遠くて近い世界で

司書Y

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BT.H

#2

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「……や。ごめん。ただの独り言」

 苦笑して、スイはまた、資料に目を落とした。
 多分、この仕事は受けることになると思う。
 アキとユキがよく仕事を依頼されている、警察関係の人物から回ってきた仕事らしいからだ。アキは『たっぷり恩を売りつける』とか、意地の悪い顔をして言っていた。
 しかし、この仕事を受けた場合、きっとスイはその間休みになるだろうと、予想していた。多分、自分は彼女のお眼鏡にかなうことはないだろう。
 この仕事は正直、何日かかるかも分からない。殺人予告の日時もわからなければ、相手の見当もつかない。すぐに警察に捕まってくれればいいのだが、そうでなければ、ほとぼりが冷めるまで警護をやめるわけにはいかないだろう。さすがに、警察嫌いと言っても、捜査をすること自体は拒まれなかったのだが、その殺人予告が来た時点ですぐに警察に通報したわけでもないので、初動は遅れまくりで捜査はすぐに行き詰ってしまったらしい。
 そうなると、二人がその仕事をしている間、スイは完全に暇になってしまう。

 やっぱ、しばらくは一人でやろうかな。

 二人と一緒に仕事を受けるようになって、まだ、ほんの4カ月程度。未だに情報屋をやっていた頃に使っていたエージェントから、声がかかることもあったから、しばらくはまた一人での仕事を受けようかと思う。別に数ヶ月くらいなら仕事をしなくても食ってはいけるけれど、ワーカホリックの気があるスイにはそれも我慢ならなかった。
 スイのやり方なら情報収集の仕事は家にいる事の方が多いから、二人に会えないわけでもない。そもそも、普段から、一緒に仕事を受けているといっても、それぞれに行動していることも多いのだ。警護の仕事で二人が不定期で帰ってきたとしても、いつでも顔を合わせられるなら、普段よりも一緒にいられる時間は長くなるかもしれない。
 二人といる時間は今のスイにとって一番大切な時間だ。その時間が長くなるなら、悪くはないな。なんて、考えていた。

 ぴんぽーん。

 そんなことを考えていた時だった。事務所側のエントランスでチャイムが鳴った。
 朝と言っても、もう10時近い。来客があるのは不思議ではない。ゲームをしているユキ。まだ眠いのか、ソファで転寝をしているアキ。
 二人の寛いでいる時間を邪魔されたくなくて、スイはエントランスに行くために立ちあがった。

「あ。スイさん。俺行くよ?」

 それに気付いてユキが言う。
 でも、それを片手で制す。

「いいよ。俺出る」

 それから、リビングのドアを開けて事務所側に出た。

 ぴんぽーん。

 もう一度、チャイムが鳴る。

「あ。はい!」

 リビングのドアを出て、エントランスへ向かう。
 ドアチェーンを外して、スイはドアを開けた。
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