遠くて近い世界で

司書Y

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Internally Flawless

02 瑣末 03

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「ホント、綺麗だよね。翡翠の色っていうの? 今度、絵のモデルになってくんない?」

 うっとりと見つめられて、今度こそ隠せないレベルでドン引きしてしまう。もちろん、表情に出ていたのは言うまでもない。
 正直、変な奴に声をかけられることは少なくないが、こういう声のかけられ方も珍しい。

「や。ちょっと……そいうのは」

 かなり気持ち悪い。という感情を隠すのは無理だった。無意識にずり。と、椅子を引いて下がってしまう。さすがにこれは嫌がっても問題ないだろう。初心者レベルの対話スキルしかなくても、それくらいは判断できる。

「あ。違うよ? ヌードモデルとか、そゆうんじゃないよ? 俺、緑って好きで。や。ちょっとまって、引かないで? 違うから。ホント、違うから。純粋に美術のためだから!」

 慌てて取り繕う姿がさらに怪しくて、疑わしげな目で見てしまう。

 てか、ヌードモデルって何?
 大体、今日初めて会った男にモデルになってっていうか?

 人間関係希薄にしてきたせいだろうか、それが普通なんだろうか。と、思ってしまう。思ってから、多分、さすがに普通ではないと思う。と、いうよりも普通だったら怖い。

「いや。ホント違うんだって。スイさんだけじゃなくて、ほら。あの人、モデルのレイとかもすげえ好きで。でもさ。レイには絵のモデルになってとか言えないだろ?」

 はっきり言って、その人物の話は避けたかった。今、一番思い出したくないことだ。
 レイというのは、殺人予告を受けたモデルだ。確かまだ19と言っていたが、世界的なショーにも参加するようなかなりの売れっ子だった。身長はスイよりも高く、モデルなので豊満と は言い難いが、驚くほど腰の位置が高かった。目鼻立ちのはっきりした印象的な顔で、かなりの吊り目の気の強そうな子だなと思う。それから、その髪も、瞳も、まるでエメラルドのような綺麗な緑だった。
 今日は会場の確認に本人が来ていたのだ。何やら早口でスタッフに捲し立てているのを見たが、何を言っていたのかは聞き取れなかった。

「あとさ。あの人、レイの警護についてた赤い目の人見た? まさに、美の女神に愛されてるって感じだったじゃん? 男の俺でも見惚れた」

 その彼女の警備をアキとユキは担当している。もちろん、二人きりで。というわけでではなく、数人のハウンドがシフトを組んで警護に当たっているので、今日はユキの姿は見えなかった。
 他にも何人かレイというモデルと、同じ事務所のモデルという男女を見かけたが、彼女より目を引く人物はいなかったように思う。
 ただ、一人を除いて。
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