遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

17 会合 7

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 考えながら、資材搬入口から出ようとすると、通路の端に、ケンジがいた。

「あ。スイさんまだ帰ってなかった。よかった。ね。ね。ご飯食べに行かない? もちろん。ナオさんも一緒にさ」

 ケンジ。焦ってた。
 という、ナオの一言が思い出される。彼は舞台装飾の係だ。多分、同僚はまだ仕事中だろう。それなのにこんなところでスイを待ち伏せて、食事に誘おうとは、本当に焦っているのかもしれない。

「ケンジ君。まだ、仕事残ってるだろ? 舞台装飾頑張ってくれないと、俺たち仕事できないよ?」

 正直、今日は疲れ切っていて、こいつの相手はしたくない。こいつを連れていくと、また酒飲まされて、明日二日酔いになってしまうかもしれない。

「でもさ。ショー終わっちゃったら……」

 少し寂しげな顔で、ケンジが言った。

「……今日は昨日の二日酔いで、きついんだ。帰って寝るよ」

 スイはにっこり笑って、拒絶する。

「だからさ。明日のランチ一緒にどう?」

 でも、一応はフォローしておく。もちろん、ナオも一緒だけど。とは、口には出さない。アキに二人っきりで飲みに行くなと言われているし、そんな束縛っぽい一言が今はすごく心地いいから、言うとおりにしたいと思う。

「うん! そうしよ。じゃ、俺仕事戻る! じゃあね。また、明日」

 ぶんぶんと手を振りながら、ケンジが去って行った。

「弄ばれてるねー」

 ふりふりとその背中に手を振りながら、ナオがぼそりと言った。

「失礼な言い方しないでくんない? これも『お仕事』ですから」

 にっこりと営業用スマイルを浮かべると、少し驚いた顔をしてから、ナオはにやりと笑った。

「年の功ってやつ? こわいこわい」

 首を竦めて、ナオは言った。

「はいはい。おっさんで悪うございました。あーところで飯。どこに行く?」

 ケンジには帰ると言ったけれど、ナオの誘いまで断る気はなかった。確かに二日酔いだったが、それは昼までで、今はすっかり回復している。
 資材搬入口を出て、道路へと歩き出す。

「そだなースイさんいいとこ知らない? 俺インドア派だから」

 そう言いながらも、スマートフォンを取り出して、ナオは店を検索し始めた。

「インドア派は俺も一緒だって」

 苦笑してスイもスマートフォンを取り出す。
 しかし、そこで思わず足を止めてしまった。

「ごめん」

 足をとめたスイに不思議そうに振り返ったナオに向かって、スイは言った。

「用事。できた。帰るよ」

 スマートフォンにはアキからのメッセージが入っていた。

 あいたい
 そっち行っていい?

 自然と笑顔になってしまうのを止められない。
 その顔で何かを察したのだと思う。

「あー。うん。わかった。またね。アキ氏によろしく」

 ひらりと手を振って、ナオは一人人混みの中に消えて行った。
 その背中に『ありがとう』と小さく声をかける。
 それから、再びスマートフォンに視線を移すと、アキのメッセージは丁度5時頃だった。

 いいよ
 何時頃来る?

 メッセージを返す。すると、すぐに既読がついて、返ってきた答えに、スイは走り出した。

 もう、ついてる。
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