319 / 414
Internally Flawless
21 醜悪 4
しおりを挟む
「っ!」
入ってきた人物にそのまま壁際まで押しつけられる。勢いでスマートフォンが濡れた床に落ちて、手の届かない場所まで滑って行った。
「……だ……れだよ?」
腕で首をがっちりと壁に押し付けられて、息苦しい。
その相手にスイは見覚えがあった。しかし、どこで見たことがあるのか、思い出せない。
「へえ。本当に翠だ」
その人物は随分と背が高かった。多分、アキくらいはあるだろう。首周りの脂肪がだぶついた中途半端に長い黒髪の男。恐らく、20代後半。高い頬骨に幾つものにきびの痕。二重になった顎には無精髭。黒いジャージの上下にどこにでもある青いスニーカーを履いている。
瞼の重そうな細い目がさらに細くなる。おそらくは笑っているのだ。
「珍しいな。女神さまと同じだ」
片手で壁に押し付けられて、下ろしたままの髪を撫でられる。ぶよぶよと脂肪のついた手で髪を梳くように触られて気持ちが悪くて皮膚が泡立った。
「綺麗だなあ。これが……ひひ。俺のになるんだ」
ひひ。と、空気を吸い込むような音で笑う男が、これから自分に何をする気でここにいるのか、考えるとぞっとする。敵意をこめて睨みつけても、返ってきたのは不気味な笑いだった。
「女神さまの宣託なんだ。君のことめちゃくちゃにして、エロ投稿サイトにUPしろって」
荒い吐息が鼻先にかかって、吐き気がする。散々髪を撫でまわした男の手が、つつっ。と、肩先に触れて、スイは悪寒にびくりと、身体を揺らした。
「女神さまって……なんだよ?」
吐き気を押さえて睨みつける。多分、スイは心底嫌な顔をしていたはずだ、しかし、男はす。と目を細めて口を半月の形にした。
「女神さまは、レイ様だよ。美しいエメラルドの女神さま。俺の女神さま」
うっとりと、目を閉じて、おそらく彼女のことを思っているのだろう。その表情も吐き気がするほど気持ち悪い。
「レイさまはお怒りだよ? 君のこと……ひひ。恥ずかしくて外歩けないくらい犯して、晒してやれって」
肩に触れていた指が、首筋を、それから、頬を撫でる。まるで、虫が這っているような感覚にスイの形のよい眉が歪んだ。
「……ざけんな! 触るんじゃねえよ。俺、男だってわかってんのか?」
押しつけられた首が苦しい。喉が潰れて声が掠れた。
「わかってるさ。俺だって、男なんて興味なかったよ? ひひひ。正直、男だって聞いて勃つかなって心配だったけど……ひひ」
タオル一枚で隠しただけのスイの身体を舐めまわすように見つめて、男の喉が上下するのが見える。
「それ? キスマーク? 色白いから目立つね。うひひ。厭らしいなあ。ひひ。誰に抱かれたの? 相手男でしょ? そいつより、俺のが悦くしてやるよ? ひひ こんなキスマークいっぱい残されて……」
スイの首筋に残るアキの所有印を男の指先がなぞる。そこには触れられたくなくて、身体に力を込めても、力の差でびくともしない。
「足開いて、男受け入れたんでしょ? ひひ。男のチンコ突っ込まれるって、どんな気持ちなの? 気持ちいいの? ぐちゃぐちゃに犯されて、ひひひ。あんあん鳴いて、善がっちゃうんでしょ? ひひ。はやくみたいなあ。全部動画に撮って、UPしてあげるから」
スイの抵抗を力でねじ伏せて、胸元から脇へと手が滑って行く。
「ホント、君、綺麗だよね? 肌も白くてすべすべで。突っ込んだまま撮ったら、きっと、すごく絵になるよねえ。
あ。心配しなくてもいいからね。動画流出しちゃっても、平気だよ。俺が飼ってあげるから。最近あのペットにも飽きてきたし。次は君が俺のペットになって、毎日俺としようね」
ぐり。と、下半身を押しつけられる。それはもう驚くほど硬くて、背筋にぞっと怖気が走った。
「きも……ちわりいんだよ! こんなこと、いつもやってんのか!? バレないはずないだろ!」
腕に力を込めても、男の腕をどかすどころか、身じろぎすらできなかった。相手とスイの体格差は大人と子供ほどもある。
「バレないさ。今までもバレたことないし」
「は?」
今までも、という言葉にスイは問い返した。
「もう、女神さまの宣託に従って、10人はヤってるよ? みんな女神さまの邪魔をするやつばっかりだった。
めちゃくちゃに犯して、写真撮って、黙ってろって言ったら、誰もばらしたりしなかったよ。それどころか、みんななんでも言うことを聞いてくれた。
夜の公園で首輪付けて、裸で散歩させた時は興奮したなあ。あ。君にも後で動画見せてあげるよ。そうしたら、君にも同じことさせてあげようね」
にや。と目の前の男が厭らしい笑いを浮かべる。その瞳はギラギラとして気持ちが悪いが、あの昏い穴は見えない。
入ってきた人物にそのまま壁際まで押しつけられる。勢いでスマートフォンが濡れた床に落ちて、手の届かない場所まで滑って行った。
「……だ……れだよ?」
腕で首をがっちりと壁に押し付けられて、息苦しい。
その相手にスイは見覚えがあった。しかし、どこで見たことがあるのか、思い出せない。
「へえ。本当に翠だ」
その人物は随分と背が高かった。多分、アキくらいはあるだろう。首周りの脂肪がだぶついた中途半端に長い黒髪の男。恐らく、20代後半。高い頬骨に幾つものにきびの痕。二重になった顎には無精髭。黒いジャージの上下にどこにでもある青いスニーカーを履いている。
