【これはファンタジーで正解ですか?】燈編

司書Y

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告。新入生諸君

後日談 後編 2

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「それ、どういう意味ですか?」

 そして、今回も、雫は口をはさんできたのだった。さっきまでは準備室の机の上に誰かが置き去りにしている『知恵の輪』と格闘していたのに、いつの間にか、準備室の入口に立って腕組みをして丸山を見ている。その虹彩が不思議な形に変化している。
 キン。と、空気が凍り付くような感覚。雫が怒っているのがわかる。
 何も言わずに背を向けてPCを弄っているけれど、宙の背中にも緊張感が漂っていた。

 一触即発。
 そんな言葉が思い浮かぶ。

「意味って……そのままだよ」

 けれど、今度は雫の怒りにも気圧されることなく、あっけらかんと丸山は答えた。二人の殺気を受け流すかのようにひらひら。と、その手を振る。その仕草は余裕すら感じさせた。祖父を知ったからかもしれない。燈は思う。だから、噂は本当で、文句を言われる筋合いはないと思ったのだろうか。

「『お人よしでお節介』。噂のまんまじゃねーか」

 しかし、丸山が言ったのは燈たちが想像していた言葉とは違っていた。

「噂って……それ?」

 雫が驚いたような顔で問い返す。確かに、そんな噂があることを燈も知っていた。困っている人をみると、知り合いであろうとなかろうとついつい放っておけずに手と口を出してしまう。今回の茉優のことも全く同じだった。

 お人よしで、お節介。

 多分、電算部のメンバーなら燈がどんな人物か聞かれたら、必ずそう答えるだろう。だから、もし、丸山が燈を知る人から聞いた話をしているなら、おかしくはない。それは噂というよりも、事実なのだ。

「ほかに何があるんだよ」

 もう一つの噂を全く知らない様子で、丸山が言う。いや、もしかしたら、知ってはいるかもしれない。ただ、燈を見ていれば気付くはずだ。誰の孫かなんて燈には全く関係がないということ。彼はそれを正しく判断できる人物なのかもしれない。そして、それは彼が本当の意味で電算部の部員になるのに相応しい人物だという意味でもあった。

「あーうん。そうですね。噂のまんまだわ」

 くすくす。と、笑いながら、雫は答えた。
 きっと、今、雫の丸山への印象が『きらい』から、『おもしろそうな先輩』に変わった。

「確かに。その上無鉄砲で、無計画。頭いいくせに」

 横から、宙が言葉を挟む。楽しそうな笑顔だ。

「えー。でも。それが燈ちゃんのいいところじゃん」

 雫も楽しそうに答える。
 燈が下された正確な人物像に二人とも納得して、それを喜んでいるのだ。
 ただ一人。燈だけは複雑な表情をしていた。
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