115 / 123
告。新入生諸君
最終話 支配者は嗤う 5
しおりを挟む
「は?」
小華の言葉に燈は耳を疑った。
最初から。
燈を狙っていた。
と、彼女は言ったのだろうか。
つまり、茉優は燈が将来スレイヤー確実な『特戦A組成績上位者』であり、『石田和臣の孫』であることを知っていてそして、弱い新入生を演じて、『お人よし』な燈の同情を誘って、呪いをかけやすくしたということだろうか。しかも、従兄である丸山まで利用して。だ。
すべて計算づくで?
そう思ってから、また、疑問が浮かんだ。
そうだったとしても、どうやって彼女はそのことを知ったのだろう。宙だって、茉優のことを調べていたはずだ。同じ電算部員になるということで、根掘り葉掘りというわけでもないが、宙の情報収集能力は決して低くはない。
「A secret between more than two is no secret.
彼女の戯言をお友達に話したのは失敗だった」
まるで、燈の問いに答えるようだった。とても綺麗な発音で彼女は言う。それは英国のことわざだった。たしか、意味は『二人の秘密は神の秘密。三人の秘密は万人の秘密』だ。
つまり、丸山は茉優からその話を聞きだして、誰かに話した。ということだろう。どんな方法を使ったのかはわからないけれど、小華はそこから茉優の計画を知った。
知った上で、茉優が危険であることを燈には知らせなかった。
「しかも、彼女が使っているのが、『禁呪』指定されている呪いだと知っていたはずだ」
表情の変化で、燈が考えていることなど、小華には手に取るようにわかるのだろう。彼女は、く。と、喉の奥で笑いをかみ殺した。
すべて燈の考えている通りだとしても、危険を知らされなかったことについて、小華を責めるつもりは燈にはなかった。実習のときでも、集団戦時ならともかく、個人戦ではアドバイスを求められない限りは口出しせずに自分で考えて行動させるのは電算部では暗黙の了解だ。
茉優の行動から違和感に気づかなければならなかったのは燈自身だ。
丸山は何も答えない。
答えないのが肯定になっていた。
「彼女。体術はともかく、呪術師としては優秀だ。しかも可愛いときている。従兄妹としては看過できませんね」
この場はもう、すべて彼女の支配下にあった。丸山だけでなく、誰も言葉を挟むことなどできない。
「しかし、部員なら、仕方ない。私は部長だ。守りますが?」
すでに、丸山は応と答えるしかなくなっていた。
露見すれば、処分を受ける可能性もある。『禁呪』の扱いはそれほどに重い。知っていながら放置したのだとしたら、同じ系譜の家系であることも相まって、同罪にとられかねない。
「わかった」
用意された答えをため息と一緒に丸山は吐き出した。
こうなることを予見していたから、小華は機嫌が良かったのだろうか。正攻法ではないけれど、スレイヤー資格を持った希少な呪術師を部員に加えることに彼女は成功したのだ。
小華の言葉に燈は耳を疑った。
最初から。
燈を狙っていた。
と、彼女は言ったのだろうか。
つまり、茉優は燈が将来スレイヤー確実な『特戦A組成績上位者』であり、『石田和臣の孫』であることを知っていてそして、弱い新入生を演じて、『お人よし』な燈の同情を誘って、呪いをかけやすくしたということだろうか。しかも、従兄である丸山まで利用して。だ。
すべて計算づくで?
そう思ってから、また、疑問が浮かんだ。
そうだったとしても、どうやって彼女はそのことを知ったのだろう。宙だって、茉優のことを調べていたはずだ。同じ電算部員になるということで、根掘り葉掘りというわけでもないが、宙の情報収集能力は決して低くはない。
「A secret between more than two is no secret.
彼女の戯言をお友達に話したのは失敗だった」
まるで、燈の問いに答えるようだった。とても綺麗な発音で彼女は言う。それは英国のことわざだった。たしか、意味は『二人の秘密は神の秘密。三人の秘密は万人の秘密』だ。
つまり、丸山は茉優からその話を聞きだして、誰かに話した。ということだろう。どんな方法を使ったのかはわからないけれど、小華はそこから茉優の計画を知った。
知った上で、茉優が危険であることを燈には知らせなかった。
「しかも、彼女が使っているのが、『禁呪』指定されている呪いだと知っていたはずだ」
表情の変化で、燈が考えていることなど、小華には手に取るようにわかるのだろう。彼女は、く。と、喉の奥で笑いをかみ殺した。
すべて燈の考えている通りだとしても、危険を知らされなかったことについて、小華を責めるつもりは燈にはなかった。実習のときでも、集団戦時ならともかく、個人戦ではアドバイスを求められない限りは口出しせずに自分で考えて行動させるのは電算部では暗黙の了解だ。
茉優の行動から違和感に気づかなければならなかったのは燈自身だ。
丸山は何も答えない。
答えないのが肯定になっていた。
「彼女。体術はともかく、呪術師としては優秀だ。しかも可愛いときている。従兄妹としては看過できませんね」
この場はもう、すべて彼女の支配下にあった。丸山だけでなく、誰も言葉を挟むことなどできない。
「しかし、部員なら、仕方ない。私は部長だ。守りますが?」
すでに、丸山は応と答えるしかなくなっていた。
露見すれば、処分を受ける可能性もある。『禁呪』の扱いはそれほどに重い。知っていながら放置したのだとしたら、同じ系譜の家系であることも相まって、同罪にとられかねない。
「わかった」
用意された答えをため息と一緒に丸山は吐き出した。
こうなることを予見していたから、小華は機嫌が良かったのだろうか。正攻法ではないけれど、スレイヤー資格を持った希少な呪術師を部員に加えることに彼女は成功したのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
イケメン幼馴染に執着されるSub
ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの…
支配されたくない 俺がSubなんかじゃない
逃げたい 愛されたくない
こんなの俺じゃない。
(作品名が長いのでイケしゅーって略していただいてOKです。)
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる