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DoRow
後編 4
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「あ。でも、一人しかいないし、他のヤツは諦めたかな?」
にっこり。と、スイが微笑む。
「は? それ、どーゆー意味?」
聞き捨てならない言葉に、アキは反応した。
「前の家の時は3人いたよ。七三分けの人は一番古くからいる人。あと……太った黄色っぽい髪のおっさんと、ニキビ面のロン毛。いつも、チェックのシャツをインしてた」
指を折って数えながらスイが言う。平然と不穏当なことを言ってくれる。
「スイさん……それ、ヤバいよな? わかってる?」
まるで、小さな子を諭すようにアキが言うと、スイは少し困った顔になった。
「わかってる……けど、俺がなんかすると、余計に喜ばせるだけだから。
罵倒したり、蔑まれるのがいいみたいで……一度、黄色い人ナイフの的代わりにしたら、七三の人が羨ましがって、『俺にもしてください』って言われて、マジでぞっとした」
大前提として、スイは綺麗で可愛い。完全にストレートだった自分が、アキが完全にやられてしまうくらいには魅力的だ。スイ自身は認めたがらないのだが、その魅力は主に女性向けではなく、男性向けだ。
かといって、スイが女みたいだというわけではない。華奢だが身長も決して低いわけではないし、女性のように丸みのある体形でもない。仕草も言葉遣いも、がさつだったり、乱暴ということはないけれど、丁寧というだけで、女性的ではない。
けれど、おそらく男性から見て、とても魅力的な人なのだ。
さらに言うと、そのどこか高潔な雰囲気を持ったスイの魅力に敏感に反応するのは、それを『踏みにじりたい』とか、『踏みにじってほしい』とかいう、両極端に分かれるが、どちらに寄ったとしても歪んだ方面の人種が多い。
「だから……さ。も、相手にしないのが一番だと思うんだよな」
そう言って、苦笑するスイ。ユキはなんだか、そんなスイが可哀そうになってきた。別に、スイは好き好んで変態を引き付けているわけではないし、周りでそんなのがうろうろしている日常を良しとしているわけでもない。
ただ、スイ自身ではそれをどうすることもできないし、シゲさん以外にそれを相談できる相手もいなかったのだろう。
「スイさん…」
だから、ユキは座っているスイをぎゅっと抱きしめた。
「ユキ君?」
されるがままにユキの腕の中に納まって、少し苦し気にスイは名前を呼んでくれた。
「大丈夫だから。俺と兄貴で絶対にスイさんを守るからね」
耳元で優しく囁くと、少しくすぐったそうに身を竦めてから、スイがユキの背中に手を回して抱きついてきた。
今まではスイが頼りにできる人はいなかったのかもしれない。けれど、今はアキとユキがいる。スイが我慢する必要なんてない。スイの心を少しでも苛むものがあるなら、全部自分の手で取り除いてあげたいと思うユキだった。
「……ありがと」
そんな、ユキの気持ちが伝わったかのように、すごく可愛い声で、スイは言う。
その声を聞くだけで、『ああ。この人のためなら何でもできる』と、思えた。
にっこり。と、スイが微笑む。
「は? それ、どーゆー意味?」
聞き捨てならない言葉に、アキは反応した。
「前の家の時は3人いたよ。七三分けの人は一番古くからいる人。あと……太った黄色っぽい髪のおっさんと、ニキビ面のロン毛。いつも、チェックのシャツをインしてた」
指を折って数えながらスイが言う。平然と不穏当なことを言ってくれる。
「スイさん……それ、ヤバいよな? わかってる?」
まるで、小さな子を諭すようにアキが言うと、スイは少し困った顔になった。
「わかってる……けど、俺がなんかすると、余計に喜ばせるだけだから。
罵倒したり、蔑まれるのがいいみたいで……一度、黄色い人ナイフの的代わりにしたら、七三の人が羨ましがって、『俺にもしてください』って言われて、マジでぞっとした」
大前提として、スイは綺麗で可愛い。完全にストレートだった自分が、アキが完全にやられてしまうくらいには魅力的だ。スイ自身は認めたがらないのだが、その魅力は主に女性向けではなく、男性向けだ。
かといって、スイが女みたいだというわけではない。華奢だが身長も決して低いわけではないし、女性のように丸みのある体形でもない。仕草も言葉遣いも、がさつだったり、乱暴ということはないけれど、丁寧というだけで、女性的ではない。
けれど、おそらく男性から見て、とても魅力的な人なのだ。
さらに言うと、そのどこか高潔な雰囲気を持ったスイの魅力に敏感に反応するのは、それを『踏みにじりたい』とか、『踏みにじってほしい』とかいう、両極端に分かれるが、どちらに寄ったとしても歪んだ方面の人種が多い。
「だから……さ。も、相手にしないのが一番だと思うんだよな」
そう言って、苦笑するスイ。ユキはなんだか、そんなスイが可哀そうになってきた。別に、スイは好き好んで変態を引き付けているわけではないし、周りでそんなのがうろうろしている日常を良しとしているわけでもない。
ただ、スイ自身ではそれをどうすることもできないし、シゲさん以外にそれを相談できる相手もいなかったのだろう。
「スイさん…」
だから、ユキは座っているスイをぎゅっと抱きしめた。
「ユキ君?」
されるがままにユキの腕の中に納まって、少し苦し気にスイは名前を呼んでくれた。
「大丈夫だから。俺と兄貴で絶対にスイさんを守るからね」
耳元で優しく囁くと、少しくすぐったそうに身を竦めてから、スイがユキの背中に手を回して抱きついてきた。
今まではスイが頼りにできる人はいなかったのかもしれない。けれど、今はアキとユキがいる。スイが我慢する必要なんてない。スイの心を少しでも苛むものがあるなら、全部自分の手で取り除いてあげたいと思うユキだった。
「……ありがと」
そんな、ユキの気持ちが伝わったかのように、すごく可愛い声で、スイは言う。
その声を聞くだけで、『ああ。この人のためなら何でもできる』と、思えた。
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