瞼の重そうな細い目がさらに細くなる。おそらくは笑っているのだ。
「珍しいな。女神さまと同じだ」
片手で壁に押し付けられて、下ろしたままの髪を撫でられる。ぶよぶよと脂肪のついた手で髪を梳くように触られて気持ちが悪くて皮膚が泡立った。
「綺麗だなあ。これが……ひひ。俺のになるんだ」
ひひ。と、空気を吸い込むような音で笑う男が、これから自分に何をする気でここにいるのか、考えるとぞっとする。敵意をこめて睨みつけても、返ってきたのは不気味な笑いだった。
「女神さまの宣託なんだ。君のことめちゃくちゃにして、エロ投稿サイトにUPしろって」
荒い吐息が鼻先にかかって、吐き気がする。散々髪を撫でまわした男の手が、つつっ。と、肩先に触れて、スイは悪寒にびくりと、身体を揺らした。
「女神さまって……なんだよ?」
吐き気を押さえて睨みつける。多分、スイは心底嫌な顔をしていたはずだ、しかし、男はす。と目を細めて口を半月の形にした。
「女神さまは、レイ様だよ。美しいエメラルドの女神さま。俺の女神さま」
うっとりと、目を閉じて、おそらく彼女のことを思っているのだろう。その表情も吐き気がするほど気持ち悪い。
「レイさまはお怒りだよ? 君のこと……ひひ。恥ずかしくて外歩けないくらい犯して、晒してやれって」
肩に触れていた指が、首筋を、それから、頬を撫でる。まるで、虫が這っているような感覚にスイの形のよい眉が歪んだ。
「……ざけんな! 触るんじゃねえよ。俺、男だってわかってんのか?」
押しつけられた首が苦しい。喉が潰れて声が掠れた。
「わかってるさ。俺だって、男なんて興味なかったよ? ひひひ。正直、男だって聞いて勃つかなって心配だったけど……ひひ」
タオル一枚で隠しただけのスイの身体を舐めまわすように見つめて、男の喉が上下するのが見える。
「それ? キスマーク? 色白いから目立つね。うひひ。厭らしいなあ。ひひ。誰に抱かれたの? 相手男でしょ? そいつより、俺のが悦くしてやるよ? ひひ こんなキスマークいっぱい残されて……」
スイの首筋に残るアキの所有印を男の指先がなぞる。そこには触れられたくなくて、身体に力を込めても、力の差でびくともしない。
「足開いて、男受け入れたんでしょ? ひひ。男のチンコ突っ込まれるって、どんな気持ちなの? 気持ちいいの? ぐちゃぐちゃに犯されて、ひひひ。あんあん鳴いて、善がっちゃうんでしょ? ひひ。はやくみたいなあ。全部動画に撮って、UPしてあげるから」
スイの抵抗を力でねじ伏せて、胸元から脇へと手が滑って行く。
「ホント、君、綺麗だよね? 肌も白くてすべすべで。突っ込んだまま撮ったら、きっと、すごく絵になるよねえ。
あ。心配しなくてもいいからね。動画流出しちゃっても、平気だよ。俺が飼ってあげるから。最近あのペットにも飽きてきたし。次は君が俺のペットになって、毎日俺としようね」
ぐり。と、下半身を押しつけられる。それはもう驚くほど硬くて、背筋にぞっと怖気が走った。
「きも……ちわりいんだよ! こんなこと、いつもやってんのか!? バレないはずないだろ!」
腕に力を込めても、男の腕をどかすどころか、身じろぎすらできなかった。相手とスイの体格差は大人と子供ほどもある。
「バレないさ。今までもバレたことないし」
「は?」
今までも、という言葉にスイは問い返した。
「もう、女神さまの宣託に従って、10人はヤってるよ? みんな女神さまの邪魔をするやつばっかりだった。
めちゃくちゃに犯して、写真撮って、黙ってろって言ったら、誰もばらしたりしなかったよ。それどころか、みんななんでも言うことを聞いてくれた。
夜の公園で首輪付けて、裸で散歩させた時は興奮したなあ。あ。君にも後で動画見せてあげるよ。そうしたら、君にも同じことさせてあげようね」
にや。と目の前の男が厭らしい笑いを浮かべる。その瞳はギラギラとして気持ちが悪いが、あの昏い穴は見えない。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。


【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?


目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
よく効くお薬〜偏頭痛持ちの俺がエリートリーマンに助けられた話〜
高菜あやめ
BL
【マイペース美形商社マン×頭痛持ち平凡清掃員】千野はフリーのプログラマーだが収入が少ないため、夜は商社ビルで清掃員のバイトをしてる。ある日体調不良で階段から落ちた時、偶然居合わせた商社の社員・津和に助けられ……偏頭痛持ちの主人公が、エリート商社マンに世話を焼かれつつ癒される甘めの話です◾️スピンオフ1【社交的爽やかイケメン営業マン×胃弱で攻めに塩対応なSE】千野のチームの先輩SE太田が主人公です◾️スピンオフ2【元モデルの実業家×低血圧の営業マン】千野と太田のプロジェクトチーム担当営業・片瀬とその幼馴染・白石の恋模様です
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる