330 / 414
Internally Flawless
23 独白 4
しおりを挟む
「じゃ。今度は俺から質問。スイさんみたいな人が、なんで『ハウンド』なんてやってるの?」
その質問にスイが驚くことはなかった。
「あれ? 驚いてないね? 俺が知ってること、知ってた?」
くすり。と笑って、ケンジが問いかけてくる。
「知ってたよ……初日から」
スイの答えに、ケンジの方が意外な顔をした。
「初日? あれ? 俺なんかした?」
きょとんとした表情でケンジが言う。約1か月前の会話など覚えていないのだろう。覚えていたとしても、意識していた言葉ではなかったと思う。
「アキ君。サングラスしたままだったのに、赤い目だっていっただろ?」
肩を抱いていたケンジの手を離れて、その顔を正面から見据える。確かに見えるあの昏い穴。内向きに開いた昏く深い穴の奥にその男の心の昏い部分がちらちらと、見え隠れしているようだ。
「そんなことで?」
表情も態度も特に変わったところはないのに、瞳の中だけが違う。
「や。別にそれだけじゃないよ。俺が最初からアキ君のことを知ってたっていうような発言もあったし。正直年齢のことで驚かれないのも初めてだった」
「それって、結局、全部、推測だよね? っぽいってだけ」
くすくすと笑って、ケンジはいった。きっと、スイが何に気付いていたとしても、それが公になることはないと、自信があるのだろう。
「そうだよ? でも、もともと全員を調べるつもりだったから、理由なんてなんでもよかったんだよ。けど、君初日から、俺のPCに悪戯しただろ? メールや使用履歴の内容を監視するウイルス入れられたの、気付かないと思った?」
あの場所でPCを離れる時、スイは決してPCの電源を落とさなかった。普通に考えればそれが危険なことくらいは分かっている。照明のプログラムを作るためのPCではないのだ。そこには捜査の進行状況も、極秘情報も、スイのプライベートの交友の情報すら入っている。
「あらら? 気付かれてたんだ? じゃ、情報は偽物だったってわけ?」
けれど、敢えて電源は落とさなかったし、どこにでもPCを置きっぱなしにした。もちろん、PINコードの認証はある。けれど、それを簡単に解除できるアングラソフトが存在することも、スイは知っている。
だから、ケンジからすれば、スイが偽の情報を流すためにPCを置き去りにしていたと思っていたのだろう。
「いや。殆ど本物だよ。だって、隠したって意味ないし。君らの仲間にいるんだろ? 警察関係者」
スイの言葉にケンジの片方の眉が僅かに動く。
「じゃなきゃ、俺がアキ君やユキ君と仲間だって情報は絶対に入らないはずだ」
その情報はここへ来てから手に入れることは多分不可能だ。自分がBBBと呼ばれるハウンドの集団に所属したこと自体、殆ど知られてはいない。それは隠していたからというより、日が浅いからだ。ただし、今回の潜入捜査に参加した警察官なら確実に情報を得ているはずだ。
ケンジがそのことを知っているというなら、情報の入手先は警察と考えるのが妥当だ。
「警察関係者……や。潜入捜査官の中に裏切り者がいるなら、PCに偽情報を仕込んでおいてもバレるだろ? でも。全部が本当だったわけでもないよ? 俺のPCはさ。セキュリティがちょっと厳しめなんだ。君が見ていたのは表層の方。絶対に知られちゃ駄目な情報は、深層の方に入ってるから」
PINコードの入力画面で一定の手順を踏まずにコードを入力すると、表層へ。手順を踏むと深層へ繋がるように細工をしてある。ある程度PCに精通しているものなら気付かれたかもしれないけれど、気付かれた時の対策もしてあるし、深層へのコードは流通しているソフトで解析することはできない。人目につく場所で、スイ以外がそれを開くことは殆ど不可能だ。
「そんなことまでわかってたんだ。スイさんは頭いいんだね?」
一瞬、動揺は見せたものの、それは僅かな時間で、もう、ケンジは余裕を取り戻していた。自分の部屋に二人きりだという圧倒的な有利が彼を冷静にさせているのだろう。
「やっぱり、俺の思った通りだ。じゃあさ。教えて? 俺たちの仲間の捜査員って誰?」
その質問にスイが驚くことはなかった。
「あれ? 驚いてないね? 俺が知ってること、知ってた?」
くすり。と笑って、ケンジが問いかけてくる。
「知ってたよ……初日から」
スイの答えに、ケンジの方が意外な顔をした。
「初日? あれ? 俺なんかした?」
きょとんとした表情でケンジが言う。約1か月前の会話など覚えていないのだろう。覚えていたとしても、意識していた言葉ではなかったと思う。
「アキ君。サングラスしたままだったのに、赤い目だっていっただろ?」
肩を抱いていたケンジの手を離れて、その顔を正面から見据える。確かに見えるあの昏い穴。内向きに開いた昏く深い穴の奥にその男の心の昏い部分がちらちらと、見え隠れしているようだ。
「そんなことで?」
表情も態度も特に変わったところはないのに、瞳の中だけが違う。
「や。別にそれだけじゃないよ。俺が最初からアキ君のことを知ってたっていうような発言もあったし。正直年齢のことで驚かれないのも初めてだった」
「それって、結局、全部、推測だよね? っぽいってだけ」
くすくすと笑って、ケンジはいった。きっと、スイが何に気付いていたとしても、それが公になることはないと、自信があるのだろう。
「そうだよ? でも、もともと全員を調べるつもりだったから、理由なんてなんでもよかったんだよ。けど、君初日から、俺のPCに悪戯しただろ? メールや使用履歴の内容を監視するウイルス入れられたの、気付かないと思った?」
あの場所でPCを離れる時、スイは決してPCの電源を落とさなかった。普通に考えればそれが危険なことくらいは分かっている。照明のプログラムを作るためのPCではないのだ。そこには捜査の進行状況も、極秘情報も、スイのプライベートの交友の情報すら入っている。
「あらら? 気付かれてたんだ? じゃ、情報は偽物だったってわけ?」
けれど、敢えて電源は落とさなかったし、どこにでもPCを置きっぱなしにした。もちろん、PINコードの認証はある。けれど、それを簡単に解除できるアングラソフトが存在することも、スイは知っている。
だから、ケンジからすれば、スイが偽の情報を流すためにPCを置き去りにしていたと思っていたのだろう。
「いや。殆ど本物だよ。だって、隠したって意味ないし。君らの仲間にいるんだろ? 警察関係者」
スイの言葉にケンジの片方の眉が僅かに動く。
「じゃなきゃ、俺がアキ君やユキ君と仲間だって情報は絶対に入らないはずだ」
その情報はここへ来てから手に入れることは多分不可能だ。自分がBBBと呼ばれるハウンドの集団に所属したこと自体、殆ど知られてはいない。それは隠していたからというより、日が浅いからだ。ただし、今回の潜入捜査に参加した警察官なら確実に情報を得ているはずだ。
ケンジがそのことを知っているというなら、情報の入手先は警察と考えるのが妥当だ。
「警察関係者……や。潜入捜査官の中に裏切り者がいるなら、PCに偽情報を仕込んでおいてもバレるだろ? でも。全部が本当だったわけでもないよ? 俺のPCはさ。セキュリティがちょっと厳しめなんだ。君が見ていたのは表層の方。絶対に知られちゃ駄目な情報は、深層の方に入ってるから」
PINコードの入力画面で一定の手順を踏まずにコードを入力すると、表層へ。手順を踏むと深層へ繋がるように細工をしてある。ある程度PCに精通しているものなら気付かれたかもしれないけれど、気付かれた時の対策もしてあるし、深層へのコードは流通しているソフトで解析することはできない。人目につく場所で、スイ以外がそれを開くことは殆ど不可能だ。
「そんなことまでわかってたんだ。スイさんは頭いいんだね?」
一瞬、動揺は見せたものの、それは僅かな時間で、もう、ケンジは余裕を取り戻していた。自分の部屋に二人きりだという圧倒的な有利が彼を冷静にさせているのだろう。
「やっぱり、俺の思った通りだ。じゃあさ。教えて? 俺たちの仲間の捜査員って誰?」
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説


