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Internally Flawless
15 論破 2
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「あら。タイガじゃない」
不意に近くから聞こえた聞き覚えのある低い女性の声に、スイは視線を移した。
「モデルをやめたと思ったら、こんなところで何? 舞台の設営のお仕事かしら?」
そこにはレイがいた。
近くで見ると、本当に輝くような緑だと思う。彼女よりスイの髪や瞳が綺麗だという人たちは、いったいどこを見ているのかと思う。滑らかな光沢を持った長い髪も、彼女のシャープな輪郭には相応しい切れ長のつり目の中に収まる瞳も、まさにエメラルドというのに相応しい。
「かつてのキングスクラウンのトップモデルも落ちぶれたものね」
ただ、アキが言っていた意味も分かった。
この女は無理だ。確かに綺麗だけど、自分も無理だと思う。
ずっと胸を反らして見下すような視線も、何故か立ち止まると腰に持ってくる細い手も、折角の若さを全く引き出してはいない濃い化粧も、赤い爪も、鼻をつく香水の匂いも、自分の価値観以外を全く認めない物言いも、何もかも無理だ。
容姿では全然敵わないのを認める。認めるから、一生係わりあいたくないタイプの人間だと思った。
「何とでも言えばいいよ。君だって、あと5年すればわかる」
ふい。と、タイガがレイから視線を逸らす。その目と目が合ってしまった。もしかしたら、レイから目をそらしたのではなく、スイを見たのかもしれない。
「ここに来てよかったと俺は思っているよ。君以上の宝物も見つけたしね」
またしても、うっとりと見つめられて、スイは後ずさった。
え? まさか、俺のことじゃないよな?
思うけれど、明らかにじっとりとした粘着質な視線を感じてしまう。
「ふうん?」
その視線に気付いたのか、レイの緑の瞳が、スイを捉えた。
こちらも、上から下までじっくりと眺めてくる。それから、顔あたりで視線を止めて、ふ。と笑う。その笑顔も、明らかに人をばかにしているような笑顔で、勘に触る。
「『希少種』ね。お仲間には初めて会ったわ。作りものじゃない?」
かつかつと足音をさせてレイが近づいてくる。身長では殆ど変わらないと思うけれど、ものすごいピンヒールを履いているせいか、視線が上向きになってしまう。ちらりとナオを見ると、固まったまま動けないでいる。
「染めている感じじゃないわね」
髪を触られて、思わず片手で彼女の手を振り払っていた。たとえ女性と言えど、髪を触られるのは気持ち悪い。
「勝手に触んないでくんない?」
少し強めの口調になったのは、多分、まだ少し残っている嫉妬のせいだと思う。
レイは言葉を失っていた。多分、こんなふうに拒絶されるのは初めてなのだろう。
「……あら。ごめんなさい。小柄だから女性の方かと思っていたわ」
いちいちカチンとくるいい方に、ユキの『あの人苦手』の意味もよく分かった。別に身長が低いことは気にしてはいない。一般的に男らしいと言われる容姿でないことも分かっている。ただ、それを他人に面と向かって指摘されるのは愉快な気分ではなかった。
「いや。いいよ。こちらこそ、あんまり平らだから男かと思ってたし」
だから、スイはにっこりと笑って返す。一瞬だけ彼女の眉が不快そうに寄ったのをスイは見逃さなかった。
不意に近くから聞こえた聞き覚えのある低い女性の声に、スイは視線を移した。
「モデルをやめたと思ったら、こんなところで何? 舞台の設営のお仕事かしら?」
そこにはレイがいた。
近くで見ると、本当に輝くような緑だと思う。彼女よりスイの髪や瞳が綺麗だという人たちは、いったいどこを見ているのかと思う。滑らかな光沢を持った長い髪も、彼女のシャープな輪郭には相応しい切れ長のつり目の中に収まる瞳も、まさにエメラルドというのに相応しい。
「かつてのキングスクラウンのトップモデルも落ちぶれたものね」
ただ、アキが言っていた意味も分かった。
この女は無理だ。確かに綺麗だけど、自分も無理だと思う。
ずっと胸を反らして見下すような視線も、何故か立ち止まると腰に持ってくる細い手も、折角の若さを全く引き出してはいない濃い化粧も、赤い爪も、鼻をつく香水の匂いも、自分の価値観以外を全く認めない物言いも、何もかも無理だ。
容姿では全然敵わないのを認める。認めるから、一生係わりあいたくないタイプの人間だと思った。
「何とでも言えばいいよ。君だって、あと5年すればわかる」
ふい。と、タイガがレイから視線を逸らす。その目と目が合ってしまった。もしかしたら、レイから目をそらしたのではなく、スイを見たのかもしれない。
「ここに来てよかったと俺は思っているよ。君以上の宝物も見つけたしね」
またしても、うっとりと見つめられて、スイは後ずさった。
え? まさか、俺のことじゃないよな?
思うけれど、明らかにじっとりとした粘着質な視線を感じてしまう。
「ふうん?」
その視線に気付いたのか、レイの緑の瞳が、スイを捉えた。
こちらも、上から下までじっくりと眺めてくる。それから、顔あたりで視線を止めて、ふ。と笑う。その笑顔も、明らかに人をばかにしているような笑顔で、勘に触る。
「『希少種』ね。お仲間には初めて会ったわ。作りものじゃない?」
かつかつと足音をさせてレイが近づいてくる。身長では殆ど変わらないと思うけれど、ものすごいピンヒールを履いているせいか、視線が上向きになってしまう。ちらりとナオを見ると、固まったまま動けないでいる。
「染めている感じじゃないわね」
髪を触られて、思わず片手で彼女の手を振り払っていた。たとえ女性と言えど、髪を触られるのは気持ち悪い。
「勝手に触んないでくんない?」
少し強めの口調になったのは、多分、まだ少し残っている嫉妬のせいだと思う。
レイは言葉を失っていた。多分、こんなふうに拒絶されるのは初めてなのだろう。
「……あら。ごめんなさい。小柄だから女性の方かと思っていたわ」
いちいちカチンとくるいい方に、ユキの『あの人苦手』の意味もよく分かった。別に身長が低いことは気にしてはいない。一般的に男らしいと言われる容姿でないことも分かっている。ただ、それを他人に面と向かって指摘されるのは愉快な気分ではなかった。
「いや。いいよ。こちらこそ、あんまり平らだから男かと思ってたし」
だから、スイはにっこりと笑って返す。一瞬だけ彼女の眉が不快そうに寄ったのをスイは見逃さなかった。
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