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Internally Flawless
01 矜持 05
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「ちょっと。二人ともそのへんで……」
それまで二人の険悪な雰囲気におろおろしていたユキが、躊躇いがちに口を挟んできた。
「ユキは、黙ってろ」
「ユキ君は、黙ってて」
しかし、二人同時にぴしゃりと言われて『……はい』と、小さく呟いて黙り込んでしまった。しゅんと耳としっぽを垂れた犬みたいな表情に、ごめん。と、思うけれど、フォローしている余裕はない。
「とにかく、セイジには俺から断っておく」
これ以上言い争いをしていても無駄とばかりに、また、わざとらしいため息交じりにアキが言った。『仕方ない』と、言っているようなその態度も会話することすら否定されているようで辛い。
「勝手なことするな」
そのアキを正面から睨んでスイが言う。
辛いはずなのにそんな言い方しかできない自分に嫌気がさした。ただ、そうしないと今度は情けない顔をしてしまいそうで、最悪泣いてしまいそうな気すらして、自分を止めることができない。
きっと、自分が情けない姿を晒したらアキは折れてくれる。けれど、それをしたら、堂々と二人の横に立てない気がして、素直になんてなれなかった。
「スイさんが、なんて言っても、断るよ。ここの責任者は俺だ」
そんな言葉まで持ち出して、頭ごなしに押さえつけて来るアキに最早怒りを通り越して、スイは悲しくなってきた。どうしてこんな風に自分のキャリアまで否定されなければいけないんだろう。そこまで、自分は信用がないんだろうか。
「……もういい」
スイは呟いた。
「どうせ、仕事ないんだし、休暇もらいます」
二人に深々と頭を下げる。
そんなことを言いたいわけじゃなかったけれど、もう、完全に引っ込みは付かなくなっていた。
「ここからはここのメンバーじゃなくて、俺個人の行動だから」
目を伏せ、アキの顔を見ることなくそう言って、スイはキッチンを出て、自分の部屋に入る。
「スイさん!」
後ろから聞こえてくる、ユキの声は聞こえないふりをした。
それまで二人の険悪な雰囲気におろおろしていたユキが、躊躇いがちに口を挟んできた。
「ユキは、黙ってろ」
「ユキ君は、黙ってて」
しかし、二人同時にぴしゃりと言われて『……はい』と、小さく呟いて黙り込んでしまった。しゅんと耳としっぽを垂れた犬みたいな表情に、ごめん。と、思うけれど、フォローしている余裕はない。
「とにかく、セイジには俺から断っておく」
これ以上言い争いをしていても無駄とばかりに、また、わざとらしいため息交じりにアキが言った。『仕方ない』と、言っているようなその態度も会話することすら否定されているようで辛い。
「勝手なことするな」
そのアキを正面から睨んでスイが言う。
辛いはずなのにそんな言い方しかできない自分に嫌気がさした。ただ、そうしないと今度は情けない顔をしてしまいそうで、最悪泣いてしまいそうな気すらして、自分を止めることができない。
きっと、自分が情けない姿を晒したらアキは折れてくれる。けれど、それをしたら、堂々と二人の横に立てない気がして、素直になんてなれなかった。
「スイさんが、なんて言っても、断るよ。ここの責任者は俺だ」
そんな言葉まで持ち出して、頭ごなしに押さえつけて来るアキに最早怒りを通り越して、スイは悲しくなってきた。どうしてこんな風に自分のキャリアまで否定されなければいけないんだろう。そこまで、自分は信用がないんだろうか。
「……もういい」
スイは呟いた。
「どうせ、仕事ないんだし、休暇もらいます」
二人に深々と頭を下げる。
そんなことを言いたいわけじゃなかったけれど、もう、完全に引っ込みは付かなくなっていた。
「ここからはここのメンバーじゃなくて、俺個人の行動だから」
目を伏せ、アキの顔を見ることなくそう言って、スイはキッチンを出て、自分の部屋に入る。
「スイさん!」
後ろから聞こえてくる、ユキの声は聞こえないふりをした。
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