番犬と十七夜

司書Y

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差出人S

最終話 そして、また 4

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 後日談。

 ストーカー男は捕まった。と、言ってもヤクザにではない。警察に。だ。
 市民センター近くの神社の狛犬相手に半裸で腰を振っているのが発見されて、現行犯逮捕。公然わいせつ罪に問われることになったらしい。
 ただ、本人は、その銅像が恋人だと思い込んでいるらしく、精神鑑定に回されるとのことだ。

 と、いうのは、菫が図書館で利用者さんに聞いた噂の又聞きだ。菫が噂好きというわけではないだろうけれど、図書館には女性司書が多いし、利用者のご年配の女性たちも噂は大好きだろう。もちろん、おっさんでも噂好きは多い。図書館の職員としか会話がないようなご高齢の方は、人がいい菫を仕入れた噂を披露する話し相手にしているのだろう。『今週だけで20回くらい同じ話聞かされました』と、菫は苦笑しなからいっていた。初めて聞いた体で驚いている菫の姿が目に浮かぶ。

 ただ、その噂、正直葉は全く興味がない。
 貴志狼や晴興はあの男が葉のことを警察に話すのではないかと、心配していたのだが、何も話してはいないようだ。葉のうちに警察が事情を聞きに来ることもなかったし、あの不届きものが誰かのストーカーをしていたらしいという情報は流れていない。と、いうよりも、話せるはずはないことを、葉は知っていた。

 猫たちはやはりあまりご機嫌が良くなかったらしく、あのストーカー男に憑いていたものは言葉では表せないくらいの辱めを受けた上に、それはそれは恐ろしい目に会わされたらしい。最期どうなったかは不明だ。そのとばっちりでストーカー男は憑かれていた間の記憶を失ってかわりに変な妄想に取りつかれたとか。葉の盗撮写真やら、葉が捨てたゴミを漁ったあれこれやらが多数保管されていたストーカー男の部屋の方も、緑が『お掃除』しておいてくれたそうな。
 とにかく、あのストーカー男は葉に付きまとっていたことは覚えていないだろう。これで一件落着。

 とは、ならないのが、現実というやつだ。
 あの事件の翌朝から、再び始まった封書攻撃はまだ続いている。貴志狼が片付けてくれるようになったから、中身はわからない。一度、なんて書いてあった? と、聞いてみたら、不快そうな顔をしたので、聞くのはやめた。
 数日後、また、常連客が一人減った。ぱたり。と、来なくなったと思ったら、しばらくして、器物損壊罪とかで捕まったと新聞の端に載っていた。
 そして、また。違う封筒が届き始める。

 差出人は……。
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