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告。新入生諸君
最終話 支配者は嗤う 1
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がらり。
と、音をさせて、スライド式のドアが開いた。外でやり取りを聞いていたのではないかと思うほど、絶妙なタイミングだ。
A号電算室の入口を開いて、この場面で入ってくるだろう人物が誰なのか、部員たちは全員わかっているし、みんな、彼女の登場を待っていた。
だから、全員がそちらへ注目した。
「揃っているな」
ドアを開けた人物は、いつも通りの淡々とした表情で一同を見回してから、部屋に入ってくる。それから、すたすた。と、いつもの定位置まで歩いて行った。通り過ぎる間、部員たちがそれぞれにかける挨拶の言葉に、軽く手を上げるだけで、彼女は答える。いつもの風景だ。そして、彼女は、いつもの場所に立つと、ばん。と、机に手をついた。
少し、芝居がかった態度が、彼女らしい。
燈は思う。
この仕草で、行動で、彼女は場の支配権を掴むのだ。
「ようこそ。電算部へ。新入生諸君」
数日前、茉優を連れてきたときには言わなかった一言を部長は言った。珍しいことに、その顔には笑顔が浮かんでいる。
まだ、目標数には足りないが、部員勧誘が上手くいっているのが喜ばしいからなのだろうか。と。考えてから、目標数に達していないなら、怒ってもおかしくない人だったと、燈はひっそり首を横に振った。
それなら、何の笑顔だろう。嫌な予感がする。
「ほとんどのものはもう、自己紹介も終えているな? 私が部長の李小華だ」
もちろん、すでに部員に彼女を知らないものはいない。だから、これはただのパフォーマンスだ。
「諸君らに歩き方を教える者の名前だ。覚えておきたまえ」
お前らは歩き方も知らない赤ん坊だ。と、彼女は言う。昨年。燈たちも似たようなことを言われた。その時は反発もしたけれど、今は分かっている。あの頃の自分たちは本当にただのひよこだった。
彼女が、燈に、雫に、鼎に、宙に。歩き方を教えた。戦場での歩き方を。だ。
おかげで今は、おっかなびっくりのヨチヨチ歩きでも自分の足で立って歩くことができている。
だから、もちろん、誰も彼女の言葉に口を挟まない。
それに、今年の新入生はそんな小華の挑発でも、脅しでも、揺らぐほどやわじゃない。そのことにも、ほかの部員たちは既に理解していた。
彼らの表情でそれを確認して、小華は満足そうに頷く。
と、音をさせて、スライド式のドアが開いた。外でやり取りを聞いていたのではないかと思うほど、絶妙なタイミングだ。
A号電算室の入口を開いて、この場面で入ってくるだろう人物が誰なのか、部員たちは全員わかっているし、みんな、彼女の登場を待っていた。
だから、全員がそちらへ注目した。
「揃っているな」
ドアを開けた人物は、いつも通りの淡々とした表情で一同を見回してから、部屋に入ってくる。それから、すたすた。と、いつもの定位置まで歩いて行った。通り過ぎる間、部員たちがそれぞれにかける挨拶の言葉に、軽く手を上げるだけで、彼女は答える。いつもの風景だ。そして、彼女は、いつもの場所に立つと、ばん。と、机に手をついた。
少し、芝居がかった態度が、彼女らしい。
燈は思う。
この仕草で、行動で、彼女は場の支配権を掴むのだ。
「ようこそ。電算部へ。新入生諸君」
数日前、茉優を連れてきたときには言わなかった一言を部長は言った。珍しいことに、その顔には笑顔が浮かんでいる。
まだ、目標数には足りないが、部員勧誘が上手くいっているのが喜ばしいからなのだろうか。と。考えてから、目標数に達していないなら、怒ってもおかしくない人だったと、燈はひっそり首を横に振った。
それなら、何の笑顔だろう。嫌な予感がする。
「ほとんどのものはもう、自己紹介も終えているな? 私が部長の李小華だ」
もちろん、すでに部員に彼女を知らないものはいない。だから、これはただのパフォーマンスだ。
「諸君らに歩き方を教える者の名前だ。覚えておきたまえ」
お前らは歩き方も知らない赤ん坊だ。と、彼女は言う。昨年。燈たちも似たようなことを言われた。その時は反発もしたけれど、今は分かっている。あの頃の自分たちは本当にただのひよこだった。
彼女が、燈に、雫に、鼎に、宙に。歩き方を教えた。戦場での歩き方を。だ。
おかげで今は、おっかなびっくりのヨチヨチ歩きでも自分の足で立って歩くことができている。
だから、もちろん、誰も彼女の言葉に口を挟まない。
それに、今年の新入生はそんな小華の挑発でも、脅しでも、揺らぐほどやわじゃない。そのことにも、ほかの部員たちは既に理解していた。
彼らの表情でそれを確認して、小華は満足そうに頷く。
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