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Internally Flawless
22 友達 2
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「や。うん。まあ、気持ちは悪かった。も、最悪。
汗臭いし。口臭臭いし。手べたべたするし。ぶよぶよだし。ぶつぶつだし。手付き気持ち悪いし。ガチガチなの押し付けられるし。
大体、女神さまって……何の宗教だよ。宗教なら姦淫禁止だろ? 男犯して、エロサイトにUPしろって、頭おかしいのか? 命令する方も、されて疑問に思わない方も、一度病院行って来いっての。
てか、あのボキャブラリー何? 馬鹿なの? キモ親父なの? 頭の中童貞の中二なの? エロ漫画読み過ぎなの?」
言っているうちにだんだん感情的になってしまって、止められなくなってしまった。
「男とヤってて悪かったな。好きな人に抱かれて何がわりいんだよ。……別にあんなの煽るためにこんな風に生まれたわけじゃねえよ」
涙が出そうになって、スイはその場にうずくまった。
口では強く言ったけれど、心底気持ち悪かったし、本当は怖かった。
あの気持ち悪い男が、大した相手でないことくらいは分かる。多分、強さという話なら、そこらへんのチンピラ以下だと思う。けれど、スイは自分自身に対する歪んだ劣情のようなものに極端な拒否反応を示してしまう。
しかも、自分自身が無防備な何も纏っていない状況での襲撃で、パニックになりかけた。正直、ナオへの直通電話がなかったら、冷静に対処できなかったかもしれない。
「……スイさん」
ナオの困惑した声色に感情をぶちまけてしまったことを後悔する。でも、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって、自分を止められなかった。
「ごめん……こんなこと言われても困るよな……ほっといてくれていいから」
膝を抱えて、その膝に顔を埋めて、スイは言った。
アキと喧嘩して、散々自分の身くらいは自分で守れるなんて大見栄切ったくせに、あんな雑魚相手に怖くて震えているなんて、情けなくて涙が出そうだった。
「ほっといたりしないよ」
スイの横に座って、ぽんぽんと優しく背中を叩きながら、ナオが言う。
「友達なら、こんな時は傍にいるもんでしょ?」
そう言ってずっと、背中を叩いてくれる。その手つきはまるで、子供をあやしているようだった。それでも、腹は立たなかった。腹が立つどころかすごく安心している自分がいた。
「怖かった?」
優しく、でも、何気なくナオが聞いてくれるから、顔を隠したままスイは素直に頷いた。
「だよな。俺なんて電話で聞いてるだけで、怖かったし。スイさんが、いくら強くたって、怖いもんは怖いよ」
自分の心を理解してくれる人がいるのが心強かった。以前、アキが『ナオにはスイさんを守るなんて無理』と言っていたけれど、ナオはしっかりスイを守ってくれていると思う。
「怖いよな。うん。怖いよ。なんか、同じ言葉話してるはずなのに、全然言葉通じてないかんじだった。
あのさ。あんな奴の言うことなんて、気にすんなよ。
別に……好きな人とえっちすることは恥ずかしくなんてないし。相手が誰でも、あいつに文句言われる筋合いなんてないよ」
静かに話す間も、ずっと、背中を叩いてくれるその手に、少しずつ冷静さが戻ってきた。かわりに、取り乱したのが恥ずかしくなる。
「アキさんとユキがいいっていってんだから、いいじゃん。
俺だって、セイジだって、シキさんだって、ちゃんと分かってる」
友達だと言ってくれたことも、ちゃんと分かってると言ってくれたことも、すごく嬉しかった。ナオに触られても嫌だと感じなかった理由はきっと、これだと思う。
「ありがと」
ようやく顔を上げて、スイは言った。
「いいってことよ! あ。でも、感謝してるなら、全部終わったら奢ってね」
にっこり笑って、ナオが言う。猫のような愛嬌のある笑顔だった。
そこまで話したところで、ばたばたと大勢の足音が聞こえた。
汗臭いし。口臭臭いし。手べたべたするし。ぶよぶよだし。ぶつぶつだし。手付き気持ち悪いし。ガチガチなの押し付けられるし。
大体、女神さまって……何の宗教だよ。宗教なら姦淫禁止だろ? 男犯して、エロサイトにUPしろって、頭おかしいのか? 命令する方も、されて疑問に思わない方も、一度病院行って来いっての。
てか、あのボキャブラリー何? 馬鹿なの? キモ親父なの? 頭の中童貞の中二なの? エロ漫画読み過ぎなの?」
言っているうちにだんだん感情的になってしまって、止められなくなってしまった。
「男とヤってて悪かったな。好きな人に抱かれて何がわりいんだよ。……別にあんなの煽るためにこんな風に生まれたわけじゃねえよ」
涙が出そうになって、スイはその場にうずくまった。
口では強く言ったけれど、心底気持ち悪かったし、本当は怖かった。
あの気持ち悪い男が、大した相手でないことくらいは分かる。多分、強さという話なら、そこらへんのチンピラ以下だと思う。けれど、スイは自分自身に対する歪んだ劣情のようなものに極端な拒否反応を示してしまう。
しかも、自分自身が無防備な何も纏っていない状況での襲撃で、パニックになりかけた。正直、ナオへの直通電話がなかったら、冷静に対処できなかったかもしれない。
「……スイさん」
ナオの困惑した声色に感情をぶちまけてしまったことを後悔する。でも、頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって、自分を止められなかった。
「ごめん……こんなこと言われても困るよな……ほっといてくれていいから」
膝を抱えて、その膝に顔を埋めて、スイは言った。
アキと喧嘩して、散々自分の身くらいは自分で守れるなんて大見栄切ったくせに、あんな雑魚相手に怖くて震えているなんて、情けなくて涙が出そうだった。
「ほっといたりしないよ」
スイの横に座って、ぽんぽんと優しく背中を叩きながら、ナオが言う。
「友達なら、こんな時は傍にいるもんでしょ?」
そう言ってずっと、背中を叩いてくれる。その手つきはまるで、子供をあやしているようだった。それでも、腹は立たなかった。腹が立つどころかすごく安心している自分がいた。
「怖かった?」
優しく、でも、何気なくナオが聞いてくれるから、顔を隠したままスイは素直に頷いた。
「だよな。俺なんて電話で聞いてるだけで、怖かったし。スイさんが、いくら強くたって、怖いもんは怖いよ」
自分の心を理解してくれる人がいるのが心強かった。以前、アキが『ナオにはスイさんを守るなんて無理』と言っていたけれど、ナオはしっかりスイを守ってくれていると思う。
「怖いよな。うん。怖いよ。なんか、同じ言葉話してるはずなのに、全然言葉通じてないかんじだった。
あのさ。あんな奴の言うことなんて、気にすんなよ。
別に……好きな人とえっちすることは恥ずかしくなんてないし。相手が誰でも、あいつに文句言われる筋合いなんてないよ」
静かに話す間も、ずっと、背中を叩いてくれるその手に、少しずつ冷静さが戻ってきた。かわりに、取り乱したのが恥ずかしくなる。
「アキさんとユキがいいっていってんだから、いいじゃん。
俺だって、セイジだって、シキさんだって、ちゃんと分かってる」
友達だと言ってくれたことも、ちゃんと分かってると言ってくれたことも、すごく嬉しかった。ナオに触られても嫌だと感じなかった理由はきっと、これだと思う。
「ありがと」
ようやく顔を上げて、スイは言った。
「いいってことよ! あ。でも、感謝してるなら、全部終わったら奢ってね」
にっこり笑って、ナオが言う。猫のような愛嬌のある笑顔だった。
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