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Internally Flawless
04 同僚 03
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「ところでさ……スイさんって、ミステリアスだよね?」
不意にタイガがそんなことを言い出した。じっと熱を帯びた視線を向けられて、思わず目を逸らす。
スイはこの手のタイプが嫌いだ。どうしても、アキの廉価版にしか見えない。アキくらいの完成度があれば(アキはしないけれど)容姿を誇っても許すしかないけれど、所詮廉価版だからその程度で自慢されても。と、思ってしまうからだ。そして、いつもなら、それも、どうでもいいと受け流せるけれど、今はアキのことは思い出したくないから、いつもよりも不快に思える。
その上、人間関係を円滑に構築しなければならないというのに、不快な人物に意味不明の言葉で絡まれるのは心底嫌だった。
「ミステリアスって……なんですか? それ」
半笑いで答える。正直言っている意味がわからない。隠し事はしているけれど、そんなもって回った言い方をするような雰囲気を出しているつもりなんて、スイにはなかった。それとも、事実を隠しているのが違和感になってそんなふうに見えてしまうのだろうか。
「その髪とか目とか『本物』?」
けれど、そう言われて、スイは出てしまいそうになったため息を飲み込む。
また、その話か。
この仕事をはじめてから、ほんの数日で何度外見的特徴について、不躾極まりない質問をされたか、スイはもう覚えていない。
染髪しているのか。コンタクトを入れたり、眼球にタトゥーを入れていないか。から始まって、スキンケアには何を使っているのかやら、特別な美容法はあるのかやら、はては整形しているのか、しているとしたら医院の場所を教えてくれとまで聞かれた。
ファッション関係の人物と言うのは、こんなのばっかりなんだろうか。外見上の特徴に異常な執着を感じる。まるでそんなことばかりが人間の価値と思っているような輩ばかりだ。
「『偽物』には出せない色合いだよね?」
放っておいたら触って来そうな勢いで身を乗り出して、タイガはスイを見ている。
この街に来てからの数年間で仕事関係以外の知合いなんて両手の指で足りるほどしかできてはいない。少なくとも今までスイの周りにはいなかったタイプだ。『美人』と、からかわれたことはあるけれど、少なくともその人たちはそれがスイの価値に対して大きな部分を占めるとは思っていなかったのだと知っている。
だから、スイも、自分の外見的特徴について、悪目立ちして面倒。くらいにしか思ってはいなかったし、それが、天然ものであれ、ファッションのためのものであれ、心底どうでもいいものでしかなかった。
「ちょっと。その言い方失礼じゃない?」
けれど、タイガの発言を聞いたルナは腹立たしげに言った。
「染めてたり、カラコン入れるのを偽物みたいな言い方しないでよ。服を着替えるのと同じでしょ? それとも、あなたは天然素材以外の服着てたら偽物だって文句言うわけ?」
自分の髪色を染髪で変えている彼女にしてみれば、彼女の美しさが偽物だと罵られているように感じたのかもしれない。
けれど、スイから見たら、彼女は髪色も綺麗に金髪に染まっていたし、カラコンでつけた瞳の色も似あっていると思う。自分の意志とセンスで色を決めて、それが似合っていることに自信を持っている彼女は綺麗だ。少なくとも、外見に関しては、寝ているときに垂らした涎の跡がついてなければそれでいいし、髪なんて括ってしまえば長さが多少違っていても問題ないと自分で切ってしまうスイの美的センスと比べたら、どちらに価値があるかなんて比べることすらおこがましいと思った。
「そんな意味で言ってるんじゃないよ。ただ、スイさんみたいな両方緑っていのは、モデルや芸能人でもかなり珍しいだろ? ほら、連ドラのあの子の影響で街にはたくさんいるけどさ。ファンで真似してるってこともあるだろ? てか、そんなに綺麗に染められるなら、俺もそのサロン行ってみたいし」
タイガの言葉に皆の視線がスイに集まった。すごく居心地が悪い。