強気なネコは甘く囚われる
ミヅハ
BL
公立御園生(みそのい)学園高等部。
幼稚園から大学までの一貫校であるこの学校には、中等部から存在する生徒会のために作られた独特な風習があった。
高校からの外部入学生である綾瀬真尋は、二週間経っても幼馴染みの長谷川倖人以外と親しく出来ないでいたのだが、ある日の食堂で思わぬ事態に遭遇する。
学校の風習など何も知らない真尋は、生徒会長の香月廉からとんでもない事を言われてしまい大反発。
立場なども忘れて怒鳴りつけるものの意味はなく、それにブチ切れた真尋は、とりあえず関わらないようにしようと逃げ回ることにし───。
俺様美形攻め×生意気強気美人受け
*受けの口悪いです*
※性的描写有り
オリジナル設定あります。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

彩雲華胥
柚月なぎ
BL
暉の国。
紅鏡。金虎の一族に、痴れ者の第四公子という、不名誉な名の轟かせ方をしている、奇妙な仮面で顔を覆った少年がいた。
名を無明。
高い霊力を封じるための仮面を付け、幼い頃から痴れ者を演じ、周囲を欺いていた無明だったが、ある出逢いをきっかけに、少年の運命が回り出す――――――。
暉の国をめぐる、中華BLファンタジー。
※この作品は最新話は「カクヨム」さんで読めます。また、「小説家になろう」さん「Fujossy」さんでも連載中です。
※表紙や挿絵はすべてAIによるイメージ画像です。
※お気に入り登録、投票、コメント等、すべてが励みとなります!応援していただけたら、幸いです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?


目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる