遠くて近い世界で

司書Y

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幕間 夜想曲『告白前夜』 5

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「……なに……す……やめ」

 多分、男は最初から、いつかはこうなってしまうと知っていたのだろうと、後になって気付いた。翡翠が監視カメラの映像を見てしまったために、それがたまたま早くなってしまっただけだ。

「いつも……だ。」

 泰斗は暴れる翡翠の脚の太ももと脹脛を近くにあった医療用のテープでぐるぐる巻きにして固定する。そうして、両脚を固定されると、殆ど抵抗らしい抵抗もできなくなってしまった。

「お前を見るたびに、いつも、こうしたいと思っていた」

 ぐい、と不自由な両脚を左右に開かれる。

「……っ! やっ……やだっ。泰斗さんっ!」

 それが用意されていたことが、彼がこうなることを予測していた、否、計画していたことのあかしだろうと思う。
とろりとした、粘度の高い液体が開かれたソコに垂らされる。ひやり。と、その感触にも、寒気がして、翡翠は、ふる。と、身を震わせた。

「そんな……っやめてよ! やだよっ。いやだ!」

 翡翠の脚の間に身体を割り込ませ、スラックスの前を寛げて取りだされたソレに翡翠は身体を強張らせた。それは、未だ少年のような翡翠のソレとは違って、血管が浮くほど反り起っていた。
 これから自らの身に起こるだろうことを想像して身体の芯が冷えて行くのを感じる。

「やめて……。無理……そんな……っ」

 何度も何度も首を横に振る。その度に涙が飛び散った。

「愛しているよ。翡翠」

 翡翠のソコに垂らしたのと同じものをソコに擦りつけて、男はソレを彼の慣らしてもいない後孔に宛がった。その熱さにぞっとして、翡翠の細い身体が逃げ出そうと身を捩る。しかし、腕を拘束され、脚を縛りつけられた彼の抵抗など、泰斗にとってはないも同然だった。

「やめ……やめて。やだ……こわい……泰斗さ……っひっ!!」

 突然。激しい痛みに襲われて、翡翠は悲鳴を上げた。

「……っく! やあああっ」

 受け入れるようにできていないその場所に、熱く大きい質量を持ったソレが割り込んでくる。焼けた鉄串を押しつけられているような痛み。酷い異物感と嫌悪感。呼吸ができない。

「……ぅ……あ」

 無意識に逃れようと力を込めた腕と、脚の拘束が擦れて、血が滲む。全身を強張らせて侵入者を拒んでも、それが止まることはなかった。
 ゆっくり、ゆっくりとソレが翡翠の身体を引き裂くように進んでいく。全身を痛みだけに支配されて、翡翠の見開いた瞳が焦点を失う。その瞬間、また別の痛みとともに、急に滑りが良くなったソレがいきなり最奥まで侵入してきた。

「ひっあっ! ぐ……っ!」

 失いかけた意識を現実に引き戻されて、翡翠は呻いた。
 ソコが切れて滴った血が白いシーツを汚す。

「ほら。入ったよ。翡翠。俺たちはひとつだ」

 無理やりに繋げられたその場所を、泰斗の指がなぞる。

「ああ。……っ。そんなに締めて。悦んでいるのか?」

 耳元で囁くようなその声が、よく聞こえない。指先が冷たい。身体が震える。それなのに繋がった部分だけが酷く熱い。灼けつくような痛みで動くことすらできない。

「翡翠。翡翠。愛している」

 大きな質量を持ったソレが、一旦退いたかと思うと、突然また奥を貫かれた。皮肉にも流れ出した血で滑りが良くなったソコを男が容赦なく貫く。奥まで穿たれるたび、ぐちゅぐちゅと耳を塞ぎたくなるような淫猥な音が響いた。

「ひっぎ! い……っ。いた……っああっ……や……痛い……っ」

 容赦ない乱暴な抽挿に内臓までぐちゃぐちゃにかき回されているようで、酷い吐き気がする。

「……い……っ。あ。……あ。やっ。やめ。やめて。痛い。痛いよ」

 渇くことのない涙が翡翠の顔を濡らしていた。
 一際、高く肌のぶつかり合う音がした。内臓ごと貫かれる感覚に翡翠は耐えきれなくなって嘔吐する。固形のものなど殆ど食べられていない胃からは、胃液しか出てくるはずもなく、シーツに僅かに染みを残すだけだった。

「ぐっ。う……ぅ」

 それでも、その行為が止むことはなかった。
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