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水瀬緑風堂魔符魔道薬店
水瀬緑風堂魔符魔道薬店 1
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からん。
と、小気味いい音をさせて扉が開いた。店内に入ってきた人物は一度、店全体を見渡してから、カウンターの隅の空席に目を止める。
金曜日の午後4時。この時間だと空席があることの方が少ない。人気店だから。というよりも、元々席が少ないからだ。
二人掛けのテーブル席が二つ。四人掛けのテーブル席が一つ。カウンター席が四つ。これが、この店の全ての座席だ。今は、テーブル席は満席。カウンター席も二つしか空いていない。
入ってきたのは、少しくすんだウグイス色のブレザーに赤いリボン。グレーのタータンチェックのスカートをはいた女の子だ。
近所にある高校の制服。いわゆる女子高生。制服には気崩れた感じがない。少しだけスカートが短めだけれど、まあ、ファッションの範疇だろう。
髪の毛は肩より少し長いくらいで、明るい色合い。化粧はほとんどしていない。ただ、視線を彷徨わせたとき、僅かに瞳の色が赤く見えた。それ以外は、全体的に目立つところもない、けれど、マイナスポイントもないごく普通の女の子だ。
この店に女子高生が来ることは珍しくない。むしろ、客の殆どは近所にある女神川学園高校の生徒、もしくは卒業生だ。
と、いうのもテーブルや座席はあるけれど、この店は飲食店ではない。
ぱっと見、カフェのようだがそこは本来魔法での戦闘や回復を補助する魔符や魔法薬を扱う店だ。実際、なんとなくお洒落っぽくレイアウトはされているけれど、怪しげな薬瓶やら、なんか出てくるものを封じ込めるのに使いそうなお札やらが壁面の大部分を占拠している。しかも、この店は半人前の魔符師やら、まだランクの低い魔法薬剤師の拙い作品?を預かって販売しているから、置いてあるものの怪しさは言葉では言い表しがたかった。
けれど、安価な魔法薬や魔符が手に入る故にこの店は半人前の高校生スレイヤーたちに人気がある。
その上、店主の趣味で始めた魔道ハーブティーと、これまた店主の趣味の手作りスイーツのセットが話題になって、殆ど店主の気まぐれでしか営業しないにも関わらず、空席があることが稀だった。
しかし。だ。
普段、店を埋める客のタイの色は殆どが黒だった。
高校生の制服のネクタイやリボンの色には普通は見られない色から”死神”とか揶揄されているその色は女神川学園高校、特殊戦闘科所属を表している。
店に入ってきたのは赤いリボン。普通科の生徒だ。いくら見た目綺麗めにしていても、普通の女子高生が来るにしてはこの店は少々怪しすぎる。他の客は気にしていないけれど、カウンターの端から二番目のいつもの席に座った燈(あかり)には、彼女はとても異質な存在に見えた。
と、小気味いい音をさせて扉が開いた。店内に入ってきた人物は一度、店全体を見渡してから、カウンターの隅の空席に目を止める。
金曜日の午後4時。この時間だと空席があることの方が少ない。人気店だから。というよりも、元々席が少ないからだ。
二人掛けのテーブル席が二つ。四人掛けのテーブル席が一つ。カウンター席が四つ。これが、この店の全ての座席だ。今は、テーブル席は満席。カウンター席も二つしか空いていない。
入ってきたのは、少しくすんだウグイス色のブレザーに赤いリボン。グレーのタータンチェックのスカートをはいた女の子だ。
近所にある高校の制服。いわゆる女子高生。制服には気崩れた感じがない。少しだけスカートが短めだけれど、まあ、ファッションの範疇だろう。
髪の毛は肩より少し長いくらいで、明るい色合い。化粧はほとんどしていない。ただ、視線を彷徨わせたとき、僅かに瞳の色が赤く見えた。それ以外は、全体的に目立つところもない、けれど、マイナスポイントもないごく普通の女の子だ。
この店に女子高生が来ることは珍しくない。むしろ、客の殆どは近所にある女神川学園高校の生徒、もしくは卒業生だ。
と、いうのもテーブルや座席はあるけれど、この店は飲食店ではない。
ぱっと見、カフェのようだがそこは本来魔法での戦闘や回復を補助する魔符や魔法薬を扱う店だ。実際、なんとなくお洒落っぽくレイアウトはされているけれど、怪しげな薬瓶やら、なんか出てくるものを封じ込めるのに使いそうなお札やらが壁面の大部分を占拠している。しかも、この店は半人前の魔符師やら、まだランクの低い魔法薬剤師の拙い作品?を預かって販売しているから、置いてあるものの怪しさは言葉では言い表しがたかった。
けれど、安価な魔法薬や魔符が手に入る故にこの店は半人前の高校生スレイヤーたちに人気がある。
その上、店主の趣味で始めた魔道ハーブティーと、これまた店主の趣味の手作りスイーツのセットが話題になって、殆ど店主の気まぐれでしか営業しないにも関わらず、空席があることが稀だった。
しかし。だ。
普段、店を埋める客のタイの色は殆どが黒だった。
高校生の制服のネクタイやリボンの色には普通は見られない色から”死神”とか揶揄されているその色は女神川学園高校、特殊戦闘科所属を表している。
店に入ってきたのは赤いリボン。普通科の生徒だ。いくら見た目綺麗めにしていても、普通の女子高生が来るにしてはこの店は少々怪しすぎる。他の客は気にしていないけれど、カウンターの端から二番目のいつもの席に座った燈(あかり)には、彼女はとても異質な存在に見えた。
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