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告。新入生諸君

最終話 支配者は嗤う 5

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「は?」

 小華の言葉に燈は耳を疑った。

 最初から。
 燈を狙っていた。

 と、彼女は言ったのだろうか。
 つまり、茉優は燈が将来スレイヤー確実な『特戦A組成績上位者』であり、『石田和臣の孫』であることを知っていてそして、弱い新入生を演じて、『お人よし』な燈の同情を誘って、呪いをかけやすくしたということだろうか。しかも、従兄である丸山まで利用して。だ。

 すべて計算づくで?

 そう思ってから、また、疑問が浮かんだ。
 そうだったとしても、どうやって彼女はそのことを知ったのだろう。宙だって、茉優のことを調べていたはずだ。同じ電算部員になるということで、根掘り葉掘りというわけでもないが、宙の情報収集能力は決して低くはない。

「A secret between more than two is no secret.
 彼女の戯言をお友達に話したのは失敗だった」

 まるで、燈の問いに答えるようだった。とても綺麗な発音で彼女は言う。それは英国のことわざだった。たしか、意味は『二人の秘密は神の秘密。三人の秘密は万人の秘密』だ。
 つまり、丸山は茉優からその話を聞きだして、誰かに話した。ということだろう。どんな方法を使ったのかはわからないけれど、小華はそこから茉優の計画を知った。
 知った上で、茉優が危険であることを燈には知らせなかった。

「しかも、彼女が使っているのが、『禁呪』指定されている呪いだと知っていたはずだ」

 表情の変化で、燈が考えていることなど、小華には手に取るようにわかるのだろう。彼女は、く。と、喉の奥で笑いをかみ殺した。
 すべて燈の考えている通りだとしても、危険を知らされなかったことについて、小華を責めるつもりは燈にはなかった。実習のときでも、集団戦時ならともかく、個人戦ではアドバイスを求められない限りは口出しせずに自分で考えて行動させるのは電算部では暗黙の了解だ。
 茉優の行動から違和感に気づかなければならなかったのは燈自身だ。

 丸山は何も答えない。
 答えないのが肯定になっていた。

「彼女。体術はともかく、呪術師としては優秀だ。しかも可愛いときている。従兄妹としては看過できませんね」

 この場はもう、すべて彼女の支配下にあった。丸山だけでなく、誰も言葉を挟むことなどできない。

「しかし、部員なら、仕方ない。私は部長だ。守りますが?」

 すでに、丸山は応と答えるしかなくなっていた。
 露見すれば、処分を受ける可能性もある。『禁呪』の扱いはそれほどに重い。知っていながら放置したのだとしたら、同じ系譜の家系であることも相まって、同罪にとられかねない。

「わかった」

 用意された答えをため息と一緒に丸山は吐き出した。
 こうなることを予見していたから、小華は機嫌が良かったのだろうか。正攻法ではないけれど、スレイヤー資格を持った希少な呪術師を部員に加えることに彼女は成功したのだ。
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