォードはこっちのバスだよと先程のお姉さんが教えてくれたので、私はお姉さんにお礼をいいながらもそのバスに向かいます。どうやら複数ツアーの参加者が同じ場所に集まっていたようです。
そして今回のバスツアー、悪魔でも私の目的地はコッツウォルズなのですが、コッツウォルズ単体のバスツアーというものはどうやら存在しないようで、他にもオクスフォードとストラトフォードという二ヶ所の有名な観光地を巡ることができるのです。
とはいっても私の乏しい知識では、オクスフォードって英語の辞書の名前できいたことある!、といった程度のものです。ストラトフォードに至っては名前すら始めて耳にしたという具合。
有名な町に行けてラッキーというのが私の持っていた唯一の心の声です。
そんなこんなで私が席に座ってしばらくするとバスは出発します。
バスと言っても十二人ほどしか座れない大きめのジープのような車です。車内を見回して半日ほど共に過ごすであろう人たちを見てみます。私のように一人で参加しているのは五十代ほどの西洋人の方のみで、他の方は皆家族や恋人連れでしたがそんなこと気にしていては一人旅なんてできません。観光地はどこもカップルの巣窟なのです。
私がガイドさんと思っていたお姉さんはどうやらガイドさんでは無かったようでバスには乗り込みませんでした。その代わりといってはなんですが、バスの運転手さんが出発してからずっと喋り続けてロンドンの町について説明しています。もちろん英語なので私にとっては英語リスニングのテストをずっと受けているような少し不思議なものです。ちなみに私がそのなかで唯一完璧に聞き取れた胸をはって言えるのは、『右手の建物はロンドンで一番大きなショッピングモールだよ』という説明でした。しかしその建物は日本ではどこにでもあるショッピングモールのイ○ンと同じか、むしろ小さいぐらいで少し謎の悲しみを覚えてしまいました。
バスが出発して三十分ほど経つと弾丸トークを一方的に繰り広げていた運転手のお兄さんもだんだん静かになっていき、しまいにはしゃべらなくなってしまいました。
窓の外を見るとそれも納得です。車は完全にロンドンの町から離れ周囲には緑の平原と放牧されている羊たちしか見当たりません。
たった三十分足らずで市街地から家一つ見当たらない風景に様変わりするイギリスという国に驚く私を乗せて、バスはさらにロンドンから西の方角へと進みます。
バスが出発してから一時間ほどたった頃、薄汚れたバスの窓から永遠に終わらないイギリスの広大な自然の風景をボーッと眺めていると唐突にバスが止まり、助手席に少し恰幅のいい、鮮やかな青色のビニール生地のジャケットを着たおじさんがバスに乗って来ました。
青いおじさんはバスに乗りこむや否や、マイクを片手に弾丸トークを始めます。
話をよく聞くと、どうやら本当のガイドさんはお姉さんでも運転手さんでもなく、この方のようです。
それにしてもイギリスの方のお話はもしかすると、どの方も弾丸トークなのでしょうか。話すのも歩くのもとてもゆっくりな私がおしゃべりをするお友だちを作るのはとても難しい国かもなのかもしれない……、なんてことを考えながらガイドさんのお話を全力で聞きます。全力でもあまり理解できないのですが、私にとっては全力なのです。
ガイドさんは私の関心の的であるコッツウォルズに関しては、とても美しい場所である、というような簡素な説明を残し、残る二つの地であるストラトフォードとオクスフォードについて長い時間説明してくださいます。
どうやらこのツアーのなかでコッツウォルズはおまけのような立ち位置のようです。道理でツアー申し込み時に見たバスの工程表の中でコッツウォルズでの滞在時間が他の場所に比べ異様に短かった訳だと思い至りましたが、連れていってもらえるなら文句はありません。
さて、私にとって未知といってよかったオクスフォードとストラトフォードの謎のフォード兄弟ですが、ガイドさんのお陰で少しずつ知識が増えていきます。無論私が正しく聞き取れていればという注釈つきですが。
どうやらとても幸運なのことに、この二都市はどちらも私にとってとても興味深い都市であるようです。
