遠くて近い世界で

司書Y

文字の大きさ
上 下
338 / 351
Internally Flawless

24 恍惚 6

しおりを挟む
「触るな」

 その不快感にスイは手を払いのける。

「強情だなあ。どうせ、ここからは出られないのに。まあ、いいや。じゃ、こうしよう」

 すと、スイのそばを離れて、ケンジは壁際にあったチェストに近づいていった。そして、その抽斗から何かを取り出す。

「これなら、言うこと聞きやすいでしょ?」

 その手には鈍く光る拳銃が握られていた。それを、ケンジはスイにではなく、ナオトに向ける。

「スイさん。優しいから、ナオトを見捨てたりできないよね?」

 ちゃ。と、小さな金属音をさせて、安全装置が外れる。おそらくは脅しではない。ケンジはスイが言うことを聞かなければ、ナオトを傷つけることを躊躇はしないだろう。

「ね。服脱いで見せてよ? スイさんの裸みたい。きっと綺麗なんだろうな。誰かにヤられた跡とか残ってたりして。うわ。想像しただけで勃っちゃうよ。
 あ。でもな……俺自分で脱がせるのも好きなんだよね。恥ずかしがるスイさんの服、一枚一枚はぎ取るのも楽しそうだなー。あーどっちがいいかなー。
 いいや。じゃ、こっちきて? スイさんに選ばせてあげるから」

 また、喉を鳴らして男が笑う。スイは上着のポケットに手を入れて、スマートフォンを取り出した。

「あー。だめだめ。ここ妨害電波出してるから、スマホ通じないよ? あと、GPSで探すとかも無理。ルイってさ、仏の外人部隊出身なんだよね。だから、妨害電波だすような変な機械とかも詳しいんだ」

 自慢げに話すケンジを尻目にスイはスマートフォンをタップする。

「別に電話なんてしない。ただの合図だよ」
しおりを挟む

処理中です...