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Internally Flawless
19 変転 2
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「最悪だ」
エレベータに乗って、事務所のある階のボタンを押す。
エレベータの壁に背を預けて、仕事前の最後の確認とスマートフォンを開くと、セイジからLINEのメッセージが入っていた。
ショーのスタッフに紛れ込んだハウンドが一人行方不明になった
その情報にアキの顔が険しくなる。もちろん、メッセージの内容なら行方が分からなくなっているのがスイということはない。
スイの側の仕事の詳細はもちろん守秘義務があるために明かされてはいない。けれど、ナオを含む何人かの警察官とスイを含む何人かのハウンドで捜査が行われていることだけは知っていた。
恐らく、おとり捜査の意味がある以上、捜査に選ばれたメンバーはできる限り被害者のタイプに近いメンバーが選ばれたはずだ。
黒や茶以外の髪や瞳の色。小柄な体格。童顔。
スイはもちろん。実はナオもこれに当てはまる。ワークキャップの下の髪は光に透かすときらきらと光るオレンジで、瞳の色もアプリコットに近いピンクだ。
スイのように人目を引く容貌をしているわけではないが、愛嬌のある猫のような顔は本人は気付いていないが意外にファンが多い。体格的に言ったら身長は平均的で小柄とは言えないし、とりわけ細いというわけでもない。しかし、PCオタクにありがちな日に当たらない生活をしているせいか、色は白くてオレンジの髪がよく映えている。
もちろん、アキにとってのナオは用紙などには全く関係なく、面倒事を持ってくる高校の後輩以外の何者でもないのだった。
おそらく、いなくなった人物もそれに類する外見的特徴を備えた人物なのだろう。『行方不明』という言葉から察するに作戦の類で拉致されたふりをしているわけでもない。そのハウンドがどれほどの実力を持っていたのかは分からない。セイジの情報のみではそれが男なのか女なのかすら分からない。多分、捜査情報をリークするわけにはいかないのだ。だから、あの程度のメッセージが限界だったのだろう。
とにかく。だ。ショーを前に犯行グループが動き始めたということだ。
「スイさん……大丈夫……かな」
小さく呟くと、ちん。と音がしてエレベータが目的階で止まった。扉が開いた瞬間。扉の前で仁王立ちしているレイがいた。
思わず小さく舌打ちする。
「あら。はやいのね」
ユキの話によると、昨日はかなりご機嫌斜めだったらしい。今日もあまり機嫌がよさそうには見えない。
「仕事だからな」
当たり障りのない返事を返す。正直、相手にしたくない。折角スイの余韻が腕に残っているのだ。今はその感覚に浸っていたい。
この仕事が始まって1週間もしないころ、ユキが『ここは戦場じゃない』と言っていた。恐らく彼女の命を狙っているものなどいないということなのだろう。これにはアキも同意見だった。と、いうより、いたとしても自分たちがいなければ対処できないような相手ではないと思う。
だから、別にレイに張り付いている必要などアキには全く感じられなかった。このエレベータの前と非常口前に警官を置いておくだけで充分だと思う。
エレベータに乗って、事務所のある階のボタンを押す。
エレベータの壁に背を預けて、仕事前の最後の確認とスマートフォンを開くと、セイジからLINEのメッセージが入っていた。
ショーのスタッフに紛れ込んだハウンドが一人行方不明になった
その情報にアキの顔が険しくなる。もちろん、メッセージの内容なら行方が分からなくなっているのがスイということはない。
スイの側の仕事の詳細はもちろん守秘義務があるために明かされてはいない。けれど、ナオを含む何人かの警察官とスイを含む何人かのハウンドで捜査が行われていることだけは知っていた。
恐らく、おとり捜査の意味がある以上、捜査に選ばれたメンバーはできる限り被害者のタイプに近いメンバーが選ばれたはずだ。
黒や茶以外の髪や瞳の色。小柄な体格。童顔。
スイはもちろん。実はナオもこれに当てはまる。ワークキャップの下の髪は光に透かすときらきらと光るオレンジで、瞳の色もアプリコットに近いピンクだ。
スイのように人目を引く容貌をしているわけではないが、愛嬌のある猫のような顔は本人は気付いていないが意外にファンが多い。体格的に言ったら身長は平均的で小柄とは言えないし、とりわけ細いというわけでもない。しかし、PCオタクにありがちな日に当たらない生活をしているせいか、色は白くてオレンジの髪がよく映えている。
もちろん、アキにとってのナオは用紙などには全く関係なく、面倒事を持ってくる高校の後輩以外の何者でもないのだった。
おそらく、いなくなった人物もそれに類する外見的特徴を備えた人物なのだろう。『行方不明』という言葉から察するに作戦の類で拉致されたふりをしているわけでもない。そのハウンドがどれほどの実力を持っていたのかは分からない。セイジの情報のみではそれが男なのか女なのかすら分からない。多分、捜査情報をリークするわけにはいかないのだ。だから、あの程度のメッセージが限界だったのだろう。
とにかく。だ。ショーを前に犯行グループが動き始めたということだ。
「スイさん……大丈夫……かな」
小さく呟くと、ちん。と音がしてエレベータが目的階で止まった。扉が開いた瞬間。扉の前で仁王立ちしているレイがいた。
思わず小さく舌打ちする。
「あら。はやいのね」
ユキの話によると、昨日はかなりご機嫌斜めだったらしい。今日もあまり機嫌がよさそうには見えない。
「仕事だからな」
当たり障りのない返事を返す。正直、相手にしたくない。折角スイの余韻が腕に残っているのだ。今はその感覚に浸っていたい。
この仕事が始まって1週間もしないころ、ユキが『ここは戦場じゃない』と言っていた。恐らく彼女の命を狙っているものなどいないということなのだろう。これにはアキも同意見だった。と、いうより、いたとしても自分たちがいなければ対処できないような相手ではないと思う。
だから、別にレイに張り付いている必要などアキには全く感じられなかった。このエレベータの前と非常口前に警官を置いておくだけで充分だと思う。
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