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幕間 夜想曲『告白前夜』 1
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その映像の意味を、理解するのにたっぷり10分以上かかった。
その防犯システムを作ったのは翡翠で、泰斗に断ってそれを試すために設置したのも翡翠だ。だから、その映像がどこを映しているものであるのか、誰よりも良く分かっているのは翡翠だ。
それは、泰斗の家のリビングだった。日付は8月25日。時刻は17時30分。その日、翡翠が帰宅する約1時間前だ。
リビングには、理佐が一人でいた。スマートフォンをいじっている。
そこに入ってくる数人の男たち。鍵はかかっているはずだった。理佐は一人でいる時に鍵をかけないことはない。泰斗の立場上、襲撃を受けるようなこともある。だから、防犯には翡翠も理佐も気を使っていた。
それなのに、その男たちは部屋に侵入してきたのだ。
理佐はとても驚いているようだった。それは、男たちが無理やりドアを破るようなことはしていないということだ。もし、そんな物音がしたなら、理佐は先に危機を察知して逃げ出していただろう。
逃げようとする理佐を男たちが囲む。
理佐が何かを叫んでいる。その視線はカメラの死角に向けられていた。カメラに音声が入っていないことが悔やまれる。もし、それが聞こえていれば、何かが分かったかもしれなかった。
そこからは、見ることが苦痛でしかなかった。
男たちはにやにやと笑いながら、理佐を次々に犯していった。逆らう彼女を殴りつけ、蹴りつけ、犯せる場所は全て蹂躙し、精を吐きだし、ボロボロになっていく彼女を笑った。
その様はあまりに酷くて、翡翠は直視できずに目を逸らす。
その人のことを愛していたのかと聞かれると“わからない”と、答えるしかない。まだ、翡翠には愛というものは良く分からなかった。ただ、彼女は優しくて、忙しくてあまり顔を合わせることができない泰斗の代わりにいつも一緒にいてくれた。だから、彼女に二人で暮らそうと言われた時に、断ることはしなかった。
理佐とは身体の関係はかなり以前からあった。誘ったのは理佐で、もちろん理佐は初めてではなかったと思う。ただ、幼少期の薬物摂取のせいで、成長の遅かった翡翠にとっては、彼女は初めての人だった。
その人が、まるでぼろ雑巾のように扱われているのを、直視できるほど、翡翠は冷徹のできてはいなかった。
その拷問のような映像が途切れたのは、1時間ほど経ってからだった。途中から、男たちは一人犯すごとに一発の銃弾を理佐に撃ち込んだ。そうして7発の銃弾が撃ち込まれた頃、部屋に入ってきたのは、自分だった。
部屋の惨状に一瞬だけ固まって、それから、すぐに理佐に駆け寄ろうとして、弾き飛ばされるように横に跳んだ。音声はない。けれど、銃弾を撃ち込まれたのだということは自分が一番よく知っている。
左側の背中から腹にかけて、いくつかの臓器を傷つけて銃弾は抜けた。目覚めるまでに3週間かかった。一時は心肺停止までいったらしい。
その弾道の先、そこにいたのは。
その防犯システムを作ったのは翡翠で、泰斗に断ってそれを試すために設置したのも翡翠だ。だから、その映像がどこを映しているものであるのか、誰よりも良く分かっているのは翡翠だ。
それは、泰斗の家のリビングだった。日付は8月25日。時刻は17時30分。その日、翡翠が帰宅する約1時間前だ。
リビングには、理佐が一人でいた。スマートフォンをいじっている。
そこに入ってくる数人の男たち。鍵はかかっているはずだった。理佐は一人でいる時に鍵をかけないことはない。泰斗の立場上、襲撃を受けるようなこともある。だから、防犯には翡翠も理佐も気を使っていた。
それなのに、その男たちは部屋に侵入してきたのだ。
理佐はとても驚いているようだった。それは、男たちが無理やりドアを破るようなことはしていないということだ。もし、そんな物音がしたなら、理佐は先に危機を察知して逃げ出していただろう。
逃げようとする理佐を男たちが囲む。
理佐が何かを叫んでいる。その視線はカメラの死角に向けられていた。カメラに音声が入っていないことが悔やまれる。もし、それが聞こえていれば、何かが分かったかもしれなかった。
そこからは、見ることが苦痛でしかなかった。
男たちはにやにやと笑いながら、理佐を次々に犯していった。逆らう彼女を殴りつけ、蹴りつけ、犯せる場所は全て蹂躙し、精を吐きだし、ボロボロになっていく彼女を笑った。
その様はあまりに酷くて、翡翠は直視できずに目を逸らす。
その人のことを愛していたのかと聞かれると“わからない”と、答えるしかない。まだ、翡翠には愛というものは良く分からなかった。ただ、彼女は優しくて、忙しくてあまり顔を合わせることができない泰斗の代わりにいつも一緒にいてくれた。だから、彼女に二人で暮らそうと言われた時に、断ることはしなかった。
理佐とは身体の関係はかなり以前からあった。誘ったのは理佐で、もちろん理佐は初めてではなかったと思う。ただ、幼少期の薬物摂取のせいで、成長の遅かった翡翠にとっては、彼女は初めての人だった。
その人が、まるでぼろ雑巾のように扱われているのを、直視できるほど、翡翠は冷徹のできてはいなかった。
その拷問のような映像が途切れたのは、1時間ほど経ってからだった。途中から、男たちは一人犯すごとに一発の銃弾を理佐に撃ち込んだ。そうして7発の銃弾が撃ち込まれた頃、部屋に入ってきたのは、自分だった。
部屋の惨状に一瞬だけ固まって、それから、すぐに理佐に駆け寄ろうとして、弾き飛ばされるように横に跳んだ。音声はない。けれど、銃弾を撃ち込まれたのだということは自分が一番よく知っている。
左側の背中から腹にかけて、いくつかの臓器を傷つけて銃弾は抜けた。目覚めるまでに3週間かかった。一時は心肺停止までいったらしい。
その弾道の先、そこにいたのは。
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