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Internally Flawless
17 会合 6
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「今日のスポンサーの来館……もしかしたら、『販売会』かもしれない。スタッフ側の『商品』の買い付けに来てたんじゃないかな。『取引先名簿』。まだ、全部は確認できてないけど、今日来ていたスポンサーって奴ら。殆ど名前入ってた」
そう言って、スイはナオにmicroSDを渡した。
「これ。メールより安全だから。急いでたから、抜けているところはあるかもしれない。でも、出来る限り集めた『取引先名簿』。確認してみて。分かってると思うけど……これはナオ君以外には絶対に見せないでほしい」
ごく。と、ナオが唾を飲み込む。
「わかった。拉致の危険性については忠告はしておくよ。捜査員以外が目をつけられていた場合は……どうしようもないけど。証拠もないし、おおっぴらにはできない」
その意見にはスイも賛成だった。確かに危険はあるのだが、何の証拠もない。今の状態で捜査員以外に情報を漏らすわけにはいかない。もし、情報が洩れたら、ここまでの苦労がすべて無駄になった上に、これまでの被害者の命が危うい。
「多分。今日は大丈夫だと……思う。『材料調達』のあいつはここから出られないはずだし。『販売会』の直後に拉致じゃ、あからさま過ぎるし。『発注』は、まさかここで直接するわけでもないだろうから、タイムラグもあるだろうし。ただ、どれも希望的観測だ。だから、せめて危険があることだけは知らせてほしい」
スイの言葉にナオは大きく頷いた。
「他には? 俺に出来ることある?」
真剣な顔で聞いてくるナオに、スイは苦笑した。
「ここでは、君が俺の上司だよ? オーダーをくれれば、俺が動くから大丈夫」
エリートキャリアのはずなのに、公務員にありがちな尊大で大柄な態度が、ナオには微塵もない。馴れ馴れしい態度もからかうような言葉もおそらく親近感の表れなのだ。
「だって、スイさんの方が年上じゃん。それに、『ハッカー』としての実力も全然上だし」
彼は相手の実力や能力を認めると、立場関係なく尊重してくれる。信じがたい事実もナオは真摯に受け止めて、スイの挙げた全ての可能性を平等に検証してくれた。だから、スイはナオのことが気に入っていた。好きだと言い換えてもいい。
「だから、俺はスイさんのこと、信じてついてくって決めたの」
にぱ。っと笑って、ナオは言った。目を細めた顔は本当に猫の様で、状況を忘れてほのぼのしてしまう。
「でも、今日はもう帰ろっか? も、ここでできることもないでしょ? てか、家にいた方が集中して情報収集できるんじゃない? あ。メールはちゃんと送っとくな」
確かに、もう、家に帰りたくないなんてこともない。家に帰れば、時間も早いことだしアキに連絡することもできる。だから、今日は素直にPCをバッグにしまったのだ。
「そだな。洗濯物も溜まってるし、今日ははやく帰ろ」
いつもは中々帰ろうとしないスイのそんな変化に多分ナオは気付いていると思う。
スイより先に立って歩きながら、ナオはスイの顔を覗きこんだ。
「アキさん。大丈夫だったみたいだね」
そういえば、ここに来た初日に、彼は言っていた。『アキさん、大丈夫?』と。
「うん。大丈夫だった。俺の方が駄目だったみたいだ。ナオ君の言うとおり。信頼できてなかった」
今なら分かる。ナオの言ったことも、アキの気持ちも。
自分に自信はない。けれど、折角アキが、ユキが好きだと言ってくれたのだから、それを信じる。その気持ちが変わってしまわないように努力しようと思う。彼らが好きだといってくれる自分でいられるように足掻こうと思う。
それくらいしかできないけれど、失いたくないから。
「そ。よかった。あーところで、駅前で飯食ってかね?」
