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Internally Flawless
25 苛烈 5
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ケンジのマンションの部屋を出ると、そこには拘束されたままのケンジがいた。
昨日までのケンジとは別人に見える。
こけた頬も、ぼさぼさの髪も、生気を失った瞳も、力ない肩も、昨日までの生きる力のようなものが漲っていたケンジとはまるで違う。
エレベータのボタンを押して、それが来るのを待つ間も、その男を見るのが嫌で、スイは俯いていた。
「スイさん」
ケンジの声が聞こえる。
しかし、嫌な感じがして、顔を上げられなかった。
「ねえ。スイさん。本当に……俺のこと嫌い?」
猫なで声で囁いてくる言葉が酷く禍々しいものに思える。
「俺は、スイさんのこと愛してるよ? 最初に見たときからずっと好きだった。本当だよ? 嘘じゃない。スイさんにキスしたときは夢見てるみたいだったよ。ずっと、想像していた通り、唇柔らかかった。震えてる肩や、腰を撫でた時の感触。堪らなかったな。スイさん。本当に身体細くて、壊れちゃいそうで。……俺が壊したかったな」
暗い暗い声に、心臓が跳ねる。ケンジを拘束していた公安の職員がやめるようにきつく言っても、言葉は止まらなかった。
「綺麗な翡翠色の髪。綺麗な翡翠色の瞳。今まで見た誰よりも綺麗だ。
気付いてた? 首筋。キスマーク見えてるよ? あいつなの? 白い男。あれ確かにいいよね? 美人だし、冷たそうだし。スイさんM? あれに虐められたら、たまんないよね? 叩かれたり、さげすまれたりして感じちゃうんだ。いいなあ。俺もスイさんを虐めたいな。血が出るまで叩いて、慣らさないで突っ込んで、壊れるまで犯したいなあ。
あれ? 違う? じゃ、黒いコの方だ。男らしくてカッコイイよね。でも、乱暴そうだ。やっぱりスイさん、乱暴にされるの好きなんだ。縛られて、玩具突っ込まれて、それと一緒に入れられちゃうんだろ? 気持ちいいの? アナル思いっきり広げられてぐりぐり奥突かれてイっちゃうんだ。可愛いだろうな。みたいなー」
両脇を拘束している公安の職員の再三の制止も聞かずに、ケンジはにやにやと笑いながら、スイに卑猥な言葉を投げつけて喜んでいるようだった。その股間は膨らんで、ボトムの上からでも分かるくらいに湿っている。目にはあの昏い穴。男の全てが堪らなく不快だった。
一刻も早くここを立ち去りたい。
ちん。と音が鳴って、エレベータがついた。それに乗り込もうとして、けれど、スイは立ち止まった。
それから、くるりと振り返って、ケンジの元に歩み寄る。
「質問に答えてやるよ。
お前のキスなんて、気持ち悪いだけ。それから、お前の言った通りだよ。あの二人は俺の。俺も、あの二人のもの。お前の粗チンなんて絶対に願い下げだね」
それだけ言って、スイはケンジに背中を向けた。
「100年後に出直してきなさい」
昨日までのケンジとは別人に見える。
こけた頬も、ぼさぼさの髪も、生気を失った瞳も、力ない肩も、昨日までの生きる力のようなものが漲っていたケンジとはまるで違う。
エレベータのボタンを押して、それが来るのを待つ間も、その男を見るのが嫌で、スイは俯いていた。
「スイさん」
ケンジの声が聞こえる。
しかし、嫌な感じがして、顔を上げられなかった。
「ねえ。スイさん。本当に……俺のこと嫌い?」
猫なで声で囁いてくる言葉が酷く禍々しいものに思える。
「俺は、スイさんのこと愛してるよ? 最初に見たときからずっと好きだった。本当だよ? 嘘じゃない。スイさんにキスしたときは夢見てるみたいだったよ。ずっと、想像していた通り、唇柔らかかった。震えてる肩や、腰を撫でた時の感触。堪らなかったな。スイさん。本当に身体細くて、壊れちゃいそうで。……俺が壊したかったな」
暗い暗い声に、心臓が跳ねる。ケンジを拘束していた公安の職員がやめるようにきつく言っても、言葉は止まらなかった。
「綺麗な翡翠色の髪。綺麗な翡翠色の瞳。今まで見た誰よりも綺麗だ。
気付いてた? 首筋。キスマーク見えてるよ? あいつなの? 白い男。あれ確かにいいよね? 美人だし、冷たそうだし。スイさんM? あれに虐められたら、たまんないよね? 叩かれたり、さげすまれたりして感じちゃうんだ。いいなあ。俺もスイさんを虐めたいな。血が出るまで叩いて、慣らさないで突っ込んで、壊れるまで犯したいなあ。
あれ? 違う? じゃ、黒いコの方だ。男らしくてカッコイイよね。でも、乱暴そうだ。やっぱりスイさん、乱暴にされるの好きなんだ。縛られて、玩具突っ込まれて、それと一緒に入れられちゃうんだろ? 気持ちいいの? アナル思いっきり広げられてぐりぐり奥突かれてイっちゃうんだ。可愛いだろうな。みたいなー」
両脇を拘束している公安の職員の再三の制止も聞かずに、ケンジはにやにやと笑いながら、スイに卑猥な言葉を投げつけて喜んでいるようだった。その股間は膨らんで、ボトムの上からでも分かるくらいに湿っている。目にはあの昏い穴。男の全てが堪らなく不快だった。
一刻も早くここを立ち去りたい。
ちん。と音が鳴って、エレベータがついた。それに乗り込もうとして、けれど、スイは立ち止まった。
それから、くるりと振り返って、ケンジの元に歩み寄る。
「質問に答えてやるよ。
お前のキスなんて、気持ち悪いだけ。それから、お前の言った通りだよ。あの二人は俺の。俺も、あの二人のもの。お前の粗チンなんて絶対に願い下げだね」
それだけ言って、スイはケンジに背中を向けた。
「100年後に出直してきなさい」
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