遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

21 醜悪 5

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「そ。じゃ、証拠は残ってんだ」

 呟いてから、スイはスイの身体を撫でまわしている男の片手の親指を掴んだ。もう、さすがに我慢の限界だった。

「気持ちわりいから、触んなっつってんだろ」

 そのまま親指を反対側にひねりあげる。腕力などいらない。ほんの僅かに力を入れるだけだ。

「ぎ……いやああ」

 たったそれだけの痛みで、喉を締め付けていた腕が離れて、男は膝をついた。そのままひねりあげると、ご。と鈍い音がした。

「ぎゃあああ!」

 男が白目を剥いて叫ぶ。

「関節外したくらいで、うるせえよ。あー気持ち悪。最悪」

 身体が離れた瞬間に落ちてしまったタオルを拾ってから、男の手を離して、腰に巻く。腕を解放された男がぎろ。と睨みつけてくるが、それを無視してスイはスマートフォンを拾った。

「あー。ナオ君聞こえてた? こっち、4階の更衣室。人寄越してくれる?」

 スマートフォンは最初から通話状態にしてあった。相手はナオだ。仕事用に支給されているスマートフォンはワンボタンで、それぞれ管理者として設定されている相手に繋がるようになっている。スイの場合は直接の指揮官であるナオだ。

「くそっ」

 シャワー室のドア側にスイが立っているので、逃げることもできずに、男が悪態をつく。

「俺みたいに貧弱な相手なら、犯せると思った? でも、お生憎さま。俺、そゆうやつらに慣れてるから。あーでも、気持ち悪。情報引き出すためだからって……我慢するんじゃなかった……あ。警察呼んだから。お前はもう、終わり」

「ううう。うわああ!!!」

 スイの言葉にいきなり顔色を変えて、男が飛びかかってくる。この期に及んでスイをどうにかすれば逃げられるとでも思っているのだろうか。

「往生際」

 呟いて、す。と、紙一重でかわして、足を払って、転びそうになった顔に下から膝蹴りを入れる。そうすると今度は仰向けになって、後頭部から男は壁に突っ込んだ。その拍子に男のスマートフォンが床に滑る。

「あ……ぁあ」

 後頭部を抱えて呻く男をよそに、そのスマートフォンを拾って、スイはシャワールームを出た。
そのまま、内開きのドアにモップを挟んでしばりつけて、逃げられないようにしてから、とりあえずと、着替えを済ませた。
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