71 / 123
告。新入生諸君
13 Excellent 3
しおりを挟む
「その人は、俺の監督官。先生だ」
頭を振って燈は一歩前に出た。
気付いてみれば、何故今まで茉優が本当はか弱いだけではないのではないかと考えが及ばなかったのかと、不思議に思う。まるで、思考に靄がかかっていたようだ。
「失礼なことしないで」
茉優とDDの間に立って、燈は言った。
「燈さん」
「『先輩』だって、言ったろ?」
そう言って、焦って取り繕おうとする茉優の手を燈は振り払った。
「守れないなら、電算部には要らない。それから、連絡事項以外のLINEやめてくれ。守ってやるとは言ったけど、彼氏ごっこはしない。あくまで契約として。だ。それが嫌なら、担任に相談して」
彼女の目を見て、燈はきっぱり。と、言い切った。
あんなに悩んでいたのが嘘のようにすらすらと言葉が出てきた。と、言うよりもなぜ今まで言えなかったのか不思議だ。何故なのか彼女の好意を拒否するのが悪いことのような気がしていた。
まだ、ひよっこ中のひよっことはいえ、これからスレイヤーを目指すなら、依頼者を気遣うのは当然でも、いちいち好意に答える必要がないことくらいは当然だ。
「……そんな。なんで……?」
燈の言葉に、茉優は、ぼそり。と、呟く。
「Excellent」
ぱん。ぱん。と、拍手をしながら、DDが言った。
「正解だ。燈。さすが俺の生徒。優秀だな」
そう言って、また、燈の頭を撫でる。まるで小学生でも扱うようだが、いつものことなので燈はされるがままになっていた。
「さて。shorty。これから燈の授業なんだ。ご退席願えるかな?」
また、恭しくお辞儀をして、DDは茉優を見た。勝ち誇ったような笑顔は、わざとだろうか。おそらく、わざとだろう。
「……っ」
き。と、きつい表情で茉優はDDを睨みつけた。いつもの、愛らしい彼女はどこにもいない。
それから、口を開きかけて、はっとする。DDが明らかにそれとわかるほどの殺気を込めた顔で彼女を見ていたからだ。それに気づいて、彼女は口を噤んだ。それから、憤怒と表現していいような顔になる。
「……こばや……」
しかし、燈が口を開くと、また、はっとしたような表情になって、燈を見た。そして、ぎこちなく笑う。
「……燈さ……せんぱい……」
ゆらり。と、その手がいつものように燈の制服の袖を掴もうと伸ばされる。
思わず、燈はその手を避けた。酷く、忌まわしいもののように感じたからだ。
「……あの。きょう……は部活。おやすみします」
燈の反応に肩を落とした後、取り繕うようにそう言って、彼女は部屋を出ていった。
頭を振って燈は一歩前に出た。
気付いてみれば、何故今まで茉優が本当はか弱いだけではないのではないかと考えが及ばなかったのかと、不思議に思う。まるで、思考に靄がかかっていたようだ。
「失礼なことしないで」
茉優とDDの間に立って、燈は言った。
「燈さん」
「『先輩』だって、言ったろ?」
そう言って、焦って取り繕おうとする茉優の手を燈は振り払った。
「守れないなら、電算部には要らない。それから、連絡事項以外のLINEやめてくれ。守ってやるとは言ったけど、彼氏ごっこはしない。あくまで契約として。だ。それが嫌なら、担任に相談して」
彼女の目を見て、燈はきっぱり。と、言い切った。
あんなに悩んでいたのが嘘のようにすらすらと言葉が出てきた。と、言うよりもなぜ今まで言えなかったのか不思議だ。何故なのか彼女の好意を拒否するのが悪いことのような気がしていた。
まだ、ひよっこ中のひよっことはいえ、これからスレイヤーを目指すなら、依頼者を気遣うのは当然でも、いちいち好意に答える必要がないことくらいは当然だ。
「……そんな。なんで……?」
燈の言葉に、茉優は、ぼそり。と、呟く。
「Excellent」
ぱん。ぱん。と、拍手をしながら、DDが言った。
「正解だ。燈。さすが俺の生徒。優秀だな」
そう言って、また、燈の頭を撫でる。まるで小学生でも扱うようだが、いつものことなので燈はされるがままになっていた。
「さて。shorty。これから燈の授業なんだ。ご退席願えるかな?」
また、恭しくお辞儀をして、DDは茉優を見た。勝ち誇ったような笑顔は、わざとだろうか。おそらく、わざとだろう。
「……っ」
き。と、きつい表情で茉優はDDを睨みつけた。いつもの、愛らしい彼女はどこにもいない。
それから、口を開きかけて、はっとする。DDが明らかにそれとわかるほどの殺気を込めた顔で彼女を見ていたからだ。それに気づいて、彼女は口を噤んだ。それから、憤怒と表現していいような顔になる。
「……こばや……」
しかし、燈が口を開くと、また、はっとしたような表情になって、燈を見た。そして、ぎこちなく笑う。
「……燈さ……せんぱい……」
ゆらり。と、その手がいつものように燈の制服の袖を掴もうと伸ばされる。
思わず、燈はその手を避けた。酷く、忌まわしいもののように感じたからだ。
「……あの。きょう……は部活。おやすみします」
燈の反応に肩を落とした後、取り繕うようにそう言って、彼女は部屋を出ていった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)

ソング・バッファー・オンライン〜新人アイドルの日常〜
古森きり
BL
東雲学院芸能科に入学したミュージカル俳優志望の音無淳は、憧れの人がいた。
かつて東雲学院芸能科、星光騎士団第一騎士団というアイドルグループにいた神野栄治。
その人のようになりたいと高校も同じ場所を選び、今度歌の練習のために『ソング・バッファー・オンライン』を始めることにした。
ただし、どうせなら可愛い女の子のアバターがいいよね! と――。
BLoveさんに先行書き溜め。
なろう、アルファポリス、カクヨムにも掲載。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる