遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

13 融解 4

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 スイのベッドは一応ダブルなのだが、大柄なアキと二人で寝るには少し狭苦しい。けれどそれでよかった。それがよかった。
 ぴったりと隙間なくくっついて、布団にくるまると、すごく安心した。

「スイさん、寒くない?」

 声が近くてくすぐったいけれど、それは、幸福感を増す材料にしかならない。思いをぶちまけて乱れた心がアキの仕草で、言葉で、温かさで整っていくのがわかる。

「だいじょうぶ」

 その胸に擦り寄せると、力強く抱きしめられた。

「ね。スイさん」

 少し改まったように、名前を呼ばれて、スイはアキの顔を見た。真剣な顔だった。

「嫌だったら、答えなくていいし、言ってくれればすぐにやめるけど。聞きたいことがある」

「なに?」

 改まった口調に少し不安になるけれど、スイが問い返すと、アキは言葉を詰まらせた。しばらく、そのまま言葉を探すように黙り込む。それから、彼は口を開いた。

「俺は、ずっとスイさんと一緒にいたい。だから、知っておきたい。スイさんの『夢』のこと」

 その言葉に、びく。と、スイの身体が竦んだ。

「嫌かな?」

 心配そうに顔を覗きこんでくるアキの優しい顔に、スイは心を決めた。初めてのときだって怖かった。けれど、アキに聞いてもらって、自分は救われた。だから、アキが知りたいなら知ってほしいと思う。

「ううん。いいよ」

 スイの顔を見つめるその瞳に笑顔を返す。うまく笑えたかは分からない。けれど、アキも笑顔を返してくれた。

「『夢』って、頻繁に見るの?」

 スイの細い指を大きな手が包み込むように握ってくれる。

「や。そんなことない。前は体調のいいときでも、1週間に1回くらいは見ていたけど……アキ君たちにあってから、すごく少なくなってる」

 二人の存在がスイにとっての安定剤のような役割をはたしているのは、スイ自身も分かっていた。

「前に見たのは……多分……覚えてる? 痴漢にあったって言ったあの日」

 その夢を見るのは大抵、精神的に参っている時や、性的に嫌な目にあった時だった。二人の前では『嫌な思いなんて忘れちゃった』と強がったけれど、いや。強がったわけではなくて、二人の前ではそんな嫌な思いを忘れていられたけれど、夜になって一人になると男の息遣いや、腰や尻のあたりを撫でられる気持ちの悪い感覚を思い出して、泣きそうになってしまった。
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