ナオが言う。機材置き場から出て、通路に設置された時計を確認すると、まだ5時半だ。結局ほぼ定時にあがることになってしまった。この時間なら、まだ、食事をして帰っても、アキに連絡できるだろうか。と、頭の中で計算する。
「そだなー」
そう言って、スイはナオにmicroSDを渡した。
「これ。メールより安全だから。急いでたから、抜けているところはあるかもしれない。でも、出来る限り集めた『取引先名簿』。確認してみて。分かってると思うけど……これはナオ君以外には絶対に見せないでほしい」
ごく。と、ナオが唾を飲み込む。
「わかった。拉致の危険性については忠告はしておくよ。捜査員以外が目をつけられていた場合は……どうしようもないけど。証拠もないし、おおっぴらにはできない」
その意見にはスイも賛成だった。確かに危険はあるのだが、何の証拠もない。今の状態で捜査員以外に情報を漏らすわけにはいかない。もし、情報が洩れたら、ここまでの苦労がすべて無駄になった上に、これまでの被害者の命が危うい。
「多分。今日は大丈夫だと……思う。『材料調達』のあいつはここから出られないはずだし。『販売会』の直後に拉致じゃ、あからさま過ぎるし。『発注』は、まさかここで直接するわけでもないだろうから、タイムラグもあるだろうし。ただ、どれも希望的観測だ。だから、せめて危険があることだけは知らせてほしい」
スイの言葉にナオは大きく頷いた。
「他には? 俺に出来ることある?」
真剣な顔で聞いてくるナオに、スイは苦笑した。
「ここでは、君が俺の上司だよ? オーダーをくれれば、俺が動くから大丈夫」
エリートキャリアのはずなのに、公務員にありがちな尊大で大柄な態度が、ナオには微塵もない。馴れ馴れしい態度もからかうような言葉もおそらく親近感の表れなのだ。
「だって、スイさんの方が年上じゃん。それに、『ハッカー』としての実力も全然上だし」
彼は相手の実力や能力を認めると、立場関係なく尊重してくれる。信じがたい事実もナオは真摯に受け止めて、スイの挙げた全ての可能性を平等に検証してくれた。だから、スイはナオのことが気に入っていた。好きだと言い換えてもいい。
「だから、俺はスイさんのこと、信じてついてくって決めたの」
にぱ。っと笑って、ナオは言った。目を細めた顔は本当に猫の様で、状況を忘れてほのぼのしてしまう。
「でも、今日はもう帰ろっか? も、ここでできることもないでしょ? てか、家にいた方が集中して情報収集できるんじゃない? あ。メールはちゃんと送っとくな」
確かに、もう、家に帰りたくないなんてこともない。家に帰れば、時間も早いことだしアキに連絡することもできる。だから、今日は素直にPCをバッグにしまったのだ。
「そだな。洗濯物も溜まってるし、今日ははやく帰ろ」
いつもは中々帰ろうとしないスイのそんな変化に多分ナオは気付いていると思う。
スイより先に立って歩きながら、ナオはスイの顔を覗きこんだ。
「アキさん。大丈夫だったみたいだね」
そういえば、ここに来た初日に、彼は言っていた。『アキさん、大丈夫?』と。
「うん。大丈夫だった。俺の方が駄目だったみたいだ。ナオ君の言うとおり。信頼できてなかった」
今なら分かる。ナオの言ったことも、アキの気持ちも。
自分に自信はない。けれど、折角アキが、ユキが好きだと言ってくれたのだから、それを信じる。その気持ちが変わってしまわないように努力しようと思う。彼らが好きだといってくれる自分でいられるように足掻こうと思う。
それくらいしかできないけれど、失いたくないから。
「そ。よかった。あーところで、駅前で飯食ってかね?」
ナオが言う。機材置き場から出て、通路に設置された時計を確認すると、まだ5時半だ。結局ほぼ定時にあがることになってしまった。この時間なら、まだ、食事をして帰っても、アキに連絡できるだろうか。と、頭の中で計算する。
「そだなー」
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