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Internally Flawless
幕間 ある朝の出来事 4
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「……でもさ。ユキ君。本当に……我慢はしないでよ? 俺は……いつだって、待ってるから。てか……さ。俺だって……ユキ君がほしいときだって……あるんだけど」
スイの衝撃的な一言に思わずユキはその身体を引き離して、顔を覗きこんだ。
「うあ……」
いきなりの行動に驚いて、頬を染めたまま、翡翠色の潤んだ瞳が見返してくる。
「聞いたから。今の。聞いたからな! 俺、遠慮しないし、も。長く待たせたりしないから!」
「え? あ。うん。まってる」
ユキの勢いに放心したまま、それでもスイは約束してくれた。
「スイさん。大好き。愛してる」
スイの細い身体を腕の中におさめて、ぎゅっと抱きしめる。
昨夜眠る前はあんなに切ない気分だったのに、今日はまるでふわふわと浮いているみたいに幸せな気持ちになれた。それも、全部腕の中におさまっている可愛い人のおかげだ。
「うん。俺も。大好きだし、愛してる」
胸に顔を埋めたままスイが呟く。
「……でも……折角の朝食……冷めちゃったな」
ふふ。と、小さく笑って、スイが言った。
「大丈夫! 冷めたってスイさんの作ったものは全部美味いから!」
スイを少しだけ離して、見つめあって、ユキが言う。
それから、また、啄ばむような可愛いキスを幾つも送った。
「……あ。だめだって……も、飯食わないと、仕事遅れる」
擽ったそうにユキの唇から逃げ出して、スイが言った。
「ちぇ……ま、いいや。飯食お。そしたら、駅まで送るよ」
『うん』と、可愛らしく笑って、スイは冷めてしまった朝食を温め直してくれた。
カウンターの椅子に座って、何とはなしに、その姿を見つめていると、兄がいないからか、まるで新婚夫婦の新妻みたいに見えてきて、思わずにやにやしてしまう。
「なに?」
そのにやけ顔に気付いたのか、スイが問いかけてきた。
「え? や。……あ」
新婚さんなんてベタな妄想をしていたのが何だか気恥ずかしくて、ユキは言葉を濁した。
「あ。そいえば。聞いたんだけど……スイさんの武勇伝。お姫様のこと論破したんだって?」
そこまで言ったら、急にスイの顔色が変わった。恥ずかしそうに頬を染めて、俯いてしまう。
「一緒に仕事してるカズさん。って人。スイさんのことめっちゃ褒めてたよ? ファンになりそうだって。てか。俺『その人は俺のだから駄目です』って言いかけた」
へらりと笑って、そう言うと、スイが難しい顔をしている。
「わかってるよ? 俺だって。10歳近く年下の女の子相手にさ……あんなところで説教なんて……も。おっさん丸出しじゃん」
ユキの前に朝食のオムレツと、トーストと、具だくさんのスープを出しながら、大きくため息をつく。
「でもさ。あのコ……俺がアキ君に電話した時……勝手にその電話とったんだぜ? も、あり得ないだろ? おかげで変な勘違いして、アキ君とすれ違うことになったし。なんか髪色がどうとか、身体が貧弱とか、意味分かんない理屈でいちゃもん付けてくるし。ユキ君のスーツにあのコの香水ついてるのすげえ腹立つし」
そう言えば、昨日来ていたスーツにはべったりとレイの香水のにおいがついていた。疲れていた上に、アキと喧嘩したので、そのままリビングにかけっぱなしだったのに、一体どこに行ったのだろう。
「……あ。スーツはファブってバスルームに干してあるよ?」
よく気が利く新妻に目じりが下がる。それから、他の女の残り香なんてもんをスイに片付けさせたことには素直に反省した。
スイの衝撃的な一言に思わずユキはその身体を引き離して、顔を覗きこんだ。
「うあ……」
いきなりの行動に驚いて、頬を染めたまま、翡翠色の潤んだ瞳が見返してくる。
「聞いたから。今の。聞いたからな! 俺、遠慮しないし、も。長く待たせたりしないから!」
「え? あ。うん。まってる」
ユキの勢いに放心したまま、それでもスイは約束してくれた。
「スイさん。大好き。愛してる」
スイの細い身体を腕の中におさめて、ぎゅっと抱きしめる。
昨夜眠る前はあんなに切ない気分だったのに、今日はまるでふわふわと浮いているみたいに幸せな気持ちになれた。それも、全部腕の中におさまっている可愛い人のおかげだ。
「うん。俺も。大好きだし、愛してる」
胸に顔を埋めたままスイが呟く。
「……でも……折角の朝食……冷めちゃったな」
ふふ。と、小さく笑って、スイが言った。
「大丈夫! 冷めたってスイさんの作ったものは全部美味いから!」
スイを少しだけ離して、見つめあって、ユキが言う。
それから、また、啄ばむような可愛いキスを幾つも送った。
「……あ。だめだって……も、飯食わないと、仕事遅れる」
擽ったそうにユキの唇から逃げ出して、スイが言った。
「ちぇ……ま、いいや。飯食お。そしたら、駅まで送るよ」
『うん』と、可愛らしく笑って、スイは冷めてしまった朝食を温め直してくれた。
カウンターの椅子に座って、何とはなしに、その姿を見つめていると、兄がいないからか、まるで新婚夫婦の新妻みたいに見えてきて、思わずにやにやしてしまう。
「なに?」
そのにやけ顔に気付いたのか、スイが問いかけてきた。
「え? や。……あ」
新婚さんなんてベタな妄想をしていたのが何だか気恥ずかしくて、ユキは言葉を濁した。
「あ。そいえば。聞いたんだけど……スイさんの武勇伝。お姫様のこと論破したんだって?」
そこまで言ったら、急にスイの顔色が変わった。恥ずかしそうに頬を染めて、俯いてしまう。
「一緒に仕事してるカズさん。って人。スイさんのことめっちゃ褒めてたよ? ファンになりそうだって。てか。俺『その人は俺のだから駄目です』って言いかけた」
へらりと笑って、そう言うと、スイが難しい顔をしている。
「わかってるよ? 俺だって。10歳近く年下の女の子相手にさ……あんなところで説教なんて……も。おっさん丸出しじゃん」
ユキの前に朝食のオムレツと、トーストと、具だくさんのスープを出しながら、大きくため息をつく。
「でもさ。あのコ……俺がアキ君に電話した時……勝手にその電話とったんだぜ? も、あり得ないだろ? おかげで変な勘違いして、アキ君とすれ違うことになったし。なんか髪色がどうとか、身体が貧弱とか、意味分かんない理屈でいちゃもん付けてくるし。ユキ君のスーツにあのコの香水ついてるのすげえ腹立つし」
そう言えば、昨日来ていたスーツにはべったりとレイの香水のにおいがついていた。疲れていた上に、アキと喧嘩したので、そのままリビングにかけっぱなしだったのに、一体どこに行ったのだろう。
「……あ。スーツはファブってバスルームに干してあるよ?」
よく気が利く新妻に目じりが下がる。それから、他の女の残り香なんてもんをスイに片付けさせたことには素直に反省した。
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