遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

03 自嘲 02

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「てか、ここ喫煙スペースじゃん? あ。それよりさ。人の名前、覚えられた? 俺、絶対無理だよ」

 馴れ馴れしいといえば、ケンジだけでなく彼もそうだと思う。ただ、彼の場合、スイがアキやユキの知り合いだというところが大きいのだろう。最初からかなりフレンドリーだった。

「人の顔覚えるのは得意だから」

 スイは苦笑する。確かに、今日あった人数を考えると、きついと泣きごとを言いたくなるのも分かる。

「すげ。あ。一応、メンバーの資料はスイさんのパソに送っといた。なんかわかったら教えて」

 屋上には誰もいない。けれど、潜入捜査中にしては、少し不用意な会話だと思う。そう思ってから、気にしすぎかとも思う。ここは賃貸で借りるイベントスペースだ。こんなところにまさか盗聴器と言うこともないだろう。

「ん。わかった」

 だから、スイは短く答えた。
 少しだけ、沈黙が流れる。タバコを吸うわけでもないのだから、用が終わったら帰ればいいのに。と思っていると、ちら、とナオが視線を寄越した。

「なに?」

 なにか、言いたそうだと思う。ただ、まだ知り合ってから間もない自分に聞きにくいことなんだろうか。距離の詰め方は早いのに、そんな行動は少しちぐはぐだ。

「……や。ユキに聞いたんだけどさ。スイさん。二人と付き合ってるんだって?」

 遠慮がちにナオが聞いてくる。

「あー。そか。聞いたんだ」

 どんな関係なのかと聞かれたら、ユキなら言うだろうと思う。というか、聞かれなくても自慢する方だと思う。その屈託ないところがユキのいいところで、スイが好きなところだ。だから、ユキが友人であるナオにそれを言ったのを悪いことだとは思わない。

「えとさ。それって、本気でそうだって受け取っていいのかな?」

 けれど、そういう反応を示されるのが分かっているから、アキなら絶対に言わないと思う。説明するのが面倒だし、分かってもらえるかも分からないから。そして、アキは他人が知っていなくても、本人同士が思い合っていればいいと、真っ直ぐに通った芯を持っている人だから。ユキとは違うけれど、アキのそんなところもスイには好ましい。好ましい。と、思ってから、つきん。と、心の片隅が痛む。痛むから、無理矢理にそこから気持ちを逸らした。

「うん。いいよ」

 二人との関係を聞かれたなら、スイも隠すことはしない。恥ずかしいとも、間違っているとも思わないからだ。それで不利益を被っても構わない。大体そんな些末なことをいちいち気にするような悠長な人生を送ってはいない。嘘をついて二人との関係を隠しているのを二人に知られるほうがよっぽど怖いし、恥ずかしいと思っている。
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