遠くて近い世界で

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2 見せつけられるだけの簡単なお仕事 1

　彼らが住む国には、対価次第でどんな仕事でも請け負う所謂『ハウンド』と呼ばれる職業がある。それは、『猟犬』という名前が表すように、元々は反社会組織内で何かしら問題を起こし逃亡を図ったものを捕まえたり、その始末を専門に請け負う者たちを揶揄する言葉だった。
　そのうち、彼らは警察や企業の人探しをも請け負うようになり、人探しや始末だけでなく、荒事全般を代行するようになり、その言葉の意味もそれに合わせて変わっていった。現在では、荒事以外も含め、クライアントの希望する特殊な業務を代行する者たちのすべてが『ハウンド』と呼ばれるようになっている。

　ほとんどの一般人は普通に生活していたらハウンドのお世話になることはない。ハウンドが代行するのはあくまで『特殊』な業務だからだ。と、言いたいところではあるのだが、近年では、猫の子探しやハチの巣駆除を請け負う『ハウンド』も存在していた。『特殊』と言えなくはないけれど、それならば『万事屋』とでもつければいいのに。というのは、スイの弁だ。『そのうち、近所のスーパーへの買い出しや犬の散歩の依頼が来るんじゃない？』と、苦笑してから、少し思案気な顔をして、さらにくすり。と、笑って『それもいいか』と、彼は笑った。その笑顔があまりに可愛かったから、ユキも『それもいいか』と思ったのは内緒だ。

　それはさておき、どんな案件であったとしても、暴力による解決は特殊であることは間違いない。護衛や警備、いわゆる用心棒のような自衛。諍いごとの仲裁。奪還などの消極的な暴力から、反社会組織のカチコミやら、警察の強制捜査のような所謂抗争のようなもの。さらには暗殺やテロなど一方的なものまで。依頼は多岐にわたる。そして、依頼には合法・非合法が当たり前のように混在していた。

　三人が看板を掲げる『BBB』と呼ばれるハウンドの事務所では合法・非合法双方の依頼を受け付けている。
　もちろん、犬の散歩は業務に入らない。あくまで、『特殊』な技術を用いた業務のみを請け負っているのだ。そして、直近1年ほどの実績から、彼らの名前は業界内ではかなり有名になりつつある。ちなみに、それ以前に何故名が売れていなかったか。と、問われれば答えは単純で、裏の仕事しか受けてはいなかったから。だ。