オクスフォードにはかの有名な映画ハリーポッターの撮影地がいくつもあるようです。中でも彼らが大食堂として利用した場所は当時のままの状態で残っており、有料ですが見学できるようです。J・K・ローリングさんの大ファンである私は是が非でもそこにいかなくてはと心の中で決心します。
そしてストラトフォードに至ってはなんとあのウィリアム・シェイクスピアが生まれ育った町だとガイドさんはおっしゃるのです。彼のテンペストという作品は私のなかでこれまた大きなウェイトを占める作品です。素晴らしい偶然です。これではまるでこのバスツアーが私のために開かれているように感じてしまいます。
あまり関心がなかった二都市への興味が急激に膨らみ始めます。
そしてガイドさんの話によると最初に訪れるにはそのウィリアム・シェイクスピアゆかりの地であるストラトフォードであるようです。
しかしウィリアム・シェイクスピアといえばあの数々の有名な悲劇を産み出した方です。もしかしたら荒れ果てた大地にポツンとたたずんだ朽ちかけた家のような場所に住んで心がすさんでいたのかもしれません。
なんて幼い頃ゲームで見たラスボスが住む魔王城のような場所を想像しながらガイドさんのお話を聞き流しているうちにその地にバスは到着します。
バスを降りるとそこはあら不思議、あらゆる生き物が生存できなそうな荒れ果てた黒々とした大地……、というわけではもちろんありません。むしろ驚くべきほどきれいな町並みです。広い石畳の道路の両脇にレンガ作りの家や白い壁と黒い木でできた家の骨格のコントラストが印象的なイギリスの古典的な家が並びます。そしてその石畳の上には冬の平日だというのに大勢の様々な顔つきをした観光客が見受けられます。
これがウィリアム・シェイクスピアという作家の力なのかと驚きます。作家の真似事をしている私の力ではありんこ一匹だって呼べる気がしません。さすが遠く離れた日本の地の教科書にだって登場する伝説の作家様です。
そんなふうに心なしか時間がゆっくり流れているように感じる周囲の風景を眺めてあれこれと好き勝手思案しているうちに、同じツアーの人たちが青いジャケットできっちり防寒したガイドさんを先頭に石畳の真ん中をずんずん進んでいくので、あわてて私も後を追いかけます。
ガイドさんはなにか説明しながら道を進んでいますが、集団の最後尾をとぼとぼついていってる私にはその声ははっきりと聞き取れません。なので私は特にその声を気にせずあっちにふらふら、こっちにふらふらと自分勝手なルートでその広い一本道を進みながらパシャパシャと気になったものの写真を撮りつつ彼らを追いかけます。
すると途中、ガイドさんの合図で彼らが立ち止まったので、何事かと私もあわててガイドさんの方に近づきます。
周囲をよく確認すると私たちの目の前には黒いフェンスで囲まれた大きな建物がありました。他の建物に比べるといささかぼろが入ってきているようで綺麗な町並みのなかでは少し浮いているように感じます。
ガイドさんが私たちの様子を確認してどこか誇らしげに話し始めます。
『この家がウィリアム・シェイクスピアが生まれた家です。』
ツアー客で唯一英語が満足にできない私のためか、ゆっくりと話してくれたので私にも理解することができました。弾丸トーク以外もできたんかいっ、っと心のなかでガイドさんに突っ込みをいれながらその大きなボロ家をまじまじと見つめます。
イギリスの昔の建築様式なのか、家の骨格を作る木が表面にむき出しになっていて、隙間を恐らくもとは白かった壁材がおおっている、この国でもよく見るタイプの家です。しかしその壁の色は全体的に茶色みを帯びており、木の色は色素が洗い流されたかのように少し白っぽくなっています。屋根に至ってはところどころ剥がれ落ちています。そんな家の中でも印象的なのはくすんだ白色をした石造りの煙突です。日本人である私にとって煙突は全く馴染みがないものなので、違和感なく屋根から生えているその煙突にビックリです。
なるほどこれがウィリアム・シェイクスピアが生まれた家かと、まじまじとその建物を見つめていた私の隣でガイドさんが驚きの発言をします。
『当時から残っているのはこのへんだけだよ』
家の左側の一部をぐるぐると円を描くように動かす手で指差しながらガイドさんは言います。
