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BT.H
#6
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リビングの扉を開けて、アキが先導するように入っていく。その後ろについて、リビングに入ると、部屋の様子は以前に入った時と大きく変わるところはなかった。
壁には見なれない扉が増えている気がしたけれど、前に来たのは5か月前なので、記憶は定かではない。
「隣の区画と繋げたんだよ。こっちは、完全に事務所にした」
セイジの視線に気づいたらしいアキが言った。以前から置いてあったソファに座って、目線でセイジにも座るように促す。
ああ。それで。
セイジは納得した。
アキにとって、ここはもうパーソナルスペースではないのだ。完全に仕事用の余所行き部屋(変な表現だが)ということなんだろう。だから、簡単に他人を入れることができるのだ。
「今のリビングと、スイさんの部屋は向こうの区画」
アキがドアの方を指さす。
マジで? ありえん。
セイジはまた、思う。
『スイさん』とは、多分、さっきの翠の髪の青年だろうと想像がつく。ということは、彼は完全にパーソナルスペースだと決めている場所である新しいリビングに常時彼を入れているということになる。そんなことは、あり得ない。そこに入れるのはユキだけだと思っていたし、現在までの彼の恋愛遍歴からいっても、彼女を家に招待したという話は聞いたことがない。まあ、それは自分が知らないだけかもしれないけど。とにかく、それだけアキは警戒心が強いのだ。
「あの人……何者?」
だから、思わず聞いていた。確かに、とても何と表現していいのか、魅力的な感じの人だとは思う。でも、そもそも、あの人はこの家主の何なんだろう。
確か、アキが過去に付き合っていた女性は何人か知っていた。いや、付き合っていたのかは分からないけれど、女性を連れて歩いているのは見たことがある。高校時代から。見るたびに違う人。大抵すごい美人で、年上らしき人ばかり。
ってことはだよ。少なくとも、アキの恋愛対象は女性だ。
「……は? なんでそんなこと聞くんだよ」
じと。と音がするくらいに、アキはセイジを見ている。不信感丸出しだ。隠そうともしていない。何に対して不信感を持っているのは分からないけれど。
「いや。だってさ。アキさん自分がどんな顔してるか、わかってる?」
じゃあ、あの人何なの?
セイジは思う。
こんな顔をこの不機嫌大王にさせているあの人っていったい何なの?
「は?」
アキ本人は全く分かっていないようだった。
けれど、セイジは知っている。もんのすごく綺麗で大人っぽいお姉さまを連れて歩いている時のアキは全く楽しそうではなかった。あんな美人連れて歩いていたら、恐らくセイジならうっきうき。だっただろう。
それなのにアキは世界に面白いことなんて何一つないみたいな顔をしていた。いや不機嫌というわけではない。笑ってはいる。でも、目が冷たい。まるで作り物みたいだった。よくできた彫刻のようだった。
それが、今の顔はどうだろう。
「まるで……」
今の、アキは、とても魅力的な恋人を誰にも見せたくなくて、近づく男全部に警戒心丸出しにしてる情けない男みたいだよ。
とは、言えなかった。
とても彫刻のようだとは思えない。まるで、別人だ。
「……いや。その」
壁には見なれない扉が増えている気がしたけれど、前に来たのは5か月前なので、記憶は定かではない。
「隣の区画と繋げたんだよ。こっちは、完全に事務所にした」
セイジの視線に気づいたらしいアキが言った。以前から置いてあったソファに座って、目線でセイジにも座るように促す。
ああ。それで。
セイジは納得した。
アキにとって、ここはもうパーソナルスペースではないのだ。完全に仕事用の余所行き部屋(変な表現だが)ということなんだろう。だから、簡単に他人を入れることができるのだ。
「今のリビングと、スイさんの部屋は向こうの区画」
アキがドアの方を指さす。
マジで? ありえん。
セイジはまた、思う。
『スイさん』とは、多分、さっきの翠の髪の青年だろうと想像がつく。ということは、彼は完全にパーソナルスペースだと決めている場所である新しいリビングに常時彼を入れているということになる。そんなことは、あり得ない。そこに入れるのはユキだけだと思っていたし、現在までの彼の恋愛遍歴からいっても、彼女を家に招待したという話は聞いたことがない。まあ、それは自分が知らないだけかもしれないけど。とにかく、それだけアキは警戒心が強いのだ。
「あの人……何者?」
だから、思わず聞いていた。確かに、とても何と表現していいのか、魅力的な感じの人だとは思う。でも、そもそも、あの人はこの家主の何なんだろう。
確か、アキが過去に付き合っていた女性は何人か知っていた。いや、付き合っていたのかは分からないけれど、女性を連れて歩いているのは見たことがある。高校時代から。見るたびに違う人。大抵すごい美人で、年上らしき人ばかり。
ってことはだよ。少なくとも、アキの恋愛対象は女性だ。
「……は? なんでそんなこと聞くんだよ」
じと。と音がするくらいに、アキはセイジを見ている。不信感丸出しだ。隠そうともしていない。何に対して不信感を持っているのは分からないけれど。
「いや。だってさ。アキさん自分がどんな顔してるか、わかってる?」
じゃあ、あの人何なの?
セイジは思う。
こんな顔をこの不機嫌大王にさせているあの人っていったい何なの?
「は?」
アキ本人は全く分かっていないようだった。
けれど、セイジは知っている。もんのすごく綺麗で大人っぽいお姉さまを連れて歩いている時のアキは全く楽しそうではなかった。あんな美人連れて歩いていたら、恐らくセイジならうっきうき。だっただろう。
それなのにアキは世界に面白いことなんて何一つないみたいな顔をしていた。いや不機嫌というわけではない。笑ってはいる。でも、目が冷たい。まるで作り物みたいだった。よくできた彫刻のようだった。
それが、今の顔はどうだろう。
「まるで……」
今の、アキは、とても魅力的な恋人を誰にも見せたくなくて、近づく男全部に警戒心丸出しにしてる情けない男みたいだよ。
とは、言えなかった。
とても彫刻のようだとは思えない。まるで、別人だ。
「……いや。その」
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