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Internally Flawless
26 安堵 1
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◇翡翠◇
ケンジに捨て台詞を残してから、スイはエレベータに乗る。ドアが閉まった瞬間に、スイは座り込んだ。
心臓が痛いほどに脈打っている。あんな男に負けたくなくて、強がったけれど、怖くて、気持ち悪くて、涙が出そうだった。
ここ数日間の出来事が頭の中を渦巻いている。
アキと喧嘩したこと。それから、仲直りしたこと。
ユキが優しく見守ってくれたこと。それから、嫉妬してくれていたこと。
ケンジや、リンと出会ったこと。
いろいろな人に髪や瞳の色を褒められることが居心地が悪かったこと。
ルイに手を握られて気持ちが悪かったこと。
ケンジに告白されたり、髪を触られるが酷く不快だったこと。
ナオの優しさが心に響いたこと。
レイに嫉妬したり、優越感を持ったこと。
コーヒーカップを投げつけられたこと。
あの食人鬼に身体を撫でまわされたのが吐き気がするほど嫌だったこと。
助けられなかった人たちに心が痛んだこと。
アキや、ユキ以外に唇を奪われたこと。身体を撫でまわされたこと。
「アキ君……ユキ君……」
膝を抱えて座って、その膝に顔を埋めて、呟く。
怖かった。
一久が、ケンジが、古家にされたことをすべて知った上で、卑猥な言葉を自分に投げつけているような気がして、震えが止まらなかった。一久の顔も。一豊の顔も。ケンジの顔も。全部、古家の顔に見えた。身体を拘束されているような感覚がして、何度も腕を撫でて何もないことを確認した。
「……すけ……て」
ケンジに捨て台詞を残してから、スイはエレベータに乗る。ドアが閉まった瞬間に、スイは座り込んだ。
心臓が痛いほどに脈打っている。あんな男に負けたくなくて、強がったけれど、怖くて、気持ち悪くて、涙が出そうだった。
ここ数日間の出来事が頭の中を渦巻いている。
アキと喧嘩したこと。それから、仲直りしたこと。
ユキが優しく見守ってくれたこと。それから、嫉妬してくれていたこと。
ケンジや、リンと出会ったこと。
いろいろな人に髪や瞳の色を褒められることが居心地が悪かったこと。
ルイに手を握られて気持ちが悪かったこと。
ケンジに告白されたり、髪を触られるが酷く不快だったこと。
ナオの優しさが心に響いたこと。
レイに嫉妬したり、優越感を持ったこと。
コーヒーカップを投げつけられたこと。
あの食人鬼に身体を撫でまわされたのが吐き気がするほど嫌だったこと。
助けられなかった人たちに心が痛んだこと。
アキや、ユキ以外に唇を奪われたこと。身体を撫でまわされたこと。
「アキ君……ユキ君……」
膝を抱えて座って、その膝に顔を埋めて、呟く。
怖かった。
一久が、ケンジが、古家にされたことをすべて知った上で、卑猥な言葉を自分に投げつけているような気がして、震えが止まらなかった。一久の顔も。一豊の顔も。ケンジの顔も。全部、古家の顔に見えた。身体を拘束されているような感覚がして、何度も腕を撫でて何もないことを確認した。
「……すけ……て」
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