遠くて近い世界で

司書Y

文字の大きさ
上 下
292 / 414
Internally Flawless

17 会合 5

しおりを挟む
「そー言えば。いろんな人にめっちゃ話しかけられたよ。スイさんの武勇伝知れ渡ってる」

 にやにやと笑って、ナオが言う。
 昼間のレイとの一件は瞬く間に舞台設営班全体に知れ渡ることとなった。それどころか、スタイリストやヘアメイクなどの人物装飾班の人たちにも知れ渡っているらしい。
 どうやら、あのトップモデルはそこいら中で評判がよろしくないらしく、『よく言ってくれた!』と、やたらに知らない人に声をかけられた。

「……ごめん。それは言わないでよ」

 ここにいたって、スイは後悔していた。
 捜査に支障がでないよう目立たないようにしていたつもりだったのに、こんなくだらないことで目立ってしまうなんてありえない。

「スイさんファン。一気に増えてるよ? ケンジ焦ってた」

 ファン。なんてとんでもない。そんなのシロだけで充分だ。家の外のストーカーの数もこれ以上増えたら鬱陶しくて仕方ない。

「もー。そゆうのマジでいらない。勘弁しろよ。ここまで見つかっちゃったら、俺仕事できなくなっちゃうよ」

 もう少しで、必要な情報は集め終わる。だから、せめてここでだけは一人で仕事をしたい。けれど、会場自体に人が増えている上に、無駄に注目されてしまって、身動きが取れなくなっている。

「わかってるって。なるべくここには邪魔が入らないように、協力するから。てかさ、もう、どこでもいっしょじゃない?」

 こっちは真面目に困っているのにナオは半笑いだ。

「そうでもないよ。まだ、見落としがあるかもしれないし。まだ、工場確定してないし……。あ。てか……今日はないとは思うけど……。潜入捜査員全員にメールとかって出来る?」

 ふと思いついたことをスイは口にした。

「俺の方からならできるけど? なんか、あった?」

 ナオからの質問にスイはしばし躊躇った。

「こんな確実でない情報を拡散するのは、混乱を招くだけかもしれないけど……もし、俺の考えていることが当たってたとしたら、今夜にでも危険があるかもしれない。だから、敢えて言うよ」

 そう前置きをすると、ナオは真剣な顔で頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

たしかなこと

大波小波
BL
 白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。  ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。  彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。  そんな彼が言うことには。 「すでに私たちは、恋人同士なのだから」  僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

神子は再召喚される

田舎
BL
??×神子(召喚者)。 平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。 そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。 受けはかなり可哀そうです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

彩雲華胥

柚月なぎ
BL
 暉の国。  紅鏡。金虎の一族に、痴れ者の第四公子という、不名誉な名の轟かせ方をしている、奇妙な仮面で顔を覆った少年がいた。  名を無明。  高い霊力を封じるための仮面を付け、幼い頃から痴れ者を演じ、周囲を欺いていた無明だったが、ある出逢いをきっかけに、少年の運命が回り出す――――――。  暉の国をめぐる、中華BLファンタジー。 ※この作品は最新話は「カクヨム」さんで読めます。また、「小説家になろう」さん「Fujossy」さんでも連載中です。 ※表紙や挿絵はすべてAIによるイメージ画像です。 ※お気に入り登録、投票、コメント等、すべてが励みとなります!応援していただけたら、幸いです。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

私の庇護欲を掻き立てるのです

まめ
BL
ぼんやりとした受けが、よく分からないうちに攻めに囲われていく話。

処理中です...