番犬と十七夜

司書Y

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差出人S

最終話 そして、また 1

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 翌朝。
 遅くまでゴロゴロダラダラいちゃいちゃと貴志狼に甘えていた葉は、10時過ぎた頃、ストーカー男が警察に捕まったことを知らせる晴興の電話で起こされた。朝早くから男の逮捕の情報は入っていたのだが、晴興なりに気を使ってくれたらしい。
 最低限の連絡事項だけで『詳細は追って伝えます』と、葉の声を聞くなり、晴興は通話を終えた。昨夜はもう、本当の本当に『めちゃくちゃセックスした』ので、喉がカッスカスだったから、なんか察してくれたのだと思う。
 もちろん、喉だけではではすまなくて、ただでさえ動きにくい脚は全く動いてはくれない。そこいらじゅうにキスマだの、噛み痕だのが残っていて、ひりひり。と、痛い。けれど、思い出すとにへら。と、顔が緩む。
 いつものもどかしいくらいに優しい貴志狼ももちろん嫌いじゃないけれど、昨夜の貴志狼は控え目に言ってすごくよかった。その上、目覚めてからはずっとそばにいてくれたし、起きてからは不器用ながら朝ご飯を用意してくれたり、いちゃいちゃべたべたとスキンシップをとってくれたりと、至れり尽くせりだった。
 だから、葉は朝からご機嫌だった。

 貴志狼が郵便物を持ってきてくれるまでは。

 朝食用の食パンが焼き上がるまでの間に、貴志狼は玄関のポストから新聞を取ってきてくれた。食卓のテーブルに座っている葉の向かい側に座りながらそれを差し出す。

「ありがと。シロ」

 コーヒーを飲んだくらいでは全く治らないかすかすの声のまま、葉がお礼を言うと、貴志狼の手がくしゃ。と、頭を撫でてくれる。子供を扱うような仕草も、今日は腹が立たない。貴志狼が葉を子ども扱いしているわけじゃないことくらい、昨日のことを思い出せばすぐに分かる。貴志狼はただ、葉に優しくしたいだけだ。特に昨夜は激しかったから、甘やかしたいだけなのだ。
 そんなことを考えていると、トースターががちゃん。と、大きなお音でパンが焼けたことを知らせてきた。

「お前は座ってろ」

 立ち上がろうとする葉を制して、貴志狼が言う。反射で立ち上がろうとしたけれど、まともに歩けないから、葉は素直に貴志狼に従うことにした。
 貴志狼が食パンを取り出している間に、郵便物に目を通す。昨夜はいろいろあって夕方に郵便受けを確認していない。だから、数通の封書が届いていた。

 どこぞの紳士服屋のダイレクトメール。業務用の通販のカタログ。京都のお茶屋からの商品の案内。静岡のお茶屋の営業。実家からの手紙。
 そして、郵便番号や住所。切手と消印のない封書。

「え?」
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