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告。新入生諸君
17 傀儡 1
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太陽が残す光はもう、全く見えなくなってしまっていた。暗い路地を暗い街灯が照らしている。
いくら細い路地とはいえ、住宅街だ。いつもなら、こんな時間に人が全く通らないことなどない。けれど、今は見える範囲に人の姿はない。
「……お前、誰だよ」
静まり返った路地に、聞こえてきた声はひどく不鮮明だった。丸山の声のようだけれど、泥水のように不純物が多くて、よく聞き取れない。
「ナんで。そのひトと、一緒に……いル?」
抑揚がおかしい。時折、甲高い金切声のようなものが混じっている。
その音を聞いていると、背筋が寒くなった。金縛りにあったように身体が動かない。魂に鎖をかけて縛られたようで、指先が冷たくなる。
「石ダあ……かり。おれ……ノ茉優……ニ。手を……だすナ」
心の表面を冷たく、硬く、ざらついたものが撫でる。撫でられた場所から黒い何かが心を犯していくようだった。
「俺は。手、だしてなんていない!!」
ひどく悍ましいその感触を振り払うように、燈は叫んだ。ぎゅ。と、自分を抱く紅二の腕を握り締める。
「彼女のことなんて、なんとも思ってない。俺は……っ」
見上げると、紅二の赤い瞳がじっと燈を見ていた。驚いたような表情だ。
「……俺は……」
紅二は本当に気付いていないのだろうか。
全部見透かしてしまいそうな赤い瞳。その瞳で燈の心の中だって、本当は全部見えているんじゃないのか。
けれど、いや、だからこそ。か。自分の気持ちは自分の言葉で伝えないといけないと、燈は思う。思うから、口を開いた。
「あーちゃ……」
「ヤめろ。やめロ。ヤメロ。や…やめろ。やめろ。やめ……ロロロロロロロロロロロロ」
燈の言葉を遮るように、また、甲高い音が響く。否。これは丸山本人の声ではない。たくさんのノイズを含んで、声は変容していく。
キイン。と、耳鳴りがした。
何か重いものが圧し掛かってくるような感覚。重くて、重くて、燈は俯いた。
頭が痛い。
息ができない。
視界に、思考に靄がかかったようで、何も考えられなくなってくる。
「あーちゃん。大丈夫。俺の声。聞いて?」
耳に心地よい紅二の声がする。頬を包むように両手が添えられて、顔を上げられる。
紅二の目が、赤く光を燈す。その視線に圧し掛かっていいたものが少し軽くなった気がした。
「大丈夫。ちゃんと、息して。ん。上手」
言われるままに深呼吸を繰り返すと、頭の痛みが引いてくる。呼吸が楽になった。
「教えて?」
いくら細い路地とはいえ、住宅街だ。いつもなら、こんな時間に人が全く通らないことなどない。けれど、今は見える範囲に人の姿はない。
「……お前、誰だよ」
静まり返った路地に、聞こえてきた声はひどく不鮮明だった。丸山の声のようだけれど、泥水のように不純物が多くて、よく聞き取れない。
「ナんで。そのひトと、一緒に……いル?」
抑揚がおかしい。時折、甲高い金切声のようなものが混じっている。
その音を聞いていると、背筋が寒くなった。金縛りにあったように身体が動かない。魂に鎖をかけて縛られたようで、指先が冷たくなる。
「石ダあ……かり。おれ……ノ茉優……ニ。手を……だすナ」
心の表面を冷たく、硬く、ざらついたものが撫でる。撫でられた場所から黒い何かが心を犯していくようだった。
「俺は。手、だしてなんていない!!」
ひどく悍ましいその感触を振り払うように、燈は叫んだ。ぎゅ。と、自分を抱く紅二の腕を握り締める。
「彼女のことなんて、なんとも思ってない。俺は……っ」
見上げると、紅二の赤い瞳がじっと燈を見ていた。驚いたような表情だ。
「……俺は……」
紅二は本当に気付いていないのだろうか。
全部見透かしてしまいそうな赤い瞳。その瞳で燈の心の中だって、本当は全部見えているんじゃないのか。
けれど、いや、だからこそ。か。自分の気持ちは自分の言葉で伝えないといけないと、燈は思う。思うから、口を開いた。
「あーちゃ……」
「ヤめろ。やめロ。ヤメロ。や…やめろ。やめろ。やめ……ロロロロロロロロロロロロ」
燈の言葉を遮るように、また、甲高い音が響く。否。これは丸山本人の声ではない。たくさんのノイズを含んで、声は変容していく。
キイン。と、耳鳴りがした。
何か重いものが圧し掛かってくるような感覚。重くて、重くて、燈は俯いた。
頭が痛い。
息ができない。
視界に、思考に靄がかかったようで、何も考えられなくなってくる。
「あーちゃん。大丈夫。俺の声。聞いて?」
耳に心地よい紅二の声がする。頬を包むように両手が添えられて、顔を上げられる。
紅二の目が、赤く光を燈す。その視線に圧し掛かっていいたものが少し軽くなった気がした。
「大丈夫。ちゃんと、息して。ん。上手」
言われるままに深呼吸を繰り返すと、頭の痛みが引いてくる。呼吸が楽になった。
「教えて?」
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