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告。新入生諸君
1 石田燈 4
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23号棟。A号電算室。
ふと、見上げた引き戸の上のプレートに書かれた文字。
そこは、燈たちにとっては城、いや、本拠地だった。
国立女神川学園高校。特殊戦闘学部専用の特別教室で、女神川学園電算部の活動場所。電算部は部室棟には部室を持っておらず、電算準備室を部室として使っている。
もちろん。電算部は本編の主人公『石田燈』が所属している部活だ。
「ちーす」
「お疲れちゃんでっす」
定番の挨拶をして、燈と雫はそこへ躊躇いなく入っていく。
中にはすでに2人の人物がいつもの定位置に座っていた。
教室内には電算室である以上当たり前のことであるのだが、すべての椅子の前にパソコンが置かれている。その数はおよそ30台。特殊戦闘学部には25人を超えるクラスはないから、妥当な数だ。
電算室は電算教室。電算準備室。電算処理室。電算実習室の4つの教室で構成されて、燈が入ったのは電算教室。パソコンを使った授業を行う部屋。長さ5メートルほどの長机が向かい合わせに置かれた島が二つあり、その両側に椅子が5脚ずつ置かれ、各椅子の前にデスクトップパソコンが置かれている。
パソコンは2年に一度入れ替えが行われて、常に最新のハイスペック機種が用意されていた。スレイヤー育成は国の重要政策だから当たり前だが、かなりの好待遇と言える。
「お疲れ」
入り口から見て奥。窓に近い島の教卓に向かって一番後ろ。少しだけスペースが空いて、パソコンが置かれていない席に座った人物が片手を挙げる。そして、その手を下ろしがてら、大きなパステルオレンジのセル眼鏡をくい。と、持ち上げて位置を直した。
「宙。早いじゃん」
林家宙(はやしやそら)。女神川学園特戦2年魔道B組。小柄で、くりくりのオレンジ色のくせっ毛に猫のような金色の瞳。制服のジャケットの下にはいつもフードのついたパーカーを着ている。燈と同学年の2年生で、魔道科に在籍している彼はいつもの人懐っこい笑顔を浮かべて定位置に座っていた。
「うん。今日、これ。試したいと思って」
先述した通り、電算室にはハイスペックのパソコンが複数存在する。けれど、彼の前には愛用のノートパソコンが開かれていた。
「あ。例のヤツ?」
そのパソコンを覗き込む。
と、言っても暗い画面に文字だけが羅列しているそれがどんな意味を持っているのか、燈には分からない。
「うん。後で試運転付き合って。雫も」
もちろん。普通のプログラム言語だったとしても、燈には何が書かれているのか分からないだろうけれど、画面に浮かぶ文字が魔法を使用する際にのみ使われる魔道文字だから、完全に理解不能だ。そもそも、魔道文字は代表的なものだけでも50以上が存在し、そのそれぞれが全く異なる体系を築いているから、その文字が何という名前かすら分からない。
魔道文字は本人との相性が全てで、宙にとってはそれがもっとも相性のいい文字だという。だから、彼は日本語・英語対応の電算室のパソコンではなく、自作のノートを愛用していた。
その文字との相性が悪い燈にはそれがなにを意味しているかはわからないけれど、宙がずっとかかりきりになっているそのプログラムがどんなもので、それが誰のために作られたものかも知っていた。
「承知」
に。と、笑って敬礼を返す雫も、魔道言語の成績は悪くてもその意味を知っている。
ふと、見上げた引き戸の上のプレートに書かれた文字。
そこは、燈たちにとっては城、いや、本拠地だった。
国立女神川学園高校。特殊戦闘学部専用の特別教室で、女神川学園電算部の活動場所。電算部は部室棟には部室を持っておらず、電算準備室を部室として使っている。
もちろん。電算部は本編の主人公『石田燈』が所属している部活だ。
「ちーす」
「お疲れちゃんでっす」
定番の挨拶をして、燈と雫はそこへ躊躇いなく入っていく。
中にはすでに2人の人物がいつもの定位置に座っていた。
教室内には電算室である以上当たり前のことであるのだが、すべての椅子の前にパソコンが置かれている。その数はおよそ30台。特殊戦闘学部には25人を超えるクラスはないから、妥当な数だ。
電算室は電算教室。電算準備室。電算処理室。電算実習室の4つの教室で構成されて、燈が入ったのは電算教室。パソコンを使った授業を行う部屋。長さ5メートルほどの長机が向かい合わせに置かれた島が二つあり、その両側に椅子が5脚ずつ置かれ、各椅子の前にデスクトップパソコンが置かれている。
パソコンは2年に一度入れ替えが行われて、常に最新のハイスペック機種が用意されていた。スレイヤー育成は国の重要政策だから当たり前だが、かなりの好待遇と言える。
「お疲れ」
入り口から見て奥。窓に近い島の教卓に向かって一番後ろ。少しだけスペースが空いて、パソコンが置かれていない席に座った人物が片手を挙げる。そして、その手を下ろしがてら、大きなパステルオレンジのセル眼鏡をくい。と、持ち上げて位置を直した。
「宙。早いじゃん」
林家宙(はやしやそら)。女神川学園特戦2年魔道B組。小柄で、くりくりのオレンジ色のくせっ毛に猫のような金色の瞳。制服のジャケットの下にはいつもフードのついたパーカーを着ている。燈と同学年の2年生で、魔道科に在籍している彼はいつもの人懐っこい笑顔を浮かべて定位置に座っていた。
「うん。今日、これ。試したいと思って」
先述した通り、電算室にはハイスペックのパソコンが複数存在する。けれど、彼の前には愛用のノートパソコンが開かれていた。
「あ。例のヤツ?」
そのパソコンを覗き込む。
と、言っても暗い画面に文字だけが羅列しているそれがどんな意味を持っているのか、燈には分からない。
「うん。後で試運転付き合って。雫も」
もちろん。普通のプログラム言語だったとしても、燈には何が書かれているのか分からないだろうけれど、画面に浮かぶ文字が魔法を使用する際にのみ使われる魔道文字だから、完全に理解不能だ。そもそも、魔道文字は代表的なものだけでも50以上が存在し、そのそれぞれが全く異なる体系を築いているから、その文字が何という名前かすら分からない。
魔道文字は本人との相性が全てで、宙にとってはそれがもっとも相性のいい文字だという。だから、彼は日本語・英語対応の電算室のパソコンではなく、自作のノートを愛用していた。
その文字との相性が悪い燈にはそれがなにを意味しているかはわからないけれど、宙がずっとかかりきりになっているそのプログラムがどんなもので、それが誰のために作られたものかも知っていた。
「承知」
に。と、笑って敬礼を返す雫も、魔道言語の成績は悪くてもその意味を知っている。
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