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BT.H
#14
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「ちょ。ユキ、なんで川和志狼と知りあいなの?」
シロが離れていったのをいいことに、セイジがユキを捕まえて聞いた。
ナオは、その間、『綺麗め』で、『エロい』人に見惚れていた。いや、相手は男だぞ。しかも、5つも年上の。と思うけど、セイジが言っていた通り、よくわからないけれど、魅力的な人だ。とにかく目を引く。
「え? シロさん? や。ちゃんの話したのは今日が初めて。ちょっと話しただけだけど、めちゃいい人だよ? 顔怖いけど。スイさんのファンなんだって。かなり前から。
今日は、えと。スイさんのこと守ってくれたお礼。俺が駅まで迎えに行ってたんだ。スイさんに迎えにいかせちゃだめって、兄貴が駄々こねるから」
さらりと、すごいことを聞いてしまった気がする。
あの川和組のイケイケ若頭補佐が。大ファン。心の中で繰り返す。
ちらり。と、シロが向かった先を見ると、もんのすんごく不機嫌な顔をしたアキが座っているのが見えた。アキの顔を見止めた途端、シロの顔も『今三人ヤってきました』くらいの表情に変わる。
「ユキ。早く来い」
向こうの席から、アキが呼んでいる。ナオたちには気付いているが、シキに軽く会釈したくらいで、不機嫌な表情のままだ。ナオやセイジなんて、居ないも同然だった。
「うん。じゃ、俺行く」
ひらひら。と、手を振って、去っていこうとするユキの腕をナオは慌てて掴んだ。
「……ユキ。一つ、聞きたいんだけど」
おそるおそる言うと、ユキが不思議そうに見つめてきた。もしかして、お前もなのか? そんな、疑問。
「えとさ。スイさんって、何者?」
その質問に、ユキは僅かに何かを考えたようだが、にぱっと笑った。
「俺の恋人! で。兄貴の恋人」
俺の。の方は満面の笑みだった。それから、兄貴の。の方は少し複雑な顔。
「「「はあ!?」」」
思わず答えがシンクロしてしまった。
やっぱり、お前もか!?
ナオは、思う。
セイジの話では信じられなかったけど、あの人を見たときから、なんとなく想像はついていた。
「じゃ、そういうわけで」
と、混乱した3人が止める間もなく、ユキはアキとシロとスイが待つ席に行ってしまった。
あの『冷徹暴君』アキと、『ワンコ系お姉さまキラー』ユキと、『国内最大級暴力団の次期トップ』志狼を骨抜きにしてしまう人。3人とも、超のつくイケメンで、男としての格がちょっと一般人とは違う。のにも、関わらず。だ。セイジ程度の男がにやけ顔になった理由も納得がいった。
全部ひっくるめて、今日の議題『小鳥遊家第三の男』について。なんとなく分かってきた気がした。
「……な?」
セイジが言う。多分、その後に続く言葉は『だから、見れば分かるって言っただろ』だ。
「うん」
ナオが答える。『ごめん。ホント見たら分かるわ』と、心の中で付け加える。
「マジか……」
いつも冷静なシキすらも固まっていた。きっと、『信じたくないけど……』と、続くのだろう。
3人の見つめる先で、アキとユキとシロが笑っている。それはもう、なんというか、幸せそうに。見つめる先には翠の髪と瞳の『綺麗め』で『エロい』もうすぐ三十路の人がいる。
その視線が、一瞬。ちらり。と、ナオの方に向いた。ナオの視線にも気付いて、柔らかく微笑む。
これに落ちたのか。
呟きは声になっていなかった。
「猛獣使い……」
代わりに別の言葉を呟く。
「「ああ。それな」」
残りの二人が呟く。
その後、心に受けた大きな衝撃を癒すために、3人は朝まで飲み明かしたのだったが、支払いは割り勘だった。
シロが離れていったのをいいことに、セイジがユキを捕まえて聞いた。
ナオは、その間、『綺麗め』で、『エロい』人に見惚れていた。いや、相手は男だぞ。しかも、5つも年上の。と思うけど、セイジが言っていた通り、よくわからないけれど、魅力的な人だ。とにかく目を引く。
「え? シロさん? や。ちゃんの話したのは今日が初めて。ちょっと話しただけだけど、めちゃいい人だよ? 顔怖いけど。スイさんのファンなんだって。かなり前から。
今日は、えと。スイさんのこと守ってくれたお礼。俺が駅まで迎えに行ってたんだ。スイさんに迎えにいかせちゃだめって、兄貴が駄々こねるから」
さらりと、すごいことを聞いてしまった気がする。
あの川和組のイケイケ若頭補佐が。大ファン。心の中で繰り返す。
ちらり。と、シロが向かった先を見ると、もんのすんごく不機嫌な顔をしたアキが座っているのが見えた。アキの顔を見止めた途端、シロの顔も『今三人ヤってきました』くらいの表情に変わる。
「ユキ。早く来い」
向こうの席から、アキが呼んでいる。ナオたちには気付いているが、シキに軽く会釈したくらいで、不機嫌な表情のままだ。ナオやセイジなんて、居ないも同然だった。
「うん。じゃ、俺行く」
ひらひら。と、手を振って、去っていこうとするユキの腕をナオは慌てて掴んだ。
「……ユキ。一つ、聞きたいんだけど」
おそるおそる言うと、ユキが不思議そうに見つめてきた。もしかして、お前もなのか? そんな、疑問。
「えとさ。スイさんって、何者?」
その質問に、ユキは僅かに何かを考えたようだが、にぱっと笑った。
「俺の恋人! で。兄貴の恋人」
俺の。の方は満面の笑みだった。それから、兄貴の。の方は少し複雑な顔。
「「「はあ!?」」」
思わず答えがシンクロしてしまった。
やっぱり、お前もか!?
ナオは、思う。
セイジの話では信じられなかったけど、あの人を見たときから、なんとなく想像はついていた。
「じゃ、そういうわけで」
と、混乱した3人が止める間もなく、ユキはアキとシロとスイが待つ席に行ってしまった。
あの『冷徹暴君』アキと、『ワンコ系お姉さまキラー』ユキと、『国内最大級暴力団の次期トップ』志狼を骨抜きにしてしまう人。3人とも、超のつくイケメンで、男としての格がちょっと一般人とは違う。のにも、関わらず。だ。セイジ程度の男がにやけ顔になった理由も納得がいった。
全部ひっくるめて、今日の議題『小鳥遊家第三の男』について。なんとなく分かってきた気がした。
「……な?」
セイジが言う。多分、その後に続く言葉は『だから、見れば分かるって言っただろ』だ。
「うん」
ナオが答える。『ごめん。ホント見たら分かるわ』と、心の中で付け加える。
「マジか……」
いつも冷静なシキすらも固まっていた。きっと、『信じたくないけど……』と、続くのだろう。
3人の見つめる先で、アキとユキとシロが笑っている。それはもう、なんというか、幸せそうに。見つめる先には翠の髪と瞳の『綺麗め』で『エロい』もうすぐ三十路の人がいる。
その視線が、一瞬。ちらり。と、ナオの方に向いた。ナオの視線にも気付いて、柔らかく微笑む。
これに落ちたのか。
呟きは声になっていなかった。
「猛獣使い……」
代わりに別の言葉を呟く。
「「ああ。それな」」
残りの二人が呟く。
その後、心に受けた大きな衝撃を癒すために、3人は朝まで飲み明かしたのだったが、支払いは割り勘だった。
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