どうやら家の大部分はあとから作り直されたようで、当時のまま残っているのはほんの一部なようです。かの悲劇作家が生まれてからもう数百年がたつのでそれも致し方ないでしょう。私が住む地の観光名所である大阪城なんて完全に作り直した紛い物なので、それに比べれば一部だけでも当時のまま残っているのは素晴らしいことのように思えてきます。
ガイドさんが指差した付近をよく見ると確かにそこだけ他に比べよりいっそう茶色みが強いように見えます。残念ながら煙突は反対側の右端にあるので完全に作り直したもののようです。その事を残念に思いつつパシャリとその家を写真に収めます。
そしてその場をあとに移動しかけたガイドさんがまたゆっくりと言葉を放ちます。
『ここは裏手だから、表は反対側だよ』
今まで見せられてたの家の裏側だったの!、と私の心のなかでビックリマークが量産されます。どうやら表側にいくにはお金を払って入場しないとといけないようです。さすが観光地、商売上手だと思いながら続けて別の場所に向かうガイドさんについていきます。
しばらく進むと今度は大きな建物の前で立ち止まります。建物の骨格である黒い木が均等な感覚で並んでいて、壁材の白い色と合わさって白黒のストライプ柄になっている古いアパートのような二階建ての建物の前で立ち止まります。とても横に長く、五十メートル以上はあるように思えます。
『ここはシェイクスピアが勉強した学校だよ』
ガイドさんが説明してくださいました。
なるほど確かにそういわれればこの大きさも納得です。学校ならばある程度の大きさが必要でしょう。ちなみに当時は男女で習うことが違っていてこのストライプ柄の建物は男子学校だったようです。
その後もしばらくガイドさんのほとんど理解不能な弾丸説明トークを聞きつつ建物を眺めます。
しばらくすると説明が終わったのかガイドさんがその学校の隣にたたずむ立派な教会らしき建物に入っていきます。ヨーロッパではあちこちに古い立派な教会があるからか、他のツアー客たちは平然としていますが、私にとっては見るたびに驚きを隠せない種類の建物です。町の真ん中をつき出すように構えるどっしりとした石造りの建物で、壁に張り付いた英数字を使った白い時計が目立ちます。
その教会の中の椅子にガイドさんは慣れた様子で特に誰かへの断りもなく座ります。教会のステンドグラスが綺麗だな、とよそ見をしながら私もガイドさんのあとに続きます。
みんなが座ったのを確認したガイドさんがおもむろに話し始めます。
この教会の説明をするのかと思ったら違いました。これからなんと自由行動なようです。時間はちょうどお昼時。英語が怪しい私が紙に書いてもらって集合時間を再確認したところ、自由行動は一時間しかないようです。ガイドさんは他のツアー客にあっちのお店のご飯が美味しいよ、というようなことをいっていましたが一時間しかないのならば私にとってそれどころではありません。この国の私にとってはいささか値段のわりに残念な味であることが多い料理を食べるよりも、今日しか訪れないこの地をしっかりみて回るほうが遥かに私には重要です。
お昼御飯抜きを決心した私は早速、最初に訪れたシェイクスピアが生まれた家を訪れ、その表側を見るべく入場口らしき場所に向かいます。
チケットの購入場所で提示されたお値段なんと驚きの17ポンド(当時の時価2500円ほど)。予想外に高い値段に驚いてしまった私は思考を停止させて、受付のお姉さんの勧めるまま他のシェイクスピアゆかりの場所にも入場できるらしいオプション豊富な一番高価なチケットと謎のガイドブックを購入して27ポンド(当時の時価4000円強)も払う謎の出費の末、無事にシェイクスピアの生まれた家の表側とその家の内部を見ることができました。
表側には広大な庭が玄関前に広がっていたせいか、裏側よりも遥かにきれいに整えられているように見えました。
ちなみに入場時に求められるまま学生証を提示した私は謎の学生特典として一年間そのシェイクスピアの生まれた家に再入場可能という、どこかの遊園地の年パスのようなものをゲットしました。いったいいつ訪れるんだよ、と心のなかで突っ込みをいれたのは言うまでもありません。
(シェイクスピアが生まれた家の表側の写真)
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