「いや。まあ、生まれつきだけど……そんなに珍しいかな。珍獣的な?」
注目されるのが嫌で、スイはおどけて見せた。
不意にタイガがそんなことを言い出した。じっと熱を帯びた視線を向けられて、思わず目を逸らす。
スイはこの手のタイプが嫌いだ。どうしても、アキの廉価版にしか見えない。アキくらいの完成度があれば(アキはしないけれど)容姿を誇っても許すしかないけれど、所詮廉価版だからその程度で自慢されても。と、思ってしまうからだ。そして、いつもなら、それも、どうでもいいと受け流せるけれど、今はアキのことは思い出したくないから、いつもよりも不快に思える。
その上、人間関係を円滑に構築しなければならないというのに、不快な人物に意味不明の言葉で絡まれるのは心底嫌だった。
「ミステリアスって……なんですか? それ」
半笑いで答える。正直言っている意味がわからない。隠し事はしているけれど、そんなもって回った言い方をするような雰囲気を出しているつもりなんて、スイにはなかった。それとも、事実を隠しているのが違和感になってそんなふうに見えてしまうのだろうか。
「その髪とか目とか『本物』?」
けれど、そう言われて、スイは出てしまいそうになったため息を飲み込む。
また、その話か。
この仕事をはじめてから、ほんの数日で何度外見的特徴について、不躾極まりない質問をされたか、スイはもう覚えていない。
染髪しているのか。コンタクトを入れたり、眼球にタトゥーを入れていないか。から始まって、スキンケアには何を使っているのかやら、特別な美容法はあるのかやら、はては整形しているのか、しているとしたら医院の場所を教えてくれとまで聞かれた。
ファッション関係の人物と言うのは、こんなのばっかりなんだろうか。外見上の特徴に異常な執着を感じる。まるでそんなことばかりが人間の価値と思っているような輩ばかりだ。
「『偽物』には出せない色合いだよね?」
放っておいたら触って来そうな勢いで身を乗り出して、タイガはスイを見ている。
この街に来てからの数年間で仕事関係以外の知合いなんて両手の指で足りるほどしかできてはいない。少なくとも今までスイの周りにはいなかったタイプだ。『美人』と、からかわれたことはあるけれど、少なくともその人たちはそれがスイの価値に対して大きな部分を占めるとは思っていなかったのだと知っている。
だから、スイも、自分の外見的特徴について、悪目立ちして面倒。くらいにしか思ってはいなかったし、それが、天然ものであれ、ファッションのためのものであれ、心底どうでもいいものでしかなかった。
「ちょっと。その言い方失礼じゃない?」
けれど、タイガの発言を聞いたルナは腹立たしげに言った。
「染めてたり、カラコン入れるのを偽物みたいな言い方しないでよ。服を着替えるのと同じでしょ? それとも、あなたは天然素材以外の服着てたら偽物だって文句言うわけ?」
自分の髪色を染髪で変えている彼女にしてみれば、彼女の美しさが偽物だと罵られているように感じたのかもしれない。
けれど、スイから見たら、彼女は髪色も綺麗に金髪に染まっていたし、カラコンでつけた瞳の色も似あっていると思う。自分の意志とセンスで色を決めて、それが似合っていることに自信を持っている彼女は綺麗だ。少なくとも、外見に関しては、寝ているときに垂らした涎の跡がついてなければそれでいいし、髪なんて括ってしまえば長さが多少違っていても問題ないと自分で切ってしまうスイの美的センスと比べたら、どちらに価値があるかなんて比べることすらおこがましいと思った。
「そんな意味で言ってるんじゃないよ。ただ、スイさんみたいな両方緑っていのは、モデルや芸能人でもかなり珍しいだろ? ほら、連ドラのあの子の影響で街にはたくさんいるけどさ。ファンで真似してるってこともあるだろ? てか、そんなに綺麗に染められるなら、俺もそのサロン行ってみたいし」
タイガの言葉に皆の視線がスイに集まった。すごく居心地が悪い。
「いや。まあ、生まれつきだけど……そんなに珍しいかな。珍獣的な?」
注目されるのが嫌で、スイはおどけて見せた。
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