遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

17 会合 2

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「おつかれさま」

 同じくパーテーションの中に退避してきたのは、この仕事で初めて知り合ったライセンス持ちのハウンドだった。

「あーおつかれっす。なんか、姫様、相当キてるね」

 ユキと同じくらいの身長の金髪に青い瞳の青年は、カズと名乗った。本名なのかどうかはわからない。アキと同じ歳で、普段から主に警備や護衛の仕事をしているらしい。とても穏やかな感じの人の良さそうな人物なのだが、しゃべってみると意外に辛辣でレイのことをあまり好ましく思っていないことが分かった。と、いうよりも、警備班は殆どがレイに対していい感情を持ってはいない。
 大抵のハウンドは腕に自信がある。しかし、彼女はそこにまったく興味を示さずに、殆ど容姿だけで採用不採用を決めた。その時点でよくは思っていないのに、スマートフォンを勝手に触られたり、使いっぱしり扱いされたり、容姿のことで散々こき下ろされたりといい感情を持てるはずもない扱いを受けていた。

「あれな。も。めっちゃ気持ちよかった」

 にやにや笑いながらカズは言った。いつもどちらかと言うとにこにこした人物なのだが、こんな意地の悪い顔をするのは初めて見る。

「なんか、あったんすか?」

 退屈だと思っていたので話を促すと、カズは小声で話し始めた。

「昼間さ。スケジュール見ただろ? 会場の方に行ってたんだよ」

 思い出して、また、にやにやしている。よっぽどのことがあったのだろうか。

「姫様無双状態でさ。も、社長も手をつけられなくて、ホールのオーナーや、スポンサーにも態度でかいでかい。正直面白くないって顔したスポンサーもいたよ? でもさ、お姫様、親父が有名ブランドのデザイナーらしいじゃん? だから、誰も何にも言えないんだよ。いつものことだけど」

 ああ。そんな前情報資料で読んだ気がするな。と、ユキは思う。ただ、あまり彼女自身の情報には興味がないので忘れていた。ただ、それで事務所の社長すら、彼女を諌められないのかと納得する。

「でさ。なんか、姫様、以前この事務所にいたモデルってやつ見つけて、『あーこれ嫌がらせする気だなー』って、笑顔で近づいてったわけ。昔、結構人気あったモデルで会場の音楽担当してるんだって。事務所の女の子に聞いたけど、以前レイに言い寄って振られたらしい。正直よくあんなめんどくさい女に言い寄るよなーって思うけど」

 ちらり。と、レイを確認するとまだ若い女の子を怒鳴りつけている。怒鳴られている女の子は半泣きだが、誰も止めようとはしない。
 確かにめんどくさい女だな。と、思ってしまう。

「姫様はそいつがまだ、自分に未練があると思ってたんだろうけど……相手の男はさ、もうすっかりと吹っ切れて、別にいい人がいるみたいでさ。姫様、かちんときちゃったわけだ。
 多分。あの男の隣にいた人。恋人ってわけじゃなさそうだったな。どっちかってえと、男の方の一方通行って感じ。すげえ綺麗めの人。でさ……今度は姫様その人にロックオンして、攻撃始めたんだけど、反撃食らって全く言い返せなくて。結局すごすごと逃げかえってきたわけ」

 綺麗め。の、一言になんとなく、ユキは嫌な予感がした。

「え? あの、相手の人って……」

 恐る恐る聞くと、カズの顔がぱっと明るくなった。
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